Cheap Thrills◆Big Brother and The Holding Company
いきなりですが、”魂震える”とは、いったいどういう状態なのでしょうか。
人間には喜怒哀楽のような感情があって、そのどれかがレブリミットに達しようとするほどに回転計の針が振り切れるときに”魂”は震えるのだろうと思います。ところが、人も大人になるにつれムケムケで”感情”を露にしているとなにかと支障も多く、そのため社会性なり世間体なりという殻を纏うようになります。そうすると、日常の中で感情の回転数はなかなか上昇することは少なくなっていき、ひどい時には自分がいま「嬉しいのか悲しいのかリラックスしてるのか緊張してるのか」というようなことさえわからなくなってくる、などということも起こるのではないでしょうか。そういうのはきっと、現代人のストレスの大きな原因であるのではないかと思うのです。時代や地域によっては、日常という”ケ”の時間に対してあらゆる面で箍を外すことの可能な「祭り」という”ハレ”の場が用意されていた歴史もあるようですが、ようは人間もバイクも、たまにはレッドまで回してあげないと調子が狂いますよ、ということなのではないでしょうか。現代で言えば、例えば”恋愛”というシチュエーションは、間違いなく感情を振り切らせられる数少ない”魂震わせる”ことのできるハレの場なのですが、そうそう都合良くいつでも誰にでも恋愛が降って来てくれるわけではありません。そういう現代社会の中で、擬似的に恋愛に似た魂への振動を与えてくれるもの、それが”芸術”と呼ばれるものなのではないかと思うのです。私たちは音楽を、絵画を、演劇を、文学を、鑑賞する時に、ふだんは押し止めている様々な感情の発露を見出し、共鳴し、魂を震えさせることができるのではないでしょうか。で、ジャニス・ジョップリンです。ロックは芸術か?という定義は置いておいて、少なくとも”魂を震わせられる”という意味において、この人の”うた”に異論を挟める人は少ないのではないでしょうか。あまりに凄過ぎて圧倒されるボーカル、人の声という”楽器”の無限の表現力を、私はこの人によって知りました。ビッグブラザー&ホールディング・カンパニーとしての1967年フィルモア・ウェストでのライブ録音なのですが、音楽の”生”の力というのもこのライブ盤に詰め込まれています。なんど聴いても背筋が寒くなって鳥肌が立つ3.『サマータイム』は、ジャズ・ボーカリストも採りあげることの多いスタンダード曲ですが、ほかの誰の歌とも違いそれこそジャニスの”ソウル”そのものが空気の波となってカタチを現しているようです。表現やモノ造りにおいて、誰かの魂震わせるような”なにか”を造り上げるには、表現者自身が身を削るように魂込めなければ伝わらないのだ、ということを教えてくれるアルバムでもあります。60年代後半というロック界においては激動の時代の中で、同じように革新的な才能を持った重要なミュージシャンの何人かと同じように、駆け抜けるようにして逝ってしまったジャニス・ジョップリン。いまでも褪せることなく聴くものの魂を震えさせ続けてくれる、大切な大切なひとりです。ここんとこ恋愛して魂が震えてないそこのあなた。ジャニスの歌声で、久しぶりにレッドまで振り切ってみませんか?(あ、じぶんか…)
Posted: 水 - 1月 19, 2005 at 10:14 午前
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