寄居剣道連盟HP
エッセイ&コラムもくじ









剣道を頑張っている少年
嶋崎良夫            
(寄居剣道連盟会員・成心館指導者)


 今年も春になり、この原稿を書く時期がやってきました。昨年は自分の子どものことを書きましたが、今年は自分から見て本当に剣道が好きで頑張っているんだなと感じた中学生のことを書いてみました。

 私が勤務している熊谷警察署では、毎週木曜日に少年剣道教室を開催し、小学生から高校生までの少年約70人が練習に訪れます。
 あまりの多さに最初は小学生初心者、次に小学生経験者、次に中学生、高校生の順番で午後6時から始まり、午後9時までが練習時間となっているのです。

 剣道は体力的にも精神的にも厳しいスポーツということは皆さんもよく知っていると思いますが、そんな練習に訪れる中学生の中に、義足をつけている中学生が一人混ざって練習をしています。


 熊谷警察署に事務員として勤務している人の子どもですが、現在は熊谷市の奈良中学校の剣道部に所属し試合にも出ています。

 お母さんの話では、小学生のときに骨が腐る、いわゆる骨の癌にかかってしまい、最後の手段として足の膝から下を切断し義足をつけたそうですが、手術後は本人が落ち込んでしまい、親としてもどのように子どもに接触してよいか迷っていたそうです。

 手術前は少年サッカーをしていたのですが、義足をつけたことで今までやっていたサッカーができなくなり、落ち込んでいる本人に何かやらせようと思っていたところ剣道に出会い、親としても悩んだ末に本人の希望どおりに剣道教室に通わせてみたところ、本人も剣道が好きになり、休むことなく練習に励み今では毎日学校のクラブ活動に参加しているそうです。
 癌である以上、完全に治ったわけではなく、今までに3回の手術を受けたそうですが、そのたびに足が少しずつ短くなってしまい、そのたびに義足を作り変えては剣道の練習に励んでいます。

 五体満足の人が剣道をしても厳しく感じるのに、義足をつけた中学生の努力と根性は並大抵のものではなかったはずです。

 熊谷警察署の剣道教室に来ていたときに、「剣道、おもしろい?」と聞いたところ、「うん、おもしろいよ」と答え、元に立っている先生の所へ稽古に行き、一生懸命竹刀を振っている様子を見て、お母さんもニコニコしていましたが、本当はこれ以上手術を受けさせたくない、という気持ちでいっぱいだと思います。


 今までに成心館にもいろいろな少年が入門し、中学校、高校生、社会人になっても剣道を続けている人、一方、剣道から別のスポーツに変わった人、あるいはスポーツから離れた人、とそれぞれですが、現在剣道を続けている人たちはぜひこのまま剣道を続け、精神力と忍耐力を身につけ、豊かな心を持った人間に成長してもらいたいと思います。

「寄居成心館剣道場年誌2002」より
平成15年3月29日/寄居成心館剣道場発行