|
|
|
|
6月30日
今日も雨の朝であった。今日はまだ雨が降り続いていたので、ホテルの1階にあるレストランでのんびりと朝ご飯を食べることにした。コーヒーはCaf_ Madridには遠く及ばなかったが、バフェのメキシコ朝ご飯は美味しかった。ゆっくりのんびりしっかりと朝ご飯を食べた。まだ雨が降り続いていた。部屋に戻って撮影したデジカメの写真をコンピューターに落としたり、昨日のリーベルの優勝ダイジェストをテレビで見たりしてぼんやりと過ごした。
そのうち天気が回復してきたので、Cafe Madridに出かけてカフェ・コン・レチェを飲みながら絵葉書を書くことにした。サーバーのおじさんは多分昨日も来たアジア人を覚えていたのだろう。「どうぞ」とサービスしてくれるときにちょこっと微笑んだ。
絵葉書を書き上げて美味しいコーヒーを堪能した後、郵便局に出かけた。郵便局はテアトロ・デゴイジャドの北にある。なかなかしっかりとした建物でグアダラハラの本局のはずなのだが、局員の数が圧倒的に少なかった。窓口は10以上あるはずなのに、開いている窓口はなんと1つだった。そのうち行列ができてきて、局員が2人に増えたが、あまりにさびしい。それに行列ができたとは言え、たかが知れた行列と言うことからして、ビジネスではそもそも郵便は使わないでプライベートのサービスを利用するのだろうか?
「普通の人は手紙を書かないんだろうなぁ」
というのは、グアダラハラ本局の寂れ方からして容易に想像できた。
その代わりにメキシコ人の心を捉えたコミュニケーションの方法は携帯電話である。これは間違いない。約束の時間に現れないのは普通のお国柄の人たちが「何処にいる」のか常時連絡がつくというのは斬新な改革とはいえないだろうか。(逆にいうと間際まで全く物が決まらないという現実を助長することにもなるけれど)間違いなく携帯メールもアメリカより浸透しているようだ。若者達がディスプレーを見ながらなにやらタイプしているのをずいぶん見かけた。使っている携帯もアメリカの白黒で味も素っ気もないデザインのどでかい携帯とは違い、スタイリッシュな日本のモデルに近い物を使っている人が多い。私の前に並んでいた大学生風青年も携帯でなにやらチェックして、ふっと舌打ちをして行列から離れた。「即刻現れよ」というメールがガールフレンド辺りからきたのかも知れなかった。
天気も良くなってきたので、そこからハリスコ・スタジアムに出かけてみることにした。スタジアムはセントロからタクシーで15分ぐらいのところにある。セントロから見ると北北東といった位置関係だ。アプローチした方角が住宅地の方からだったので、まさに忽然と現れた感じがした。さすが7万人のスタジアムだけあって非常に大きい。コンクリートの巨大建造物という印象を受けた。
スタジアムの周りを少しうろついて、メインスタンドのVIP席の入り口の隙間から写真を撮っていたら、オフィスから人が出てきた。
「中の写真を撮れるところってないでしょうか?」
と質問すると
「ちょっと待ってて」
と言い残してオフィスに入っていってしまった。そして、ゲートの鍵を持ってきてくださったのである。
図らずも、ハリスコ・スタジアムも中に入って見学できる幸運に恵まれた。テレビで見ると芝生が「はっと」するほどきれいなのはこのハリスコ・スタジアムだ。チバスの試合は日曜日の午後12時からだから、この芝生が日に輝いて美しい。アトラスの試合は土曜日の午後9時からだが、照明に照らされた芝生も深緑に輝いてまた違った美しさを放つのだ。
入ってみた感じは外から見たのと同じく「巨大」だった。そして、1部リーグの中で一番きれいな芝生は完璧な美しさで眼前に広がっていた。今はシーズンオフで芝生もしばしの休養中である。普段は目にも鮮やかな白線も今はない。8月になったら、また多くのファンに楽しい試合を提供する役割が待っている。チバスのファンでもアトラスのファンでもないけれど、一度このスタジアムで試合を見てみたいなぁと思った。できれば、さわやかな日差しの日が良いからチバスのホームゲームで。
スタジアムの外周を半周して、メインのカルサダ・インデペンデンシア通りに出た。数件のバーが観戦前後の客を集めるべく並んでいたが、今はそこもシャッターを閉じていた。その、シャッターのデザインがどれもビールのエストレージャであることに気がついた。
サッカーとビールは切っても切れない間柄にある。暑い日に熱い試合を見ればのども渇こうというものだ。試合の間、観客の間をかいくぐってビール売りは途切れずやってくる。ということで、多くのチームはビールの宣伝を背中に背負っている。メキシコビールは2大ビール会社で占められている様だが、各ビール会社はブランドをいくつか持っていて、地方色を出している。
モンテレイに本社があるカウテモック・モクテスマ醸造所はモンテレイにある2チームにだけ、カルタ・ブランカを背負わせている。カルタ・ブランカのコマーシャルはモンテレイ以外ではお目にかかることはまずないが、昨シーズンの優勝決定戦では意図的にカルタ・ブランカのコマーシャルを流し、「モンテレイのチームがチャンピオンになった」とカルタ・ブランカとモンテレイという地方を印象付けるマーケティングを行っていた。他のチームにはSolというビールを背負わせていて、Solは全国区でテレビコマーシャルもバンバン打っている。一方メキシコシティに本社のあるモデロはトルーカのスタジアムにトルーカの地ビール、ヴィクトリアの大きな広告を出し(背中には最近コロナを背負っている)、グアダラハラのアトラスにエストレージャを背負わせている。残りのチームは全国区のコロナである。ヴィクトリアはトルーカに特化してしまうとマーケットが小さすぎる。そこで、トルーカの地ビールというよりは輸出をしていないというポイントをとって、「ヴィクトリアはメキシコだけのビール」とメキシコ人の愛国心をくすぐる広告を全国的にうっている。ヴィクトリアのコマーシャルのパターンはいつも一緒だ。二人のアメリカ人がいろいろな作戦を練ってヴィクトリアをアメリカに密輸しようとするのだが、毎回失敗するというパターンなのだ。一方エストレージャはグアダラハラローカルのコマーシャルはあるのだろうが、全国区のテレビでは見たことがない。グアダラハラはメキシコ第2の都市だから、グアダラハラに特化したマーケット展開をしても十分な市場を見込めるのだろう。アトラスが決勝に進出したらエストレージャのコマーシャルが全国ネットのテレビで流れるかも知れない。
この二つの会社のブランド戦略は考えるといろいろ面白いなぁと思う。まぁ重要なのは美味しいことだけれど。(ちなみにカウテモック・モクテスマのブランドで言うとボヘミア、モデロのブランドで言うとモデロ・エスペシアルが私の好みです。今回カウテモック・モクテスマのインディオも飲みましたがダークビールなのに驚くほどあっさりとしていました。これも悪くないです。)
とりあえずバス停に向かう。やってきた258系統バスの行き先を見て、プラサ・デル・ソルがあることに気が付いた。そこで、次はプラサ・デル・ソルに行くことに決めた。これはグアダラハラの大きな郊外型ショッピングセンターである。別に何が買いたいわけではなかったが、散策にはもってこいの場所と考えたからである。ついでに早めの晩御飯も食べる算段にした。
バスはカルサダ・インデペンデンシアを南下して、サン・フェリペという東西に走る細い道を抜けていく。サン・フェリペからメキシコ通りに移動し、セントロを通過した後南西に向かってアヴェニダ・ロペス・マテオという大きな通りに入っていく。このメキシコとロペス・マテオの合流点近傍にアメリカ系、メキシコ系チェーンの巨大ホテルが現れだす。グアダラハラのホテルを探すとこの辺りのホテルが検索に一番に引っかかるが、グアダラハラの総合展示場に仕事に行くのなら便利でも、街の楽しさを味わうには非常に不便だ。そうしてしばらく南西に進み、そろそろだなぁと思った頃に左手にプラサ・デル・ソルという案内が出てきだした。バスの客も大勢立ち上がる。私もバスを降りた。
プラサ・デル・ソルは想像していた巨大なビルの屋内型モールと言うより、平屋のモジュールがいくつか巨大な空間に配置されている開放感のあるショッピングエリアと呼ぶ方がふさわしい場所だった。お店が全て外に向かって開いているのである。もちろんお店のモジュールの間にはベンチや噴水が配置されている。
「さすがプラサのデザインが得意な人たちのモールだなぁ」
と非常に関心した。アメリカ型モールだと座る場所がないのだ。座りたかったら、フードコートにわざわざ出向いていって座るしかない。プラサ・デル・ソルはまずベンチや噴水を配してプラサをつくり、それと旨く融合するようにお店を配置しましたという感じなのである。もちろんこういったデザインはグアダラハラの気候ともよくあっている。通年過ごしやすい気候で、雨季の夏でも雨もそれほど長くは降り続かない場所だからこそアピールするデザインなのだ。
ウインドウショッピングの親子連れ、放課後を過ごす学生達、デート中のカップル、それぞれが思い思いのひと時を過ごしていた。しばらくベンチで通行人ウオッチングをしていたら、おなかもすいてきた。モールでご飯と言えばやはりファミリーレストランである。VIPSという全国チェーンのレストランで鶏肉のエンチラーダスを食べた。掛かっていたソースがサルサ・ヴェルデといわれるトマティージョベースのソースで、これがなかなか美味しかった。全国展開しているチェーン店の味は万人受けするように調節されているのだろう。
帰路も同じ路線バスに乗り込んだ。難関は「どこで降りるか」であった。夕暮れ時になってきて、通りの名前が読みづらくなってきていたし、バスの窓ガラスがほこりで曇っているのも判断を難しくしこそすれ、助けにはならなかった。それでも「えいやぁ」で降りた場所は1ブロック外れただけだった。丁度庶民の日々のお買い物エリアといった場所で、お米や豆などが大きな紙袋に入れられて、店の前に並んでいる日本でいうところの米やさんや激安の洋服を売っている洋品店などが軒を連ねる。人々は買い物袋を片手に右往左往していた。1ブロック進むともうカテドラルの周りのプラサがすぐそこに見える場所だ。いきなり雰囲気が変わったので少しびっくりした。
カテドラルに着いた辺りからぽつりと空から雨が落ちてきだした。その勢いは瞬く間に強まった。傘が思わず役に立った夕暮れであった。
|
|
|