books :: 雨鱒の川(川上健一著・集英社文庫) 


 東北のある農村を舞台にした、初恋小説を読みました。物語の会話はすべて東北弁で語り継がれていくため、最初は馴染めず抵抗がありましたが、読後はなぜかこの地方の言葉が残り、何かの拍子に出てしまわないかと思うほど馴染んでしまいました。 

物語は2部構成で、1部は主人公がまだ子供時代の話。豊かな農村風景や自然のままの川の姿が延々と描写され、学校をそっちのけにして魚釣りに精出す子供達の姿や貧しいけれど温かな母子の暮らしが美しく描かれており、ふと自分の子供時代の田舎の景色を思い出して懐かしく感じていました。(私も、年の大半を近所の川で遊んでいたものです)

2部目は、主人公が青年に成長してからの話で、まさに直球勝負のプラトニックな恋物語が展開されており、老婆心ながら「この先大丈夫なのか?」と主人公達を心配したりしてしまい、読後は純粋にこの恋物語に感動できなかった自分に少し反省しています。(年を経て心が汚れてしまった、というわけではないけれど、世俗の垢がついた状態ではなかなか物語に入れ込めないかもしれません)

なお、舞台となった美しい農村も時代の変化とともに様変わりしていることがうかがわれ、寂しい気持ちにさせられる面もありますが、いずこも同じで仕方ないことなのでしょう。最後に、文中から心に残る言葉を引用しておきます。

 人にはそれぞれ身体の中さ川っこ流れでるのよ。水源があって、源流があって、へで、上流があって、中流さなって、滝があったり、早瀬があったり、ゆったりしたトロ場があったり、大雨降ったり、おっかね濁流になったり、洪水になったり、おっかねだけ速ぐ流れだり、無数に支流が流れ込んで、へで、海さ流れついで終わる訳だ。自分の身体の中の川っこの流れさ逆らえば、自分でなぐなるのよ。後悔するだけじゃ。へだすけ、自分の川っこの流れる通りに、人ぁ生ぎていがねばねえのよ。

長い人生の様々な変遷を川に喩え、川の流れに身を任せるように生きることの大事さが心に沁みました。とくに自分自身の近況に照らし合わせれば、今まさに滝になって落ちているような先の見えない気分になっていたので。ちなみに、この物語は映画化されています。

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映画『雨鱒の川』HP

文責:ちえママ
 
Posted: 2005年08月20日 (土) at 01:18 

※1年前の今日、こんなことを書いていました。

※2年前の今日、こんなことを書いていました。