昨夜、面白い番組を見ました。朝日放送のみで放映されていた番組らしいのですが、「情熱最前線〜ドキュメンタリーのみかた〜」。確か「若手ADはなぜ失踪したのか?」といったサブテーマがつけられていたと記憶しています。ある番組制作の仕事に携わるAD青年が、番組づくりの過程において悩んだ末に失踪してしまった。彼をそこまで追い込んだ原因は何か?という疑問を、過去に彼が携わった番組の制作過程を記録したマザーテープをもとに検証していこうというもので、高田万由子さん、鳥越俊太郎さん、松尾貴史さんが進行役をつとめていました。
このマザーテープが非常に面白く、また「一体ドキュメントって何?メディアとはどうあるべきなのか?また視聴者のスタンスは?」ということを考えさせられるものでした。例えば、
「関西にそば好き派が急増中」という内容を伝える番組をつくるため、彼が街頭インタビューを試みるのですが、なぜか彼がインタビューした人10人中6人までが「うどんの方が好き!」とこたえてしまい、最終的に上司が「そば!」とこたえた人の映像のみを編集して放映してしまった。これはヤラセではないのか?
彼が行きつけのうまいお好み焼き店のおばちゃんの気さくな人柄も含めたグルメ取材を行うことになった。打ち合わせでありのままの姿を撮りたいと伝えていたものの、撮影直前にお店に出てきたおばちゃんは、厚化粧に真っ赤なスーツの出で立ちで、普段は入れない豪華食材をお好み焼きに加えてしまう。いつもの通りにしてくださいと注文すると、「そやかて、テレビに映るんやし!」とおばちゃん。
ある芸人さんが売れない時代に住んでいたまちを訪ねる取材で、たまたま通りかかった団地から、小学校の同級生の女性が現れ、結婚してこの団地に住んでいることがわかり、芸人さんが大泣きして再会を喜ぶシーンが偶然とれた。「すごい偶然があるものですね!」と感動するAD青年に、年長のスタッフが「そんなわけないやん。ここに住んでることを調べて、偶然を装って来てもらったんや。これは仕込みといって、ヤラセではないよ!」と一言。
「名人が格闘の末に湖から幻の大ナマズを釣り上げる!」という1時間番組を穫ろうとしたものの、撮影から30分で大ナマズが釣れてしまった。1時間番組なので、苦闘しているシーンをとらせてくれと名人に頼むが「だって連れたからいいやんか!」と渋る名人。結局、後付で様々な映像を加えて、3日間の苦闘の末にようやく釣り上げたという映像に演出する。
このような経験の末に、AD青年は悩み苦しんで失踪してしまったのだと。
これらの状況説明に加えて、ドキュメンタリー番組制作に携わる様々な人達が、「ドキュメンタリーの定義とは?」について、自分なりの見解を示しているのがなかなか興味深い物でした。
ある人は言います。題材を選んだ時点で某かの作為的なものがそこに生じるから、真のドキュメンタリーなんてあり得ないものかもしれない。ひたすら作り手が誠実であることだと。
そして番組の終盤で、失踪していた青年が見つかり、単独インタビューが行われる。「それでは君はテレビを愛していないのか?伝え手としての情熱はないのか?」という問いかけに「僕はテレビを誰よりも愛しています」やおら立ち上がり、「愛してるんだあ〜〜〜〜〜!!」と大絶叫した姿からカメラがひいていくと、そこはスタジオの中で、部屋の隅ではナレーターが締めの文句を語り始める、というドキュメンタリーの真実に迫った見事なドキュメンタリータッチのフィクションであったことが判明します。
ドキュメンタリーを見る側にもすべてをうのみにしないという覚悟が必要で、そういうメディア・リテラシーを扱う番組って、調べてみると色々あるようです。
●メディア・リテラシー ドキュメンタリーは嘘をつく
文責:ちえママ