メンズセンター編『男たちの「私」さがし-ジェンダーとしての男に気づく』

(かもがわブックレット104、かもがわ出版、1997)


 メンズセンターの活動は、以前から中村彰さんからいろいろ情報をいただいていたので関心を持っていた。武田春子さんのパートナーである中村正さんの『「男らしさ」からの自由ー模索する男たちのアメリカ』やメンズセンター編の『「男らしさ」からの「自分らしさ」へ』も(同じかもがわブックレットから出ている)興味深く読んだところだ。

 今度、1996年11月に京都で開かれた「第1回男のフェスティバル」での分科会の報告が『男たちの「私」さがしージェンダーとしての男に気づく』としてまとまったようで、著者のお一人で旧知の吉田清彦さんから「乞御書評」と書かれた紙とともにご本を頂戴した。取り急ぎ、わが「ジェンダーとメディアのページ」で紹介したい。これを読んだ方、さらにいろんなところで「御書評」してくださると喜ばれることでしょう。

 「コマーシャルの中の男女役割を問い直す会」の吉田清彦さんの「メディアのなかの男らしさ」の章では、新聞広告とテレビCMを題材に「メディアのなかの男らしさ」を検証した結果を報告している。

 まず驚いたのは、CMの効果に関するデータである。「(家電のテレビCCM)でCMの比率は、市場シェアとほぼ一致する」(松下電器産業)や「そのCMを見たことのない人と比べて、見たことのある人は4倍、そのCMが『いいと思う』と答えた人は15倍もその商品を買ったり、買いたいと考えたりする」(電通コミュニケーション研究部) 

 それから最近のCMが「男だったら乗ってみな」(日産新スカイライン)、「早く読まなきゃ男がたたぬ」(パソコン誌)など「悪のりがすぎる」性的な表現が個々数年とくに目につくという。

 吉田さんたちの「CMの男女役割を問い直す会」の活動でいいなと思うのは、女ばっかりに目が向くメディア批判が多いなかで、男女の関係をとらえていることだ。それこそジェンダーだ。私たちもこれからは男性と女性の関係としてメディア表象を見ていきたいと思う。それに長続きしているのは、とってもえらい。同じことをこれだけ続けるからこそわかることも多い。それがどれだけ大変なことか、が実感としてわかるから拍手・合掌している。

 吉田さんの他の方たちのそれぞれの分科会報告もおもしろい。たとえば、水野阿修羅さんの「体のワークショップー自分を知る、他者を知る」で紹介されているゲーム九種はとても参考になる。言葉を使わないで誕生日順に輪になるというゲームや、目をつぶって他の人の手を握りあって輪を作るというゲームなど、身体感覚を復活させようという意図のゲームはどんなグループでもやってみると新鮮で、親近感が生まれそう。男の子育てワークショップや、息子たちのコンシャスネス・レイジング、ゲイと「男らしさ」など、いずれも読んでいて心地よい。切実さと真剣さを強く感じる。

 あとがきの中村正さんの「女性問題は男性問題である」というのは以下の点から難点があるという主張はきわめて説得的である。三つの問題点は、「男女は集団としては非対称であるから」「両者がにらみあうのではなく、社会制度を媒介にすべき」「男女をつがうことを前提にしている」である。中村さんの今後の「男性問題論の構築」から目を離せない。

 こんなに多様な個性と多様な問題点を持つ人たちが一同に会して「男のフェスティバル」をやれるというのは、まだメンズリブがごくごく少数派だからなのか、それともごちゃごちゃあっても集団での行動の政治的インパクトを多くの人が重視して結局まとまれるからなのか、どっちなんだろうか?

 最近の女性たちが「女のフェスティバル」がやれないようになっている現状から、はてな?と考えた。


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