観察レポート・(ミクロの世界の観察)

「ポテチの袋の観察」

2006.10.22公開


 先にお断りしておきますが、今回の観察には元ネタがあります。 博士の大学での専攻は有機化学でしたが就職して初任配属は高分子を扱うというので、手始めに高分子学会編集の『高分子○○One Point』シリーズ(○○にはサイエンス、加工、新素材に細分されます)で勉強したものです。 その中でも『(高分子新素材One Point-別冊)高分子新素材写真集』共立出版(1992年)はなかなか良いですよ。 他のシリーズは入門用とは言いながらも理解する為にはそれなりに科学・技術の言葉を知っておく必要がありますが、こちらは「写真集」。 小難しい理論はいっさい必要ありません。 この中にポテトチップスなどお菓子袋の多層構造が紹介されていました。 顕微鏡をいじり始めてからぜひこれを観察したかったのですが ... 。 いかんせんこんな薄い袋の切片を切り出す技能はありませんでした。



【ポテチ袋の素材表示(これだけでは6層もある凝った構造など想像もつきませんね)】

 生物顕微鏡(透過照明)では試料を薄〜くスライスする必要があるんですよね。 じゃないと光が透過せず、真っ暗になってしまうから。 ん? じゃあ、金属顕微鏡(反射照明)ならスライスする必要はないのか? と、いうわけでポテチの袋を0.5mmくらいの幅に切り出し、くの字に曲げた上で観察してみましょう。 なんとまぁ、こんなに手軽に見えるじゃないですか。 確かに生物顕微鏡で切片を観察するときのような透明感あふれる美しさとは違っていますけどね。


【ポテチの袋の断面(オリンパス(MF君)対物M10X, 接眼P15X)】

 あれ?『高分子新素材写真集』ではアルミ層(上の写真では写っていません)を含めて6層だったはず? 実際、さらに解像度を上げるとキラキラ光るアルミ層が見えてきます。 下の写真で赤い矢印に囲まれているのがアルミ層です。 うーん、『高分子新素材写真集』が発行されてから10年以上たっていますからね。 袋の仕様が変更になったのかな? それにしてもたかがポテチの袋と侮ってはいけませんね。 ありふれたポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、アルミニウムを組み合わせて光、酸素、水分を完全にシャットアウトしているのです。 でも、だったら3層で良いはず? 奥が深いですね。


【ポテチの袋の断面(オリンパス(MF君)対物M40X, 接眼P15X)】

 せっかくだから他のものも見てみましょう。 ちょうどサラダちゃんがe-maのど飴をなめています。 ちなみにこちらはポリエチレン(PE)とポリエステル(PET)の複合素材で見たところアルミニウム蒸着層は無いようです(光が透過する)。 オリンパス(MF)君で覗いてみると、ぱっと見で5層構造。 さらに着色層である5層目はより薄い層でサンドイッチされているみたいです。 つまり7層構造? うーん、本当かなぁ。 やはりがんばって切片を作り、生物顕微鏡で確かめてみる必要がありそうです。 金属顕微鏡ではカミソリで切ったときの刀傷が目立ちますね。


【のど飴の袋の断面(オリンパス(MF君)対物M10X, 接眼P15X)】


【のど飴の袋の断面(オリンパス(MF君)対物M40X, 接眼P15X)】


今回の観察結果について。 多層構造であることは間違いないと思いますが、層の数は実は自信がありません。 興味のある方はご自身でチャレンジして確認してみてください(間違っていたら博士にも教えてくださいね)。

 


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★しかし何故ここまで多層構造にしているのか? 『高分子新素材写真集』には「美麗な印刷仕上がりと、光、空気の侵入を防ぐためにアルミニウムを蒸着した多層フィルムが使用される」とあり、さらに「ポテトチップス包装袋は、袋の中を窒素雰囲気として食品の劣化と破損を防ぐため、最大6層からなる多層フィルムが使われている」とあります。 うーん、光&酸素透過に関してはアルミ蒸着層があれば十分な気がしますね。 でもそれならばアルミ蒸着フィルムとアルミ保護フィルムの3層でも良さそうです。 と言う事は強度保持のため?
★ポテチの袋ではありませんが、多層フィルムの組成分析例を見つけました(ここ)。 「長期保存可能な市販飲料の容器」とのことですが、ポテチも「長期保存可能」ですからにたようなものかも。 そうか、PPとPEしか書いていないけど、もっといろいろな材料が使われているんですね、きっと。 容器包装リサイクル法による表示でもすべてを表示しなければならない、という訳ではないようです。