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メキシコ代表まっしぐらっ!
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ウーゴ・ヨンチェスさんの代表レポート。
連絡なしの転載・引用等はご遠慮ください。転載・引用ご希望の場合は こちらまでご連絡ください。責任もってヨンチェスさんに取次ぎます。
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<ドイツW杯北中米地区最終予選 グアテマラVSメキシコ>
6月4日、メキシコ代表はアウェーに乗り込んでグアテマラと戦った。相手が格下ということもあり、現在予選で首位を行くメキシコにとって特に大きな不安はなかったが、取りこぼしのないようにきっちり勝っておきたいところ。
メキシコのスタメンは以下の通り。
GK サンチェス、DF マルケス、オソリオ、サルシード、MF JP・ロドリゲス、カルモナ、L・ペレス、ナエルソン、ロサノ、FW ボルゲッティ、フォンセカ
パルドの出場停止、ブランコの不参加で注目される中盤の構成は前日の練習試合から予想された布陣からトラドが外れ、好調のJPことファン・パブロ・ロドリゲスをポーランド戦に続いて1ボランチで起用、その前に右にペレス、左にシーニャ(ナエルソン)を配置する攻撃重視の布陣を組んだ。
試合は立ち上がりメキシコがペースを握り積極的に攻めたが、ややひとりひとりがボールを持ちすぎの感があり、徐々にペースを失う。10分過ぎからメキシコのパスミスに乗じてグアテマラがリズムを_みかけるが、メキシコDF陣も落ち着いて対処した。その後は一進一退となり、アウェーとはいえ格下の“お得意さん”相手に自滅する嫌な流れにもなりかけた。攻撃面では立ち上がりの布陣が今ひとつ機能せず、早々とペレスとシーニャの右左を入れ替えてその後はスムーズになったものの、決定機は作れなかった。
メキシコの先制点は40分。自陣CKからすばやくつないだボールがロサノからのサイドチェンジで右のロドリゲスへ。ロドリゲスから短いパスを受けたペレスがファーポストめがけて蹴り上げるとグアテマラGKが目測を誤り完全に被る形でキャッチミス。右からのクロスが入るとき、当然ファーサイドにはロサノが詰めており、これを拾ったロサノが中央へ浮かせると、走りこんだシーニャがペナルティスポット付近でワントラップして蹴り込んだ。
これで動揺したのかグアテマラは前半終了間際の45分にもロサノの蹴った右CKをDFメルガーがクリア出来ずにオウンゴールを献上。ピリッとしなかったメキシコだが、労せずしてリードを奪い前半を折り返すこととなった。
後半に入ってもピリッとしない流れは変わらず、DFラインも引き過ぎて中盤が大きく空き、最後までゲームを支配することは出来ない。後半22分にフォンセカに代えてピネダを入れ4バック、ボルゲッティの1トップにし、ラファを中盤に上げ攻めを厚くする予定だったが、直後の接触プレーでラファが負傷し自ら交代を要求、ガリンドと交代することとなりプランが狂った。28分にはブラボをロサノに代えて投入し、再び2トップに戻したが中盤のバランスが崩れ、混乱したままゲーム終了となった。後半、ボルゲッティに3度ビックチャンスがあったが決め切れなかったのも響いた。
選手交代後にそれまでの流れがよくならず、かえって悪くなることが少なくないのは現在のメキシコ代表の未完成な部分である。また、これもいつものことだが格下相手の試合で今ひとつ安定感に欠ける。守備ラインを積極的に上げて中盤をコンパクトにし、ダイレクトや1タッチでのショートパスが気持ちよく回るように出来れば楽にゲームが進められるはずだが、大したFWもいないグアテマラ相手に何故あんなにオソリオが引く必要があるのか疑問に思う。
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<ドイツW杯北中米地区最終予選 メキシコ VS トリニダー・トバゴ >
北中米地区最終予選の折り返しとなる第5節の試合が6月8日に行なわれ、首位のメキシコはホームでトリニダー・トバゴと対戦した。モンテレイのウニベルシタリオ・スタジアムに3万5千人の観衆を集めて行われたこの試合も、先のグアテマラ戦同様格下相手で、しかも今回はホームであるため、比較的余裕を持って戦えると思われた。
メキシコのスタメンは以下の通り。
GK サンチェス、DF オソリオ、ガリンド、サルシード、MF JP・ロドリゲス、メンデス、シーニャ、ペレス、ロサノ、FW ボルゲッティ、フォンセカ
フォーメーションはいつもと変わらぬ3−5−2だが、グアテマラ戦のスタメンだったマルケスとカルモナに代わり、ガリンドとメンデスがそれぞれセンターバックと右アウトサイドに入った。
試合は当然のようにメキシコが立ち上がりから優位に試合を進めたが、例によってなかなか得点できずに、ずるずると自らペースを失って20分前後からT&Tが徐々に押し戻す展開となった。だがチーム力、個々の技量の差とも明白で、メキシコが決定的なピンチを迎えるようなシーンはほとんどなかった。35分には早々と右のディフェンシブなアウトサイドのメンデスに代えてFWのA・メディナを投入し、右サイドの高い位置に張り付け攻撃モード全開、と行きたいところであったが気持ちとは裏腹に攻撃は空回りしたまま。39分にシーニャの中盤からのスルーパスに鋭く反応したメディナがクロスするように横切って抜け出しGKを破ったシーンはあったものの、シュートに力がなくDFにクリアされた。結局前半メキシコが作った決定機はこの場面くらいで、“お得意さん”相手にピリッとしないまま前半を0-0で終えた。
後半に入るとメキシコは右MFペレスとボランチのロドリゲスを中心にして攻撃のリズムが改善され、ほぼ一方的に試合を支配し始め、主に右サイドからチャンスを作りロサノのボレーシュートなど惜しいシーンが生まれ始めた。ラボルペはすかざず17分にシーニャに代えて左アウトサイドの“職人”モラレスを投入、左アウトサイドのロサノをやや絞らせてシーニャのいた左インナーに配置する。この交代策が的中し、20分に右サイドのペレスがペナルティエリア角付近で中央にややドリブルし逆サイドのモラレスへ大きなパス。T&TのDFの背後でこれを受けたモラレスがダイレクトでシュートし、GKが弾いたボールをファーポスト側でボルゲッティが難なく押し込んで先制した。その後も疲れの見えるT&Tに対し試合を支配したものの追加点はなかなか奪えず、結局2度目にスタジアムが沸いたのはは終了間際の43分。右サイドのメディナのセンタリングをボルゲッティがスルーし中央右寄りからペレスがシュート、DFに当たってこぼれたボールが再びペレスの前に転がると、これを蹴り込んで2点目を奪い勝負を決めた。
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<コンフェデレーションカップ VS 日本>
カールスバーグ杯以来久々の日本戦である。当然ながら何人かのメキシコ人の友人と『どっちが勝つか賭ける』という話が何日も前から持ち込まれ、在メキシコ10年のメキシコ代表ウォッチャーながら日本代表(及び“鹿”)サポーターでもある小生はこれまた当然のことながらいつも自信を持って日本の勝利に賭ける。もっとも賭けるといっても炭酸ジュースとTORTA と呼ばれるメキシコ風サンドイッチ程度でどっちが勝っても懐が痛むようなことはないのではあるが、気持ちとしては日本なのである。下手の横好きながら日本でサッカーに支えられながら生きてきた者のひとりとして、常に日本代表は心の誇りである。
さて、今年のコンフェデ杯である。W杯予選を突破して自信漲る印象の日本に対し、メキシコは昨年7月のコパ・アメリカでのブラジル戦以来無敗ながら内容的にはピリッとしない戦いが続き、更にはリベルタドーレス杯の日程と重なって一部グアダラハラ勢の合流が遅れる等していたので、正直なところ今回は日本有利ではないかと思っていた。
メキシコのこの日のスタメンは以下の通り。
GKサンチェス、DFオソリオ、ガリンド、サルシード、MFパルド、トラド、カルモナ、シーニャ、ロサノ、FWボルゲッティ、フォンセカ
前半、トラドはボランチとしてロサノの背後のカバーとシーニャのサポートに入り、パルドが引き気味の右インナー、トップ下のシーニャが左寄りでプレーした。ずいぶん代表での実戦から離れていたトラドの起用はやや驚きだった。
ラボルペは試合後に『今日のメンバーは1.5軍』という言い方をしたが、どうだろう。確かに“飛車角”である攻守の要の休暇のブランコと怪我のマルケスを欠いたものの、久々代表復帰のトラドを除けば他は最近数試合のスタメンの顔ぶれと変わらないメンバーである。リ杯で合流が遅れたチーバス勢はスタメンではないことを考えると1.3軍程度ではないか。
立ち上がりいきなりフォンセカが勢いあるプレーで右サイドからドリブルで割って入りシュートへとつながる。その後もメキシコがしばらくはリズムを_む。メキシコの球離れがよく、ダイレクト、1タッチ、2タッチでボールが回る独特のリズムが随所に見られた。日本は最初ややミスが多くドタバタしたものの12分の柳沢のゴール以降やや落ち着いた。柳沢のシュートはややラッキーだった気もするが、ロサノの背後に出来るスペースをうまく突いて小笠原から加地へ通ったパスがよかった。この日の日本の前半の、加地を起点とした右サイドの攻めはメキシコ国内でも評価を受けていた。
得点後前半30分くらいまでは日本が縦に速い特徴を見せたが、マルケスの代わりに起用されたガリンドを中心としたメキシコの堅陣を崩せず、カルモナの柳沢へのファウルもPKにはならず追加点は奪えなかった。メキシコは25分にFKからボルゲッティがフリーでヘディングシュートする場面があったが何故かボールは川口の正面へ飛んだ。
なかなか得点が奪えないメキシコだったが39分日本のクリアを拾った右サイドのカルモナが少しドリブルしてペナルティエリアの前を横切るグラウンダーのパスを通すと、フリーで受けたシーニャがボールを足の裏でトラップし右足を一閃、アウトにかかったボールは緩やかなドロップがかかって日本ゴールに吸い込まれた。福西がボールにつられてシーニャをフリーにしたこと、シーニャの前にいたロサノが外に動いて加地の注意を一瞬そらせたことで日本の対処が遅れたことから生まれたゴールだった。このゴールでやや焦っていたメキシコに余裕が生まれた。
後半、メキシコは左サイドをいじる。この日いまひとつの出来のロサノに代えて守備的なピネダを投入、ボランチのトラドに代えてペレスを投入した。前半日本の右サイドで積極的に前に出てきた加地に蓋をし、更にペレスを加地の背後に張らせるようにしてスペースを狙わせる作戦。パルドがボランチに下がり、シーニャが本来の右インナーに移ってスタート。後半の19分にそのペレスが左サイドから上げたクロスにフォンセカが頭で合わせてゴールし逆転に成功。ラボルペの好対策が功を奏した形になった。
結果としてメキシコが世界ランク6位(!)の面目を保ったが、日本もそんなに内容で劣っていたとは思わない、という声も聞かれた。敗者への労わりもあろうが、『メキシコとはまだかなり差がある』、というメディアの評が目立った日本とは対照的である。確かに実力ではメキシコのほうが上だろうが、中田を中心に随所に日本らしいプレーが見られたし、試合としては両者の持ち味が出た好ゲームだった。あえて言えばこの試合に限っては前半から中村やアレックスが中盤でボールを取られるシーンが目立ち、また中盤を厚くしたという割には選手間に距離があり、守備と攻撃のラインも間延び気味だった。また中沢の欠場で空中戦への対処が今ひとつだったこともマイナスだった。対するメキシコは(たまたま、珍しく)よいときのリズムが出て終始コレクティブでバランスよいサッカーが出来たが、メキシコがいつもこういう試合をしているかというとそうではないのである。
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<コンフェデレーション杯 ブラジル戦>
ラボルペ代表のベストゲーム。そう呼ぶにふさわしい内容の試合でメキシコがブラジルに完勝した。メキシコが躍進している。つい二週間前にトリニダード・トバゴ相手に苦戦したチームがまるで別のチームのようだ。世界ランク1位、揺ぎ無い世界最強のチームであるブラジルが次から次へと右から左から突破を仕掛けるのに対し、ガリンドが、オソリオが、カルモナが、サルシードが、体を張って止めにかかる。メキシコのDFが突っかけてきた相手にドリブルで抜かれるシーンはほぼなかった。1対1の守備で負けなかったことがこの試合の勝利の最大のポイントだった。GKのサンチェスも、39分に指一本でアドリアーノのシュートを弾き出したシーンを始め冷静なセーブでチームを鼓舞した。メキシコは前半から幾度となく押し込まれる展開が続いたが全員が体を張った守備で対抗し、ブラジルに決定機を作らせなかった。
メキシコのゴールは後半13分。モラレスの突破で得た左CKをパルドが蹴り、中央でエースのボルゲッティがヘッドで合わせた。前半からメキシコを応援していたスタジアム全体が歓声に包まれる。前半30分にPKを失敗したボルゲッティは面目躍如と言わんばかりにガッツポーズ。
この日のメキシコは4−4−2。GKサンチェス、DFが右からオソリオ、ガリンド、サルシード、ピネダ、中盤の底にパルド、右にカルモナ、トップ下にシーニャ、左にモラレス、トップがボルゲッティとフォンセカでスタートした。対するブラジルはロナウディーニョ、カカ、エメルソン、ゼ・ロベルト、アドリアーノ、ロビーニョ、ホッキ・JR、ルシオ、ディーダとどの角度からどう見ても豪華メンバーである。スタメンの全員が国内組のメキシコとは役者が違う。個々のキープ力ではブラジルがやや上で、前半からブラジルがやや押し気味に試合を進めると次々にシュートを打った。対するメキシコは組織力で対抗。一人ひとりがボールを持ち過ぎずに、1タッチ、2タッチでボールを回し、周囲の的確なサポートでチームとしては五分に近いポゼッションを保った。メキシコは押されている試合のほうがコンパクトなラインを保てるためリズムが出やすい傾向があり、総じて強いチームに強いが、ブラジルのようにひとりひとりがボールキープに丁寧なチーム相手だと守備陣形が整うので余計にそれがはまり易い。
前半の最大の見せ場は28分。モラレスの左からのクロスへ中央であわせようとしたボルゲッティをホッキ・JRが後ろから抱え込みPKを獲得。珍しくボルゲッティが自ら蹴りゴールしたかに見えたが、主審の判定は蹴る前にフォンセカがエリアに入ったとしてやり直し。2度目のキックはポストに当たったが今度はGKディーダが早く動きすぎたという副審の判定で再度やり直し。この段階でベンチのラボルペはボルゲッティから通常のプレースキックのキッカーであるシーニャかモラレスに代わるように指示を出したものの何故かこの日のボルゲッティは意固地で、3回目も自分で蹴って結局ディーダにストップされた。ただでさえ足のシュートが不得手なのに慣れないことをするものではない、と皆が思ったシーンだった。もしこの試合に負けていたらボロカスに叩かれたことは間違いない。
後半メキシコはフォンセカに代えてペレスを投入、ボルゲッティの1トップにしたが、ブラジルは逆にメキシコに攻めさせるためかやや前半よりは引き気味にしてメキシコにボールを持たせるような雰囲気が立ち上がりはあった。そんな中での13分のボルゲッティのゴールである。ブラジルのセンターバックがしょぼいことは少なくないが、このシーンでもホッキ・JRがマークに付いていながら、信じられないことにボルゲッティがヘッドした場所ではサルシードとピネダとメキシコ選手3人がまとめてフリーになってシュートを争っていた。
相手がブラジルなのでリードしてもまったく持って油断は出来ない。当然先制されたブラジルは攻めに出てくる。メキシコはラインを下げ、自陣ペナルティエリアの前に2重、3重の壁を築いた。22分には右からのクロスに大裏で合わせたアドリアーノがヘッドでゴールしたかに見えたがオフサイド。この直後にメキシコは疲れの見えるピネダに代えてメンデスを右アウトに投入、なんとカルモナを左のストッパーに下げた。元来右利きのサイドバックであるカルモナを4バックの中央のストッパーに配したこの変更は実戦では全く初めてのフォーメーションだったが、カルモナは特に動揺するでもなくまるで始めからそこにいたかのように淡々とプレーを続け、気迫のこもった守備でブラジルの攻撃を跳ね返し続けた。守備のユーティリティプレーヤーの面目躍如である。
メキシコは後半、ボールキープでも勝り、スタジアムの観衆からは再三『オーレ!』の声が上がったほど。マイボールを危険な位置で失うことはほとんどなかった。勝利の要因は丁寧なボールキープと全員が集中力を切らさず守りきったことだった。
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<コンフェデレーション杯 3位決定戦 VS ドイツ 大会総括>
<ドイツ戦>
準決勝でPK戦の末アルゼンチンに敗れたメキシコは3位決定戦に回り開催国のドイツと戦った。決勝でブラジルと再び対戦するよりは、こっちのほうが楽しいし価値があるに決まっているのだ。当然ながら普段なかなか対戦できない格上の違ったタイプの相手と試合をこなすことで、自分たちの現在のレベルがより正確につかめるからだ。
地元ドイツの圧倒的なサポーターの前で行われた3位決定戦は激しい点の取り合いとなりまたも延長戦までもつれこんだ末、バラックがお家芸のFKを決めたドイツが勝った。だが、この日もメキシコは選手のやりくりに苦心しつつも“らしい”サッカーを見せ、開催国ドイツと互角かそれ以上に戦った。むろんドイツが退場で一人少なくなったことは差し引かねばなるまいが、メキシコのサッカーが欧州の強国相手に十分に通用するものであることを再認識させた。得点は前半がフォンセカ、後半の2点は共にボルゲッティがヘッドでドイツのDFに完全に競り勝ってのもの。フォンセカのシュートはシーニャからのタイミングのよいスルーパスを受けてGKと1対1になって決めたが、シーニャの相手の穴を見つける能力、フォンセカの裏に抜ける上手さが出たゴールだったし、ボルゲッティの2得点も右からの正確なクロスに対し巧みに動いて一瞬フリーになった動きはブラジル戦の得点シーン同様成長をうかがわせるものだった。
対するDF陣は大会前に怪我でH・サンチェスが、大会に入って怪我のマルケス、ドーピング疑惑のガリンド、カルモナと主力選手がどんどん欠けていった事情もあり、最終戦のこの日は3失点と大盤振る舞いした。失点の形も1点目のミドル、4点目のFKはシュートをほめるにしても、縦のパス交換から完全に崩された2点目、弱点でもあるCKから決められた3点目はメキシコの失点のパターンが見え隠れするもので、来年の本大会までに修正を期したい。
<総括>
総得点7、失点5という結果は失点のうちの3点が最終戦での失点であるから、4試合で2失点、しかもうち1点はアルゼンチン、ということで満足行く結果なのではないだろうか。得点は日本相手に2点(シーニャ、フォンセカ)、ブラジル戦1点(ボルゲッティ)、アルゼンチン戦1点(サルシード)、ドイツ戦3点(フォンセカ、ボルゲッティ)というわけで、ボルゲッティがまたまた他の選手を引き離して代表内ではリーディングゴールゲッターの座を守った。ギリシア戦が無得点というのはややさびしいが、無理をすべき試合でもなく主力を温存させての結果でもあるし、他の試合でもフォンセカにせよシーニャにせよ得点以外にも決定機の演出は少なからずあり、5試合の内容としては満足いく結果と言える。
攻撃陣に関しては、ボルゲッティが来年のW杯に向けて不動のレギュラーとなるのは現時点では間違いないだろう。ブラジル戦での得点は今回も大きな自信となっただろうし、苦しい試合でのここぞというシーンでの得点力はブランコと並び群を抜く。フォンセカはまずまずの動きで2得点したが、世界に通用するFWとしてはまだ物足りない。厳しい試合になればなるほど存在感が薄くなる。センタリングを受ける際の動き等にもう一回り工夫が必要だろう。交代で起用されたメディナはスピードが持ち味だが、ボールを受けるまでの動きが少なくチーム全体で彼を生かすとまでは至っていないし、今のままではスペースが出来たゲームでの切り札的な存在でしかない。
中盤はシーニャを中心に左のモラレス、右のペレスという攻撃的なオプションがよく機能した。3人とも小柄ながらメキシコ的なサッカーを表現するのに欠かせない選手たちで、豊かな創造性と多彩なコンビネーションを披露し、得点にも多く絡んだ。日本戦で見せたように2人とも左右両サイドで起用できるため、前半シーニャを左のインナーに、ペレスを右に、後半は逆に、モラレスを左のインナーからアウトサイドにと、ポジションチェンジのオプションが非常に多く、相手を困惑させるに十分だった。期待された左のロサノは大会を通じて思い切りが悪く今ひとつの出来。右のアウトに入った“ラボルペの愛弟子”のひとりメンデスはDFの不足から時に右のサイドバック、センターバックを努めるなどユーティリティぶりを発揮した。ボランチはパルドの1ボランチ、あるいはトラドやJPロドリゲス、マルケスを併用しての2ボランチのオプションが出たが1ボランチのほうが落ち着きはよかった。パルドは大会を通じてコンスタントに能力を発揮しキャプテンとしての重責を果たした。メキシコがいいサッカーをしているときにはTVの画面に入ってくる中盤の選手たちがバランスよくフィールドに散らばり、適度な距離を保ってのトライアングルが連続的に、非常にきれいに出ているのだが、今大会はそれが多く見られた。
DF陣は先に述べたようにレギュラークラス4人が欠場という非常事態で満足なコンビネーションが披露できなくても仕方ないところだったが、GKサンチェス、DFサルシードを中心によく持ちこたえた。サルシードは最近代表でもめきめきと力をつけてきてはいたが、今大会のパフォーマンスは特筆モノで、対人動作の強さで並み居る世界の強豪FW陣を抑えきったばかりか、アルゼンチン戦では値千金となる先制点をドリブルシュートから挙げ、更に苦しい台所事情に合わせて元来のポジションである3バックの左からセンター、4バックでの右センター、同じく左サイドバックまでそつなくこなし躍進の立役者となった。後は怪我や慢心といったメキシコにありがちな若手伸び悩みの要因を如何に克服して檜舞台へコンディションを持っていくかだ。
前にも述べたがメキシコ代表は総じてパスを丁寧につないでくるチームには相性がよいが、体格を生かしてパワーで押し込んでくるタイプのチームとの相性はよくない。今大会での躍進はメキシコ独特のパスワークのリズムが十分世界に通用することを示したが、他方、フィジカルに強いクラス――コンカカフでいえば米国であり、欧州のアングロ系民族の各チーム、アフリカの上位である――との対戦は評価し難かった。近隣のライバル国であり手の内を知り尽くす米国はともかく、今後、欧州の世界ランク10位前後までのチームや20位までの中堅国、中でも体力的にタフなチームと数多く試合をこなすことは、来年のW杯に向けて非常に意味のある準備となるだろう。メキシコは今大会善戦したものの、コンディションのムラはまだ大きく、どんな試合でもコンスタントにその力を発揮できるとは言いがたい。メキシコが真の強国になる為のポイントはそこにある。ギリシアとドイツというタイプの異なる欧州の2チームとの対戦でまずまずの手ごたえは掴んだものの、チェコやオランダやイングランド、フランスといった今大会に出場していない欧州の強国、伝統国と試合をしたら、今大会のようにはいかないだろう。相手がトップコンディションならば大敗の可能性もなきにしもあらずである。であれば、これから1年の間に少しでも多くそうしたライバルたちとの試合を多く組んで、少しでも苦手なタイプとの戦い方に慣れておく必要がある。むろん、メキシコでも国内リーグや所属チームとの兼ね合いは非常に難しく、毎回代表に選手を供出する、しないで喧々諤々の議論が交わされるのではあるが。
<日本代表の善戦>
日本はどうだったか。縦へ入れるボールの速さ、俊敏さ、個々の技術といった日本サッカー界全体が力を入れて伸ばしてきた部分は今大会でも十分発揮できた。3試合を通じて高いレベルの相手に対しても日本らしいサッカーで真っ向勝負が出来たことは今大会の大きな収穫だった。では日本に足りないと感じられたことは何だろうか。似たようなサッカーを志向していると言われるメキシコ代表との差異は以下のような点であると思う。
DF陣の個の能力と連携の強化。出来ればセンターに中沢クラスの能力を持つ選手がもうひとりいればと感じた。1対1に強くある程度の高さがあり、無理のきく選手が必要だ。宮本が悪いとは思わないが、控えを含めた層は薄い。また、細かいメキシコの細かいパスワークを基調とするスタイルを目指すならば、ダイレクト、1タッチでのパス回しを一試合の中でコンスタントに続けていけるだけの集中力をつけること。今大会では何度かそうしたプレーからゴール前までボールを運んだシーンが見られたが、それを繰り返し行える持続力がないと苦しい。むろんそれにはボールを中心に常に周囲の選手が複数、適度な距離でサポートしていることが必要だ。更に、メキシコくらいのレベルのチームと数多く試合をする。世界ランクで5位から15位くらいの様々なタイプのチームと積極的に交流を持つこと。可能ならばゴールドカップやコパ・アメリカに参加しアウェーの厳しい中での切磋琢磨に身を投じることで培われる自信は計り知れないように思える。こうした大会ではローカルなだけに『参加に意義がある』というようなチームは一部を除いて少ない。近隣諸国とのライバル対決のためにどのチームも全力で勝ちに来る。その厳しさから学べるものは少なくない。現にメキシコ代表はコンフェデの直後に開催されるゴールドカップにも参加する。前回トルシエ時代に参加したコパ・アメリカではまだお客さん気分が抜けないコメントが多かった印象があったが、今度参加できるような機会があれば、また違った動機で経験を積めるのではないかと思うのだ。
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