ジェフリー・ムーア「キャズム」



いろいろなブログやニュースサイトの記事を読むと、たまに「キャズム」という単語を見かけることがある。興味を持ったので、本書を読んでみた。初版は10年以上前の1991年に発行された。小難しい内容を想像していたんだけど、思っていたより熱い本だった。コンサルティングパワーでしょうか。

本題のキャズムに入る前に、この本の序章には、そもそも何故マーケティングが重要なのかが書いてある。この先、米国が安い労働力、安い原材料で他国に対して優位性を誇ることはない。ハイテク分野における(技術的な)独創性とマーケティングの専門知識が、米国がグローバル競争を勝ち抜く上での重要な礎石であるという。ここから伺えるのは、まず強い危機感がベースにあるんだな、ということ。

(参考)キャズムとは

本書の中には、テクノロジーライフサイクルを表現したマーケティングモデルの解説から始まり、そのモデルに潜む深い溝(キャズム)、そしてキャズムを超えるための戦略について書いてある。ところどころ「それができないから苦労してるのでは?」というような部分があるんだけど、それだけキャズム超えというのは難しいことなんだと理解した。著者は、キャズムを超えてメインストリーム市場へ入って行く行為を「押し込み、家宅侵入、詐欺、場合によっては密偵行為」と例えている。この例え一つとっても、かつて石川さゆりが「あなたと超えたい」と唄った天城超えよりも、激しく困難であることが推測される。誰と一緒にキャズムを超えて、誰を蹴り落とすか。物騒な話です。

例えば、「あの上司は新しい技術に理解がなくてだめだ」と思ったとしよう。日本人だと居酒屋の愚痴に花が咲くテーマですが、その上司をレイトマジョリティーとして定義し、マーケティングと戦略でもって本気で攻略しようとするのがキャズム理論なんじゃないでしょうか。上司を攻略、というより社内への浸透が最終目的というか。決してレイトマジョリティーの人達を時代遅れとして非難する事はしない。どうするかというと、普及の妨げになっている要素を洗い出し、問題点を解決するための行動を起こす。そしてターゲット(話のわかるアーリーアドプター型の上司や同僚)を選定し、説得していく。次に、アーリーマジョリティ、その後にレイトマジョリティー、といった風に戦略を立てて広めていく。結果的に一つの会社がダメなまま存続するか、構造改革が起こるか、にも関わってくる。この本には、キャズム超えに重要なのは「強烈な意志」だとも書かれている。熱い本です。

それを世界市場レベルで実行しているアメリカ。恐るべし。

あと、一つなるほどなぁ、と思ったのがホールプロダクト(Whole Product)という考え方。iPodを例にとると、iPod単体が製品なのではなく、iPodとiTunesとiTunes Music Store、その他の関連アイテム、サービスの全てが揃って、はじめて一つの製品なんだ、という考え方。だからiPodに勝とうとしたら、性能やデザインで対抗するだけではダメ。iTunesだとか、iTunes Music Storeだとか、カーオーディオとの連携だとか、DRMをどれ位厳しくするだとか、各種アクセサリだとか、ユーザのあらゆる音楽体験を考えなくてはいけない。iPodはコアプロダクトのうちの一つに過ぎない。

結論:がんばれニッポン。

ジェフリー・ムーア「キャズム」

Posted: 土 - 8月 13, 2005 at 03:58 午後        


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