鉄魂
鉄でできた有機体。
先日ちょっと国内線で移動する機会がありましてね、機内で読む本を持ってなかったので空港内の本屋を物色してたらね、こんなん見つけましたよ。
ああ、わかる人は誰でも知ってるミスターバイクBG
の表紙イラストを中心とした作品集ですよ。こんなん待ってました、私。中身にほとんど興味なくっても(失礼)この表紙のためだけにときどき雑誌購入しちゃったりしますもんね。東本氏の仕事を、こういう形で見れるっていうのはなかなか貴重なことじゃあないでしょうか?懐かしい名車たちのスペックとともに描かれるイラストは、ほんとうにどれもこれも額縁に入れてガレージに貼りたいステキなものばかりです。多くの作品にはバイクといっしょにおねーさんが描かれてるのですが、このおねーさんたちの雰囲気がまた素晴らしいんですよ、みんな。60年代〜80年代頃までのそれぞれのバイクの時代背景にピッタリそのまんまの感じで、ものすごく懐かしい想いと、それでもいまこの時代にこの人がいても、って思わせるくらい魅力的な女性ばっかりなんですよ。東本氏の描く女性はどれも”とびきりの””絶世の”美女じゃあないんですよね。ほんとにその時代にそのバイクの周辺にごく普通にいそうな、時間軸に則ったリアルさがあるのです。(誤解がありそうな言い方なんですけど)私はVIBES
おねえさんに見られるB級具合に、ものすごくエロティシズムを感じてしまうのですが、逆に「完全な美」はぜんぜんえっちぃくないと思います。もすこし胸が大きかったら…もすこし鼻筋が通ってたら…もすこし身長が高かったら…もすこし顎がシャープだったら…もすこし目が大きかったら…もすこし、、、、、、そういう”もう少し”の中にいやらしさや本当の魅力は潜んでいるのだと思うのです。足りなさや不完全さを持ちながら、そのことを自覚することでシャイネスは生まれてくるのだと思いますし、自分を知る人は相手に優しくなれるっていうのはやっぱりどうも本当のことのようです。東本氏は本質的にバイクの不安定さ不完全さを肌感覚で知っている人だから、こういう”もう少し”の中に魅力とエロスを秘めた女性を描くことができるのだろうし、だからこそ弱肉強食の野生の中で肉食動物にとっては無力な『キリン
』を社会の中でのバイクに置き換えて語れるのだろうとも思うのです。後半ページには(書き下ろしだと思われる)女性とバイクの結合体が描かれてるのですが、これがまたほんとうに素晴らしくエロティックなのですよ。そこいらへんの週刊誌グラビアなんかよりもずっとずっとえっちぃですね。バイクは”快楽と危険を同時に予感させる乗り物”であり、その魅力に憑かれてしまった者は決して抗えない、っていうことが暗示されてます。インタビュー記事では東本氏が生涯の到達点として構想している作品『ひょっとこ』についての記述もありました。きっとこれが、漫画家としての東本氏にとっての”地平線の彼方に立つ銀馬”なのでしょうね。私は私の「ひょっとこ」を持っているか?来た道といま立っている場所とこれから進む方向は見えているのか?そういうことを、突きつけられたような気持ちにもなりましたね。飛行機の窓からね、夕暮れの赤く染まる空と雲の切れ間を見ているとね、そこに”ちらっと”ホリゾンタル・グレイズが見えたような気がしたのですよ。届くといいな、いつか。
Posted: 木 - 11月 2, 2006 at 02:02 午後