観察レポート・(ミクロの世界の観察)
「繊維の観察(ウール布・糸)」
2007.12.27公開
綿/PET交織布の次はウール生地です。 スーツの残り布、「ファインメリノ」とあります。 メリノ種は衣料用の良好な毛がとれる様に品種改良された羊です。 「ファイン」は? 残念ながら良くわかりません。 繊維の世界では「ファイン」とは「細い」ことを意味しますのでメリノ種の毛の中でも細い部類と言う事なのでしょう。 難しい事はともかく、男性用スーツにありがちな生地です。
まずは実体顕微鏡で観察しましょう(写真1、2)。 いわゆるツイル(綾織)ですね。 前回のシャツ地(綿/PET交織)と比較して見ると縦糸と緯糸の交差が2本飛ばしになっているのが分かりますかね? より拡大すると糸の撚りがシャツ地よりもかなりきつい事が分かります(写真2)。 さらに太い糸からはみ出る細い糸(毛羽立ち)も少ないですね。 ウール繊維そのものが綿よりも長い事もあるのでしょうが、撚りがきつい事も寄与していると思います。 毛羽立ちが抑えられた結果として、同じ様に紡績糸布帛でも表面の滑らかさが全然違います。

【写真1.ウール布帛】
ウール100%、オーダースーツの残り布

【写真2.綿/PET交織布との比較】
左:ウール布 右:綿/PET交織布 (SZ-40、40倍×デジカメ3倍×Mac上でのリサイズ)
次は断面を見てみましょう(写真3)。 生地の端から糸を抜き取り、薄片を切り出します。 生物顕微鏡で観察してすぐに気づくのは真ん中辺りは繊維の断面なのに外側は側面が見えている事。 よっぽど撚りがきついんでしょうね。 側面をよく見るとキューティクルが見えます。 また、断面はややつぶれた円形。 太さはまちまちです。 なにしろ「毛」ですからね。 場所や個体によって差があって当然でしょう。
なお、前回と同様にエポキシ接着剤で包埋、切片を切り出してバルサムで封じたのですが空気を完全に抜ききれていませんね。 写真左の糸の横の丸いものはもちろん泡ですし、糸の周りの不定形な影みたいなものも抜けきれなかったエアーと思われます。 さらに写真右のど真ん中にも糸と紛らわしい泡が残っています。 なかなか上手くいかないものです。

【写真3.ウール糸断面】
左:対物10倍×接眼7倍 右:対物40倍×接眼7倍
羊毛はバイラテラル構造と言っていわば性質の異なる2本の繊維が貼り合わされて1本の繊維を構成する様な構造となっています。 この構造がウール糸の捲縮発現に寄与しているそうですが、片側は酸性繊維、もう片側は塩基性繊維で染め分ける事が可能だそうです(※)。 このウール糸も染めむらになっているのかな?、と思ったのですが残念。 ちゃんと奇麗に染まっていますね。 染め分けに挑戦してみたいものです。
