「動機づける力」DIAMONDハーバードビジネス編集部
ヤル気のない人(自分含む)をヤル気にさせるのは難しい。会社で働いていると、人間のヤル気を呼び起こすにはどうすれば良いか、考えてしまう場面が多い。そんなわけで、それっぽいテーマを扱っている本を読んだ。第1章
モチベーションとは何か?フレデリック・ハーズバーグが1968年に発表した「衛生・動機付け理論」(二要因理論)の論文。衛生要因は不満の原因にはなるが、モチベーションを上げる効果は弱い。モチベーションを上げるには、動機付け要因が必要。デパートの例だと、デパートのトイレは清潔にしなければいけないが、トイレが綺麗だからといってお客が来るわけではない。お客を呼ぶには、動機付け要因に当たる別の何かが必要。会社で例えるなら、インセンティブとしてよく使われる賃金や休暇は衛生要因でしかない。仕事にヤル気を出させるなら、動機付け要因に当たる別の何かが必要。動機付け要因は「達成」「承認」「責任」「成長」などに関係している、と。第2章
ピグマリオン・マネージメント他人からの期待がヤル気に大きく影響していますよ、という「ピグマリオン効果」についての解説。期待の仕方にもいろいろあって、期待しすぎてもいけない。かといって低い期待が相手に反骨精神を生み出し、ヤル気を出させるという場合もある。上手な期待の仕方がありますよ、ということ。あと、若者に期待せよ、「鉄は熱いうちに打て」と書いてある。ちなみに、オードリーヘップバーン主演「マイフェアレディ」の原作のタイトルが「ピグマリオン」だそうです。ピグマリオンはギリシャ神話に出てくる彫刻の名人で、自分の彫った美女の像に恋したあまり、ついには神様がその像へ命を与えたとか。第3章
MBO失敗の本質目標管理制度(Management
By Objectives,
MBO)について書かれた論考。1970年に発表されたというのが驚き。MBOを導入して失敗したとされている会社は、まずこれをきちんと読むべき。「MBOと業績評価プロセスは、よくある方法で実行している限り、長期的には確実に失敗する」と断言されている。それも1970年に!なんちゅうこった。だからといって「MBOを廃止して年功序列が良い」と書かれているわけではなく、上手なやり方にするにはうんぬんかんぬん、という建設的な意見が述べてある。上手に運営するのが難しい制度なのは良くわかった。第4章
モチベーショナル・リーダーの条件部下にヤル気を起こさせるような優れたマネージャーには「権力欲求」が必要。「権力欲求」とは「人(組織)を動かしたい」と思う欲求のこと。「権力を手に入れたい、偉くなりたい」という個人的な権力欲求とは区別されている。よく考えてみると当たり前で、「他人や組織には興味ない」という人がマネージャーになったら恐ろしいことになる。それと関連して、「みんなと仲良く和気あいあいとしたい」という「親和欲求」についても述べられている。この「親和欲求」については弱い方がいいらしい。「親和欲求」が悪影響をもたらす原因として、馴れ合いの関係、不公平な手続きが指摘されている。「会社や仕事のためなら部下に嫌われてもいい」ぐらいの姿勢が求められるわけだから、マネージャー、管理職と呼ばれる人達は大変ですな。まさに土方歳三の精神。第5章
フェア・プロセス:信頼を積み上げるマネジメント人が納得するには結果だけでなく、プロセスも重要。たとえ結果が自分にとって望ましくても、そのプロセス(理由)が不透明だと、不信感が募る。例えば、自分が今までと変わりなく仕事をしていて会社の業績も変化していないのに、いきなり給料が倍になったら、「何で?」という疑問がわく。きちんと原因と結果までのプロセスを説明して、信頼関係を築くのが重要ですよ、と。面倒くさいからといって、まわりの人達に対してきちんとした説明を省いていませんか?と。はい、自分は周囲の人達に説明不足でした。すいませんでした。第6章
人を動かす知恵HPの元CEO、カーリーフィオリーナはじめCEO経験者、高校教師、犬ぞり大会チャンピオンなどの各界の偉い人達へのインタビュー12本。犬ぞり大会チャンピオンは、普通に犬と信頼関係を築く方法について答えていて、犬も人も一緒なんだな、と感じた。「僕らはみんな生きている」の世界。第7章
正しい苦言の呈し方誰かが誰かに苦言を呈する時、苦言を呈する側は「望ましい会話の終了状態」を無意識的に決めている。つまり、相手が自分の苦言を真摯に受け止め、「今から改善します」と言って欲しいので苦言を呈する。しかし、往々にして苦言を呈された側はムッとするわけで、そのまま穏やかに会話が終了するわけもなく、言い方次第では血を見ることになる、と。また別のケースとして、論理的に相手を丸め込んでしまうというのも危険。相手は論理的には筋が通っているので従ったフリをするが、心の奥底でボウボウメラメラの何かが渦巻いたままになる。それがたまりにたまると、後で、血を見ることになる、と。どのように苦言を呈するかについては、最初から説得しようと考えたり、勝ち負けを求めない方がいいとのこと。相手を尊重し、対話する姿勢が重要。でも、なかなかできない。それは難しいですぞ。だって苦言を呈そうとする時点で、相手に不満があるわけで。第8章
ストーリーテリングが人を動かす脚本家の養成者として有名な人がストーリーテリングの重要性について述べたインタビュー。一般に素晴らしいと言われる物語を作るには、まず主人公を設定する。次に主人公の願望がある。次にその願望を妨げる敵、困難、恐怖がある。そして、次に主人公がこれらの障害に打ち勝つ。最後に、どのような行動を取らせて結末を迎えるかを考える。そして、ストーリーができたら、一歩引いて眺めて、嘘っぽくないかチェックする。つまり、ストーリーが真実であるかチェックする。これで、素晴らしいストーリーのできあがり。ストーリーというのは、観客の感情を揺り起こし、動機づけるために非常に有効。ところが、この法則が無視されがちなのが、会社のプレスリリースだそうだ。主人公(会社)があって、高い目標があって、素晴らしい技術が語られ、そして目標を達成しました。つまり、物語の暗部、リスクについては何も語らない。それでは人を納得させられないばかりか、不信感すら植え付けるぞ、と。みんなもっと真実の物語を語りなさい、と。以上、内容紹介おわり。明らかに間違ったやり方をするよりは、こういった話を知ってれば不幸は減らせるかもしれない。幸せになれるかどうかは不明。「動機づける力」(Amazon.co.jp)
Posted: 土 - 4月 23, 2005 at 12:22 午後