江國香織「号泣する準備はできていた」



少し前にマーチ伊藤さんからお話を聞いていたので、読みました。

短編集。どの物語も共通したトーンを持っている。最初、嘘泣きの話かと思っていたら、全然違いました。

あとがきが秀逸。今、しやわせな方々は、既に号泣する準備をしてるんだ、という。

いや違います。そう書くと、皮肉っぽくなってしまいます。そうじゃなくて視点が今から未来へではなく、今から昔へ向かった場合。号泣しそうな段階に達したときに、ふと昔を振り返ってみる。ああ、そうか、もうあの頃から、いやあの頃自体が自分の号泣するための準備期間だったんだな、という。

これは思うにスゴい発想で、そんなの考えた事もありませんでした。普通だったら、号泣するのみです。恨み辛み妬みです。号泣して悲しい悲しい、ああ悲しい、という段階を通過し、頭も冷めてきたところで「そもそもなんで、号泣するんだ?」という。号泣するにはそれだけの理由があって、その理由は恨むようなもんじゃないはずだ、という。

まるで影を使って光を表現する、点描のよう。

Posted: 土 - 3月 20, 2004 at 01:40 午前        


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