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メキシコ代表まっしぐらっ!


ウーゴ・ヨンチェスさんの代表レポート。
連絡なしの転載・引用等はご遠慮ください。転載・引用ご希望の場合はこちらまでご連絡ください。責任もってヨンチェスさんに取次ぎます。
 
チリ戦040218

それは前半13分のことだった。右サイドへのボールに合わせて走ったチリのフィゲロアが間に合わず、ボールがゴールラインを割る。勢い余ってピッチの外に出たフィゲロアがピッチへ駈け戻る。その足には最近流行のカラーシューズ…。

アナ:『フィゲロア選手、青いシューズですね。非常に目立ってカッコいいですねえ。まっ、これは好みの問題ですが――』

フェルナンデス:『キモいね、まったく。シューズの色は昔から黒って決まってるんだ』

ちなみにフェルナンデスはTVアステカをを代表するスポーツコメンテーターで、30年間同局のスポーツ番組の司会をつとめる知名度抜群のインテリ。前回お伝えしたウルグアイ戦でメキシコの2大TV局のひとつであるテレビサのメイン・コメンテーター、オルバニャノスがやった『ソサ選手の髪の毛の色を嫌悪する』発言に続き、今度は2大局のもう一つ、TVアステカのJ・R・フェルナンデスの勇み足イエローカード発言だ。2大局を代表するスポーツコメンテーター揃い踏みだ。2人はひょっとして“公共電波における個人の好みの押しつけ”“メキシコにおける放送コードへの挑戦”というタブーに手を取り合って挑もうとしているのか? 対戦相手になら何を言ってもいいのか? だがそもそも放送コードの概念自体がこの国のメディアに存在するというのか? メキシコの選手がカラーシューズを履いていたら一体どういうコメントになっていたのか、想像すると微笑ましい。  

と、この試合で小生的に一番盛り上がったのがこのシーンであったことからもわかるように、2月18日にロサンゼルスで行われた国際親善試合メキシコVSチリの試合は終始退屈な内容に終始した。ジーコジャパン同様、就任後今一つパッとしない成績が続くラボルペは停滞気味のフル代表に若いメンバーを加えてこの日のチリ戦に挑んだが、結果は1−1の引き分け。世代の融合を図るにはまだまだ時間が必要かと思わせる試合であった。メキシコの先発は以下の通り。

GKサンチェス、DF F・ロドリゲス、オソリオ、ブリセーニョ、MFマルティネス、ロペス、ガルシア、バルデス、L・ペレス、FWバウティスタ、ブラボ

メンバーを見て明らかなように、ロドリゲス、マルティネス、L・ペレスの3人は先だって行われたアテネ五輪北中米地区予選の決勝大会を戦ったU−23のメンバーである。

試合は立ち上がりから圧倒的な“ホーム”の声援に後押しされるメキシコが押し気味に試合を進めるが、チリはベテランのGKタピアを中心にロハス、オララらのDF陣の出来がよく、メキシコもバウティスタらのシュートミスがあって得点には至らない。前半終了間際のロスタイムにはチリの右CKからこぼれたボールをメキシコのアメリカでプレーするナビアに蹴り込まれて0-1で前半を折り返すこととなった。

後半はやはり五輪組みのM・ペレスを左サイドに投入し流れを掴むと、4分、左からのブリセーニョのクロスが右に流れるところを待ち構えたブラボが引っかけてメキシコが同点とした。が、その後は押し気味に試合を進めながらも、結局最後までスコアは動かなかった。

メキシコは得点力不足という攻撃面での課題は相変わらず。守備面ではDFの押し上げが少なく、中盤のスペースが開き過ぎて厚みのある攻めにつながらなかった。オソリオが中央で深く引き過ぎ、結果的にDFライン全体が下がってしまうシーンが目に付いた。当然のことだが効果的なDFラインのプッシュアップがなければ選手間の距離も開き、ボールをカットされやすくなる。守備でもプレスが効かずルーズボールも拾えない。そうなるとメキシコらしい小気味のいいショートパス(toque= タッチ)のリズムが生まれにくくなる。また、大型で運動能力の高い右サイドのマルティネスや、“マサ”ロドリゲス、ルイスとマリオの両ペレスも含め、五輪組がフル代表に融合できる展望がかすかに見えたのはW杯予選に向けての収穫といえる。








2004年3月親善試合

<エクアドル戦>
 3月10日のホームでエクアドル戦( 於T・グティエレス)は16時開催の試合で、W杯予選を控え選手のコンディションに気を遣うエクアドル相手にメキシコは終始ゲームのペースを握り、2-1で勝利した。ゴールは17分マルティネス(=PK)、30分ブラボ。特に前半の18分以降は完全なメキシコ的Toqueのリズムとなり観ていて楽しかった。
メキシコのメンバーはGKサンチェス、DFカルモナ(61分 M・ペレス)、オソリオ、ブリセーニョ、MFロペス、ガルシア(61分 F・ロドリゲス)、バルデス(61分 メンデス)、マルティネス、L・ペレス、FWバウティスタ(46分 サンタナ)、ブラボ(61分 オソルノ)だった。あまり参考になる試合内容ではなかったが、五輪組のフル代表への融合というテーマは一歩進んだかにみえた。またオソルノやバウティスタといったこれまで起用されなら今一つ期待に応えきれていない選手たちにとっては、これからコパ・アメリカまでが今後のレギュラー定着への正念場となる。コパ・アメリカにはブランコやアレジャノら前W杯に出場したベテラン組の召集・チェックも予定されている。


<コスタリカ戦>
また3月31日には同じコンカカフ内のライバルであるコスタリカと米・カリフォルニアのホーム・デポ・センター・スタジアムにて対戦した。この試合は何と言ってもスペインリーグ所属の2選手、バルセロナのマルケスとセビージャのトラドの招集が目を引いた。マルケスはこれまでも再三ラボルペの招集に応じてきたが、トラドはワールドカップ後初めての代表への合流となった。またそれ以外にもマルティネス、ペレスら五輪組のフル代表への定着、そしてコパアメリカへ向けて招集される予定であるダビーノらアトランタ世代のプレーぶりにも注目は集まった。スタメンは以下の通り。

GKサンチェス、DFマルケス、ダビーノ、カルモナ、MFパルド、トラド、M・ペレス、アルタミラノ、ガルシア FWボルゲッティ、オソルノ

DFは、マルケスがラボルペ構想での定位置である右のDFで先発。ダビーノをセンターに、カルモナが左に。MFはパルドが右のアウト、トラドを中央に、そしてM・ペレスが左のアウト、ガルシアとアルタミラノが左右のインナー、2トップはボルゲッティとオソルノ。1ボランチの3-5-2であるこのシステムは、ラボルペ就任以来ずっとボランチでプレーしてきたパルドが右サイドに入ったこと、アウトサイドでの起用が多いアルタミラノがインナーでより攻撃に重点を置いたポジションに入ったことが大きな変化だった。これでうまくいかなければボコボコに批判されるところなのだが、そうはならないところがやはりラボルペの運の強さと言えるのか、それとも監督としての実力なのか、試合は徐々にメキシコペースとなる。アクシデントは7分にトラドがコスタリカの選手と競った際に遅れて入り、結果頭を8針を縫う怪我で退場したこと。ラボルペとしてもコパアメリカ前にトラドの機能を試したかっただけに残念な結果となった。しかし試合は代わって入ったマルティネスが右ボランチ、アルタミラノがやや上がり目のアウトサイド、パルドがトラドの代わりにボランチの底に入るシフトチェンジをしてリズムを掴んでいった。メキシコの得点はまず前半の12分。DFラインからつないだボールがオソルノ、マルティネスと渡り、右サイドのアルタミラノへ。アルタミラノが持ち直して左足で上げたクロスをガルシアが難しい体勢から左足のボレーで決めて先制した。ボルゲッティがニアへ走ってDFを引き付けて空いた中央のスペースに走り込んだガルシアがコスタリカのDFと競りながら蹴り込んだ。その後はメキシコがマルケスやダビーノ、パルドといった経験豊富な選手を中心に安定したボールキープと的を得たラインコントロールを披露しゲームのペースを握った。コスタリカは40分にディアスがスルーパスから左サイドをうまく抜け出し決定機となったがGKサンチェスがセーブ。メキシコはそのボールを素早くつないでカウンターからコスタリカのペナルティエリア中央へドリブルでM・ペレスが切れ込むと、DF3人を引き付けて右サイドにフリーで走り込んだマルティネスにパス。これを受けたマルティネスがゴール左隅にきれいに決めて2点目を上げた。五輪代表から昇格した才能あふれる2人によりもたらされた鮮やかなゴールだった。

後半になると14分にメキシコはオソルノ、ガルシア、アルタミラノを下げ、セペダ、メンドーサ、ブリセーニョを投入。ブリセーニョが左DFに入り、カルモナが右のアウトサイドへ。メンドーサとセペダはそのままほぼガルシアとオソルノのポジションへ入り試合を進めたが追加点は奪えず、逆に13分と33分にDFの不用意なミスからコスタリカに決定機を作られたが、2度ともサンチェスが見事なセーブで防ぎきり、2-0での勝利をものにした。


五輪組の定着は間違いなく進んでいる。マルティネスもM・ペレスも試合の毎に自信を持ったプレーが出るようになっているし、チームメートも彼等を信頼している。マルティネスに相応しいポジションがサイドなのかボランチなのかについては未だ議論の余地が残るところで、個人的には走力を生かしたサイドのポジションの方がより生きる気はする。DFのロドリゲスは緊張からか今一つ不安定にみえたが、もう少し長い時間プレーしないと評価は難しい。また五輪組ではないがアルタミラノも持ち味を出せるようになり代表定着も見えてきた。
 正念場である“未完の大器”オソルノはまたも結果を出せず。最近はプレースタイルがボケてしまっている印象。左サイドのチャンスメーカーなのかゴールに近い位置でプレーさせるのか。前回の予選の時からずっと指摘しているが(指摘してもあまり影響力はないが)、彼のようなプレースタイルの選手が中盤に引いてボールをもらうことに意味があるのか。M・ペレスの台頭で一気に左サイドのレギュラーは決まりそうな雰囲気すらある。オソルノが左サイドに流れることでM・ペレスは中に切りこむオプションが出来るはずだが、この日はコンビネーションは今一つ。FWの枠の一つがオソルノである必要性は今のメキシコには全くない。久々のフル代表でのゲームとなったメンドーサもやはりインパクト不足。どのポジションで起用すべきなのかまだ判断には時間が必要だろう。ダビーノは不用意なプレーはあったもののこの試合に関しては及第点。ベテランらしい落ちついたプレーを見せたが、本大会を見据えるとやはり若い世代が台頭して欲しいポジションではある。

米国戦040428

<今年最低のトホホ・ゲーム>
 0-0のまま後半45分を大きく過ぎ、ロスタイムも3分を経過。後半途中から投入されたブリセーニョがメキシコの左サイドでドノバンの突破に振り切られ、堪らず後ろから引っかける。このファウルで得たFKをコンヴィがゴール前に上げ、交代で入っていたトウェルマンが中央でフリーになりドンピシャのヘディングシュート。これはGKサンチェスが辛うじて手に当てたが、弾いたボールがこぼれたのはセットプレーで上がっていた米国DFポープの前。メキシコDFと競ることもなく、ポープがこれを難なく蹴り込み、米国が土壇場で勝利をものにした。

 試合はスコアこそ、ロスタイムの失点による0-1だったが、シュート数が米国の14に対しメキシコ3、そしかもの3本すべてがゴールの枠外のシュートであることからも分かるようにメキシコの完敗だった。米国が90分のほとんどの時間帯でペースを握りイニシアチブを取り続け、決定機の数もメキシコを圧倒的に上回った。3-0、4-0と言った大差がついていてもおかしくない試合だった。


<メキシコメンバー>
GKサンチェス、DF  F・ロドリゲス、ダビーノ、オソリオ、MFアルタミラノ(61分 M・ペレス)、マルティネス、パルド(46分 ロペス)、バルデス(69分 モラ)、L・ペレス、FWブラボ、ボルゲッティ(80分ブリセーニョ)。

試合は立ちあがりから米国が積極的にイニシアチブを取った。メキシコも10分過ぎから幾度か右のアルタミラノとマルティネスから形を作ったが、次第に米国の早い出足からのプレスに押され出すと、32分には左コーナーのクリアを拾ったドノバンのミドルシュートがバーを叩き、更に33分にもドノバンからケーシーにつながれ決定的に近いチャンスを作られ、36分にもドノバンの決定的なシュートと、激しい波状攻撃を受けた。
 後半に入っても米国のリズムは変わらず、2分、3分、4分、と波状攻撃。MFとDFの間のラインで自由にボールを回され、やりたい放題状態。後半開始からパルドに代わって入ったロペスは、ボールを持ったときにはいくらかの落ちつきをチームを与えたが、米国のエースを自由にさせない、ボールを渡さない、というボランチ本来の役割については期待に応えたとは言えなかった。もっともこれはMF陣の配置の問題とも関わるのでボランチだけのせいとは言い切れない。これまでの試合では2ボランチに近いシステムを取ってきたのだが、コスタリカ戦から1ボランチ。それ以前の試合では左のインナーMFであるガルシアやバルデス(米国戦ではアウトサイド)が献身的に守備にも入っていたが、この日は中央の1ボランチが孤立し、その両サイドにスペースが空き過ぎた。DFの3人も2人のFWに対し効果的なインターセプトはほとんどなく、いわゆる“門”の状態になってはケーシー、ウォルフにスペースに入りこまれた。
メキシコのこの試合唯一の決定機は後半の9分、ロペスのスルーパスからブラボが中央を抜け出して迎えたものだが、ブラボが潰れ、そのこぼれ球を打ったボルゲッテッィのシュートはゴールへは飛ばず。16分に左サイドにM・ペレスが入ってから、緩急が出来たことでややリズムを掴んだものの、結局最後まで米国守備陣を効果的に崩すようなシーンはみられなかった。

 メキシコにとっては、今年の上半期の親善試合の中でも、チームの仕上がり状態の確認と今後のW杯予選やコパアメリカへの指標となる大切な試合。ましてやCONCACAFのクラシコである米国戦。ただ単に負けてはいけないというだけでなく、内容も問われた。ここ数年、分のよくない“かつてのお客サン”米国相手にメキシコらしいサッカーをして勝利し、“北中米の雄”復活を高らかに宣言したいところだった。ましてやこの日の米国は欧州の主力をほとんど召集しない完全な国内組中心のチーム編成(欧州組はカールスルーエ所属のケーシーのみ)である。“舐められてたまるか!”、そうメキシコ国民が思ったのも無理はない。だが、立ちはだかった現実は厳しかった。90分間のほとんどの時間帯、メキシコの選手はボールが足に付かず、米国の出足の速いプレスに苦しめられミスを連発。苦し紛れのパスやドリブルで不用意にボールを奪われてはドノバンを起点にした速攻を浴び自らピンチに陥った。

この日の米国の出来がよかったのも間違いはない。欧州でプレーするメンバーがほとんどいないにもかかわらず自分達のスタイルを最後まで貫いた。攻撃面では組織力と豊富な走力を行かしてダイレクト、ワンタッチでシンプルにボールを動かし、選手が後方から次々にスペースへ飛び出した。左のMFに入ったドノバンがメキシコのDFと1ボランチの間に空いたスペースに巧みに入り込みパスを受けると、それに連動するかのようにケーシーとウォルフが、3人のメキシコDFの間のスペースを横切るようにしてラインの裏に抜け出す。ドノバンの動きで空いた左サイドはサイドバックのヘイドュクが埋め、右からはベアズリー、コンヴィらが分厚いフォローを見せる。守備では終了10分前までの約80分間、中盤の高い位置から間断なく2人、3人と献身的なプレスをかけ、体を張ってメキシコのボールを奪い続け、またボルゲッティやブラボをDF陣がフリーにすることもほとんどなかった。まだ粗削りで細かいミスはあるものの、米国代表はかつての体力とパワーのみのサッカーに組織力と技術を加え成熟し始めているのかもしれない。それが花開くのが06年のドイツW杯となるだろうか。
 一方のメキシコは試合後ラボルペが会見で、アメフト専用グラウンドである上に、試合前の雨で芝が濡れた状態でありボールが走らなかったため米国に有利になったことを嘆いたが、如何なものか。アウェーでやっている以上、それを言い訳には出来まい。確かにカナダ人レフリーのジャッジも酷かったが、それは米国にとっても同じ条件。ミスジャッジは双方に対してあった。接触プレーで鳴らない笛への不満は体格的に劣るメキシコの方が多いだろうが、フィジカルコンタクトを避けるだけのパスワークと技術があれば問題はなかったはずだ。少なくともこれまではそうだった。だが、この日の試合ではパワー、技術、組織力、そして勝負への執念。どれをとっても米国のほうが優れていたのではなかったか。メキシコが米国より優れていると思わせる点等全くなかったのではないか。米国選手の決して上手とは言えない大袈裟な切り返しに再三引っかかってずるずると抜かれていくメキシコ選手は情けなかった。