ミクロの世界(その8) 照明の検討
(顕微鏡の観察、改造、自作)
その6で永久プレパラートセットを観察しました。 UNIQUE君でも良く見えますよ。 やはり照明に気を使いますけどね。 眼視だけなら研究用の顕微鏡の見え味に近付いた?などと思い、職場のOLYMPUS BH-2で同じプレパラートを見てみると ........ 「ポロッ」 眼からウロコが落ちました。 まるっきり世界が違います。 仕事ではクロスニコル下で溶液中の結晶を探すのにしか使っていなかったのでこんなに見えるものとは思ってもいませんでした。 しかし、いい顕微鏡で覗くと本当に飽きませんね。 いかんいかん、マニアックな世界に引きづり込まれそう ....... 。

OLYMPUS BH-2で見たグミのりん毛 100倍で撮影&トリミング
一瞬より大形の顕微鏡の購入も考えました。 BH-2まではいかなくてもJIS規格で、せめてアッベ式コンデンサーがついていれば対物レンズにお金をかけて ....... 。 はっ! そう言えばさとう研究室の「ミクロの世界」はWEBの世界でも貴重な、「学習用(入門用)顕微鏡の情報源」でした。 (博士が意図した訳ではありませんが ..... 、WEBを調べていてもここまで学習用顕微鏡についての情報を発信しているサイトは見つかりません。 普通は「おもちゃ顕微鏡」と切り捨てられてしまっています。) 心を入れ替え、UNIQUE君でやれる所まではやってみましょう。
さて、UNIQUE君でグミのリン毛を見てみましょう。

62.5倍で撮影&トリミング(LED照明)
結構良く見える、と思ってはいるのですが、BH-2で覗いた時と比べるとやはり世界が違いますね。 では、つぎの写真を見てください。

62.5倍で撮影&トリミング(蛍光灯照明)
まだピントが合っていないような画面全体の白っぽさは残りますが、上の写真と比べると大分良くなっていませんか? これも同じくUNIQUE君で撮影しています。 決して画像処理で差をつけた訳ではなく、眼視でもこの程度の差はあります。 実は博士自身もこの効果に驚いています。 いったい何をしたのか? その解答は写真のキャプションにあるように照明をLEDから蛍光灯に変えただけです。 原因は2つ考えられます。
(1) LEDでは暗く、デジカメの露出時間が長くなり、よけいな光を拾った。
(2) 今回用いた白色LEDはマグライトのように指向性が高く、照明斑が激しかった。
さあ、どちらなんでしょうか。 眼視でも同じ様な差がでているので(2)のような気もしますが、背景のモヤモヤ(眼視でも分かる)が蛍光灯で無くなった理由は(1)にありそうな気もします。 結局(1)+(2)の効果なのかもしれません。
もっとも博士もまだ勉強中です。 上で述べたことも結果的に相当なウソになってしまっているかもしれません。 でも、理論はともかく実験結果は間違えありません。
次に照明を絞る実験をします。 (その4)でも述べましたが、視野全体が白っぽく見える原因の一つとして照明を絞り込んでいないことをあげました。 「?」 透過型の顕微鏡では試料(視界の内側)の下から十分な光を当てる必要があります。 その一方で視界の外側に当たった光は無駄になるだけではなく、散乱して視界に入り込んで来ます。 散乱? 空を見上げると太陽がいない所も明るいですよね。 これは空気(大気)が太陽光を散乱した結果、あちこちから光が来る事が原因です。 日陰だって真っ暗じゃないですよね。 生活する上で大気による散乱光は有り難いのですが、こと顕微鏡観察にとっては対象物以外からの散乱光は邪魔者以外の何ものでもありません。 それゆえ視野の外側の光は全てシャットアウトする必要があるのです。
まぁ、理屈はともあれやってみましょう。 まず行ったのは下の写真の通りです。
= 
UNIQUE君のステージです。 照明光の穴が大きく、大きさの調整機構もありません(左) 右はこの状態で撮影した写真です(62.5倍)
= 
(その4)で紹介したつや消し黒に塗装したテープに穴を開け、照明穴の大きさを絞りました(左) 右はこの状態で撮影した写真です(62.5倍)
うーん、低倍率(62.5倍)ではそこまで大きな効果はありませんね。 眼視ではちょっとは差があるような気もするのですが。 では、高倍率(250倍)でやってみましょう。 今度は以下の写真のように絞りを手で持ち、位置も変えてみました。

→ 
250倍:プレパラート下約1cmに、絞り無し(左)→ 絞りあり(右)
全くの同一アングル&ピントです。
どうです? 明らかに効果が出ましたね。 プレパラート直下よりもむしろ少し下に離した方が良い様です。 さらに、プレパラートと対物レンズの間に絞りをおいても同様の効果が認められました。 プレパラートの下で絞るのは先に書いた原理で説明できますが、上で絞ったのはひょっとしたらレンズを絞ってF値を上げた効果もあるのかも知れません。 博士もまだ勉強不足ですね。
照明というものがいかに重要かが良く分かりました。 しかし、研究用の顕微鏡に採用されている照明(ケーラー照明)はより複雑です。 光をより効率良く集める為のレンズ系があり、視野の外側の光をシャットアウトする視野絞り、解像度を調整する(博士もまだ理解していませんが、おそらくF値を調整しているのでしょう)開口絞りがあり、しかもそれらレンズ・絞りを適切な位置関係に調整しているのです。 それだから有識者の方々は照明の光学系がない、あるいは貧弱な入門機を「おもちゃ顕微鏡」と切り捨てるのでしょうね。 博士もコンデンサーの働きの重要さは職場でBH-2を覗く度に思い知らされています。 (調整が悪いととたんに像が悪化するのです)
教科書にはケーラー照明も自作できる、とありますが具体的な方法は載っていません。 ケーラー照明はともかく、せめてステージ下に調節可能な絞りだけでも作ってみましょう。(今回はここまで 実践編はいつ?)
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★ほんと、照明は奥が深いですね。 それにしてもステージ下に簡単な絞り(円形絞りなど)くらいつけてくれればいいのに。学習用の顕微鏡でも円形絞りを有しているものがあります。 博士が中学校の授業で使った顕微鏡にもついていました。 でも、その効果を実感する事はなかったですけどね。
★ところで上の顕微鏡写真、倍率が違うクセにりん毛の大きさはほぼおなじですね。 気付きましたか? 低倍率(62.5倍)の時は写真をトリミングしています。 つまり、デジタルズームしたようなもんです。 本当は目で見るともっと小さく見えています。 高倍率(250倍)では接眼レンズの枠が写っていますよね。 つまり、目で見てもそれだけ大きく見えているわけです。
★本来顕微鏡写真で××倍とだけしか説明しないのは好ましくありません。 例えば上のデジカメ写真、モニター上での大きさに比べ、実際に顕微鏡で覗いた時のりん毛の大きさはもっと小さいものです。 或いは液晶プロジェクターに投影したとしましょうか。 この場合、もっと極端に画面の大きさが変わって来ます。 以前職場の検討会で液晶プロジェクターのスクリーンに投影していた顕微鏡写真に対して「これは何倍だ?」と聞かれたので、「さぁ、100000倍程度でしょうか?」と答えた事があります。 ちなみに普通の光学顕微鏡の限界は1000倍程度です。 でも、実際に10μmのものがスクリーン上では10cmくらいには拡大されていたものですから... 。 真面目な顕微鏡写真ならば隅の方にでもスケールバー(例えば1μmの長さを示した直線)をつけておくのが基本です。 これならば実際の出力の大きさ(写真、モニター、スクリーンetc.)によらずに、そのものの大きさがイメージできます。