今回の講座は、Osaka Kidney Transplantation Forum2006の一環で、一般に公開される講座としては唯一のものでした。
漫画「ブラックジャックによろしく」の医療現場ストーリーをサポートされた大阪大学先端移植基盤医療学がご専門の高原教授や東邦大学の相川先生といったお医者様のほかに、お二人とも臓器移植を受けられ、移植者のスポーツ交流会を通じて知り合い結婚された和田夫妻(レシピエントの立場)、事故で急死された娘さんがドナーであったという田中さん(ドナーの立場)のお話があって、命の大切さをしみじみと考えさせてくれるよい機会となりました。
まずレシピエントの立場からは、私も身内や友人に腎移植レシピエントがいましたので、自分の命がカウントダウンされる恐ろしさや周囲の生きて欲しい!という思いを背負い、苦しみ、生きる可能性に賭けるという行為の素晴らしさについて大変共感できました。しかも移植者の交流会で出会い、結婚に至られた和田さん夫妻のお話は、同じ立場で悩む人に大きな希望を与えてくれることでしょう。(実は移植後も健常者のような生活はしにくいため、お二人のご健康を心からお祈りしています)日本でも、幼児の国内における心臓移植などは法律で禁じられていたりするため、やむなく海外に向かわれるケースがよく話題にされていますね。
小さな子をもつ親の場合、移植手術の決定権はどちらかといえば親にあるようなもの。遠い世界の話ではなく、いつ同じようなケースになるかもしれないと心して、もっと小さな子をもつ親も関心をもつべき話題と感じます。
つぎにドナーの立場から、「あなたは自分が脳死状態になったら、臓器提供ができますか?」
運悪いことに最近ニュースをにぎわせているのが臓器売買や違法な臓器移植手術についてであったため、今回の講座にも強い参加の動機に結びつかなかったのかと思われます。 今回お話された和田さんのお嬢さんは、20代前半にして交通事故で脳死状態になり、たまたま長女も一緒にドナー登録していたこともあり、驚き・悲しみ・拒絶・娘の説得という過程を経て結果的に家族で判断して、7つの臓器が提供されることになったそうです。和田さんは、「娘という宝石箱から飛び出した7つの宝石が、いまも7人の人の中で輝き、娘も生き続けている。娘の優しさに感謝し、誉めてやりたい」と語っておられました。また、「最近は親が子を殺し、子が親を殺し、あちこちで陰湿ないじめが蔓延している。そんな時代だからこそ、本当の優しさや命の大切さを考えて欲しい」とおっしゃっていました。
そういえば、映画「半落ち」でも、空白の時間の間に主人公がわが子の臓器提供を受けた青年に会いにいくというシーンがあって、涙ボロボロ状態でした。
実は私自身もドナーカードの普及が始まった頃に密かにドナー登録をしていましたが、そのカードが親に見つかって、「なんてことをするんだ!お前は自分の体を欠いた状態であの世に行くのか?」と大変しかられてしまいました。ちょっとジョークのような言葉ですが、比較的古い考えの人はそのように思うらしいです。
私も今のところ、自分が脳死したらドナーになりたいと思いますが、わが子がそうなった時にすぐにそんな決断が下せるかは自身がない。またわが子が臓器移植が必要になったら、どんな手段を使っても生かしたいと思うでしょうが、自分自身が余命いくばくかということになれば、そこまでするかな?(経済面の負担を考える)というのが正直な感想です。
これはまさしく死生観が影響するものであり、臓器移植とは各人の死生観を乗り越えてこそ実現できるものなのだと、自らも子を持ち、より命の尊さが身に染みたからこそ真剣に考えることができたわけです。