阿部和重「グランド・フィナーレ」
たまには最近の小説でも読んでみようかと思い、芥川賞の名前につられて本作をセレクト。豪華なイメージのタイトルからして大どんでん返しでもあるのかな、と期待して読んでいたら、特にそういったドラマチックな展開もなく、あれ?という感じ。なぜ犯罪は起きるのか?犯罪者の心理に迫ってみた!という小説なのかというと、そういうのとも少し違う感じ。きっと犯罪者はこの主人公のような心理なのだろう、とは思えない。芥川賞の選評で「物書きとしての内面的なニーズが一向に感じられない」というのがあったけど、何をテーマとして捉えるかで、この小説の印象が変わってきそう。最初は読み終わった後に物足りなさを覚えて、肩すかしをくらったような読後感。しばらくして、この小説は、果たして犯罪そのものがテーマなのか?と思いはじめた。モチーフ自体は何でもよくて、要は世間からダメだしされてしまったシチュエーションがポイントなのでは。「お前、それは人としてダメだろう」と言われた時に、ダメ度(相手の怒りでも可)が最大限に達していると、反論すら聞いてもらえない。覆水盆にかえらず。修復不可能な人間関係も、いわば自業自得。この小説を読むと、もし世の中の全ての人からフラれてしまったらどういう感覚か?というのを味わうことができる。自分の人生のパラレルワールドの中の、あまり楽しくない一例を想像してみるのもいいんじゃないかと思いました。犯罪防止の一助として。「グランド・フィナーレ」(Amazon.co.jp)
Posted: 土 - 5月 14, 2005 at 09:28 午前