観察レポート・シリーズ
「CD(コンパクトディスク)の観察」
2006.1.14公開
博士が音楽に目覚めた小学生の頃はまだCDなどというものはなく、レコード全盛の時代でした。 高校生くらいの時かな? CDが発売されたのは。 大学1年生の時、生協でCDラジカセを買ったのがCDとの初めての出合いです。 その頃にはレンタルレコード屋さんでもすでに新譜はCDばかりになっていたのです。
CDの表面(透明な方)を見るとキラキラと虹色に輝いていますよね? これは記録を司るピットと呼ばれる凹凸が規則正しく並んでいるために反射光が干渉され、見る角度によって光の波長が異なる為です。 そんな解説記事を見るとピットが「溝」としてイラスト化されていました。 しかも、ピットの幅は0.5μm、長さは0.9〜3.3μm(0.3μmきざみで9種類)と極めて小さいものです(永田信一著『レンズがわかる本』日本実業出版社(2003年)P.165)。 CDのディスク面を野球場のグランドに例えるとピットは砂粒に相当する程小さいそうです。 本当にピシッとした溝が作れるものなんでしょうか? 追記:ピットが「溝」であるのはレーベル面から見た話であって、レーザーが当たる面から見れば突起なのだそうです。 あーっ、そうなんだ。 詳しくは脚注を御覧ください。
まぁ、「論より実験」ですね。 顕微鏡で観察してみましょう。 0.5μmならば見えない事は無いでしょう。 まずはCDの透明な面に照明を当て、反射光を10×の対物レンズで観察してみました。 ピントは銀色面のはしっこで合わせましょう。 えーと、???? 良くわかりませんね。

【CDをそのまま観察】
じーっと心眼で見ていると.... 見えてきました。 横方向に筋がたくさん見えます。 良く見ると確かにピットがずらーっと並んでいるように見えます。 しかし、..... 。 写真に撮る程の明るさが得られません。
やはり透過光で見なくては。 CDを蛍光灯にすかしてみると .... 。 文字の形が透けて見えます。 そう、レーベル面は記録面のアルミ蒸着の上から印刷してあるのですが、文字やラインなど印刷されていない面が所々あります。 ここに合わせて透過光で照明してみました。 それでも透過光量は少ないのですが、OLYMPUS(EH)君の強力な照明のお陰で写真を撮る事が出来ました。 下の写真は対物10X&接眼15X&デジカメ3X&Mac上でトリミングまでして、相当拡大したものです。 なるほど、ピットが規則正しく並んでいる事は分りました。 しかし、イラストのようにピシッとした溝なんでしょうか? 10X(NA=0.25)の対物レンズでは理論解像度でも1.3μm。 ちょっと厳しいですね。 しかし高倍率のレンズを使おうと40X対物レンズを使ったらピントがあいません。 高倍率対物レンズではカバーガラスの厚みまで含めて設計されており、ノーカバーではまともに見えません。 そのせいか?と思い、カバーガラスをかけてみましたが無駄でした。 記録面の上のポリカーボネート層の影響がよほど大きいのでしょう。 ちなみにkmalさんもCD記録面の観察を行い、20X対物レンズまでは結像可能な事を見い出しています。 kmalさん所有の20X対物レンズのNA値は分りませんが、TIYODA(FUR型)君の場合20X対物レンズでNA=2.0、つまり理論解像度=0.8μmです。 どのくらい見えるのかな?

【CDの記録面(透明な面より観察)】
とりあえずピットを見る事が出来たのでこれで一応は満足していたのですが ... 。 kmalさんとメールしていてひらめいたのが、記録面を剥離して観察すれば高倍率対物レンズを使えるのでは、ということです。 さっそくCDのレーベル面をカッターで削りました。 綺麗に剥離させる事は出来ませんが、削りくずを多めにつくり、粉々になったくずを筆で掻き集めてスライドグラスに載せます。 あとはグリセリンで封じてプレパラートとしました。 なお、この場合もインクが乗っていない銀色の所(下写真の赤円で示した部分)を削る必要があります。

【CDの記録面の剥離とプレパラート】
では、観察しましょう。 10X対物レンズでもよりはっきりと見えます。 40X以上を使えば ....... おおっ、これは見事ですね。 下の写真は接眼15×&対物100×&デジカメ3×で撮影したものですが40×対物レンズなら十分でしょう。 なるほど、イラスト通りピシッとした溝ですね。 納得しました。 ところで、これって多分プレスで作っているんですよね? 是非金型を見てみたいものです。

【CDの記録面(剥離試料)】
