さんたばーばら(其の壱)


先週末は有希也さんのメインランドでの最後の週末を満喫するため、二人で金曜の夜から夜走でサンタバーバラまで冒険を求めに出かけた。

「最後の週末やけん、どっか行かん?」って僕が有希也に聞いた。

「いいな、それ」って。
「ふーむ、じゃあサンタバーバラとかはどうや?」他に思い浮かぶ目的地がないので仕方なく挙げると、
「おう、めっちゃ行きてえ、あそこ。」実に前から行きたがってたよと思わせるような口調で答えるじゃないか。それじゃお決まりだね。
「じゃあお決まりだね。」

そのような頗るデモコラティックな選定法で行き先を決め、金曜になったら二人でミニに乗り込んで、南へと向かった。しかしその日は僕が仕事を終わるのが遅かったし、終わった後二人でクライミング場に行ってひと登りかましたので、結局夜逃げでもしているみたいに出発が真夜中になっちまった。文字通りの「夜走」だ。

とりあえず疲れるまでできるだけ南の方に行っちまおうという勢いで、3時間近く走ってsan luis obispoという割と大きな町までたどり着いた。旅の条件の一つはお金払ってきちんとした宿に泊まらないこと。条件といっても実際話し合ってその結論に達したわけでもなく、二人の間での暗黙の了解だった。高速道路を下りて横になれるビーチを探し求めた。が、なかなか見つからん。砂浜だらけのはずの土地というのにどれだけ西に走っても海にたどり着かない。やはり疲れている模様。ガソリンスタンドに付属してるコンビニに入って、補欠のカップヌードルをするする平らげた。運良く(?)外にのっぽの警官がいて、彼にビーチへの行き方を聞いて、親切に教えてくれた。

教えられた通り3マイル南の方に行き、くねくねの道を海の方に辿った。海が見えるけど砂浜がない。アメリカの田舎らしく道端集落みたいに移動住宅が集まっているだけ。もうこれ以上先に行けない埠頭まで行き、Uターンして来た道をゆっくり走って寝れそうな場所を探索した。ひとつの移動住宅村の隣に狭い砂浜があって、そこで夜を明けることにした。車を道端で止めて、ビーチまで下りるとまだ仄かにくすぶっている焚き火の薪を発見。真夏というのに空気がかなり冷えてるので、そのわずかな温もりを借りて凌ごうと、隣でゴザを敷いて陣取った。ゴザの上で持って来た上着を全部着込んでごろんと30秒ぐらいで深い眠りに入った。



それからおよそ30分くらいの快眠が続くと、なんだか眩しくて目が醒める。上の道路の方から煌々と光っている懐中電灯がこっちに向けられている。

「おーい!」巡回者がうるさく叫んでいる。
「なんですかぁ?」まだ半睡状態でぼんやり聞き返すと、
「ビーチで寝ちゃいかんぞよ!はよ引き揚げなよ!」ちきしょーこの爺め〜!俺の貴重な睡眠をじゃましてたまるもんか!
「おう、わかったよ。すぐ出るから」面倒くさいから苛立っているのにしぶしぶ撤退態勢に入る。まじでちきしょう。

ゴザをまたくるくる包めて車に戻ると、新たな場所を探す気がまるで涌かないので100メートルぐらい道の先の駐車場で車をまた止めて、シートを倒して間もなくまた深い眠りに入った。朝の六時ぐらいから車の外で人間のばたばたしている音が聞こえ目が醒め、周りで日曜船員らしき人々がマイボートを牽引して埠頭に向かっていることに気づいた。そんな喧噪のど真ん中はとても寝られたもんじゃないとすぐに判り、またエンジンをかけて一通りの少ない所に移動して寝た。8時をちょっと過ぎた時に仕事の件でシンガポールから電話が入り、現在地不明の道端で金型設計の打ち合わせが始まった。とても愉快な寝起きとは言えない。



「そろそろ動くかあ」と電話終わった後でゆきやに聞いた。
「その前に歯が磨きてえな。」二人とも車を出て固まっていた身体を伸ばしてほぐして、ボットルの水を口に含んで歯を磨いた。道端で過ごした一夜の記念写真を撮って(上)南下を続けた。

サンタバーバラに着いたのは結局昼頃で、どこに行けばいいのか検討も付かないので適当なところで車を止めて都心の辺りを当てなくぶらついた。viva la fiesta!というスパニッシュテーマの祭りで人が大勢歩き回っていた。公園で屋台をぎゅっと詰められた感じで並んでいて、タコスやらオルチャタ(甘辛いミルキーなメキシコ風の飲み物)やらを売っていて、それらを頬張っているサンタバーバラの肥満者が至るところにいた。あらそうだ。ここで注目点。別にけなして言っているわけでもないけれど、どう客観的に見てもサンタバーバラって異常にデブが多いんだ。それはアメリカの基準にしてもよ。二年ぐらい前からデブの写真特集を作っている俺は(これ打ち明けるのも恥ずかしいけど。。。)興奮してぱしゃぱしゃこっそり撮影三昧に入った。

腹ごしらえを済ました後、有希也が出発前に調べておいた無線LAN付きのカフェに向かった。その日の共犯事をまだ考えていなかったのでとりあえずグーグルを利用する必要があった。coffee catという感じの良い喫茶店に行き、メールをチェックしたりサンタバーバラ周辺の名所を調べたりした後、自然系+水系の遊びがしたいと二人で同意した。サンタバーバラ近辺のどこかに天然温泉があると聞いてたので、検索したらばっちり出た。Gaviota温泉というところで、写真からするとかなり良さげだった。行き先が決まり、すぐさま行動にとりかかった。

インターネットに載っていた道はかなり簡潔で解りやすそうだったが、実際行ってみるとなかなか場所見つからない。何回かあるはずだと思っていた辺りを往復して、しまいに休憩所の誰かに聞いた。戻ってみるとちゃあんとあった。小さな看板があって、小さな山道の下に小さな駐車所があって、そこで俺の小さな車を泊めて週刊誌やタオルを持って銭湯にでも行ってるみたいに堂々と山道を上った。10分ぐらい登ったところで道が狭まり、トロピカルな草をかき分けながら行進するとこんな神秘的な青空浴場に遭遇する。



上の壷で涌いているお湯は硫黄の匂いを漂わせ、人肌よりちょっと温かめで、3時間ずっと浸かってても疲れないという極楽湯だ。本を読んだり、アホ小学生みたいに水死体ごっこして写真撮ったりしている間にデブ家族が二組ぐらいやってきて、先客がいることにいささかがっかりしたような顔をして引き返した。下の壷にも入れるらしいけど、お湯が乳白色に濁ってて底がどろどろなので上の壷に比べてどうやら売れてないようだ(笑)。



肌の細胞を残さずに硫黄で飽和させたら、二人ともとっくに減っていた腹を満たしにサンタバーバラの街に戻った。

(つづく。。。)

Posted: 木 - 8月 12, 2004 at 10:25 åflå„      


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