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ON ANY SUNDAY 栄光のライダー


はじめてオートバイに乗った日のこと、覚えてますか?

その”瞬間”の衝撃を、いまでも覚えていますか?

私の場合それは、16歳の時の夏の夜。
真っ暗な田圃の広がる中に、街灯に照らされて1本真っ直ぐに通った農道。
友人の国産250マルチのバイクに跨がって、頭でなんどもなんども反芻していた手順をつぶやきながら、クラッチを握りしめ、1速へシフトし、アクセルを少しずつ少しずつ開けながら、左手を緩めていく…

細かな鼓動を続けていた股の間の鉄の塊がするすると前へ進み出したその時に、自分の人生の中で、なにか最も大切なものへアクセスするためのスイッチが入ったのだと、いまでは思うのです。

私はあの瞬間のことをいまでも鮮明に思い出すことができます。
ローのままゆっくりと前進し、そこで出たセリフは「半クラって、発進の時だけだよね?」でした。
ああ、カワイイ>じぶん。

たった数百メートルだけ、自分の力でモーターサイクルを前進させただけの経験でしたが、その夜は興奮してうまく寝付けませんでした。
そのとき感じたなにか”とくべつな特別な感覚”が、その後20年近く経ったいまでも変わらずに自分の中に残っていることを、確かに感じるのです。

バイクに乗ることは、”移動手段としてのその他の選択肢の中のひとつ”ではないのです。
モーターサイクルをライドする。そのことそのものが目的なのです。

ヘルメットの中でわははと笑い出しちゃいたくなるような、おかしなおかしな感覚。気持ちよさ。
大雨の中でずぶ濡れになりながら、極寒の中を手足を痺れさせながら、灼熱の都心を汗だくになりながら、長距離のあのなんとも言えないお尻の痛みに耐えながら、それでもバイク乗りは初めてバイクに跨がったあの日の感覚「あははー、おもしれー、なんだこりゃぁ」を忘れられないのです。
すべてのバイク乗りは、そのことを知っているからバイクから降りないのです。
降りられない。


そういうことを、つよく強く思い起こさせてくれる映画がこれです。
B00008CH6O栄光のライダー
スティーブ・マックィーン マート・ローウィル マルコム・スミス

ジェネオン エンタテインメント 2003-03-21
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あの「エンドレス・サマー」のブルース・ブラウン監督の1971年の名作。
ほぼドキュメンタリーという構成で、70年代初頭のモーターサイクル・シーンを詳細に紹介しているのですが、主演のスティーブ・マックィーン、マルコム・スミス、マート・ローウィルという”モノホンの生粋のライダー”をはじめ、当時の名も無き市井の人々が、どれほどモーターサイクルに魅了され”真剣に”遊んでいたのかということが、映画という表現手法のもっとも素晴らしい部分を存分に活用しながら克明に記録されています。

マルコム・スミスという人は、本当にものすごいストイックで純粋な姿勢で(しかもそれを楽しみとして)バイク乗ってたんだなあ、とか、あのマート・ローウィルは本当に”自分で”自分のレーサーであるXRを整備し、研究してレースに挑んでいたのだあ、とかいうことが見れますし、当時のアメリカでの国民的娯楽であったフラットトラック・レースの雰囲気が伝わってきたり、マッコイズの岡本氏や革ジャン研究家の田中凛太郎氏やFREE&EASYの小野里編集長なんかはテープがすり切れるほどこのフィルムを観てるんだろうなあ、と思わせるように、70年代当時のアメカジ・スタイルの教科書ともいえるような映像が満ちあふれています。

そしてあの、スティーブ・マックィーン。すでに神格化され多くの信奉者を抱える人なのですが、私はそれほど思い入れがあるわけではありません。
しかしやっぱりこの映画で見ることができる彼のプライヴェートな側面を知ってしまうと、「ああ、やっぱりこの人はただのハリウッド・スターではないんだなあ。男のなかのオトコなのだなあ、カッコいいなあ」という感想を持たずにはいられません。
ラストシーンでマートとマルコムに冗談でコケにされながら屈託なく転げ回る姿が、とてもとても印象的です。

「真剣に遊ぶ」というのは(特に大人になってからは)そう簡単なことではありません。
日常の中で様々なストレスにさらされながら、心にも身体にも積み重なったいろいろなものを背負いながら、それでも”中途半端に”とか”息抜きに”とかじゃなく”真剣に”遊ぶのです。
この”真剣に遊ぶ”時間の質と量こそが、豊かな人生にとって不可欠な要素でもあるのです。
そしてオートバイこそは、(どんな車種でも、どんな排気量でも、どんな使い方しても、どんな乗り方しても)大人が真剣に遊ぶための道具として、とてもとても適しているほんとうの本当の”大人のオモチャ”なのです。

ああ、私にはバイクがあってよかった。

本当にね、この映画を見ると「ああそうだ、こんなふうにバイクを楽しんで乗り始めたんだ」ということが鮮明に思い起こされます。
すべてのバイク乗り必見の映画だと思います。

あらためて、あらためて思います。
ああ、私にはバイクがあってよかった。


まだ未経験なあなたも、一度は経験したけれど遠ざかってしまったあなたも、”本当の大人のオモチャ”を、どうですか?

意味もなく、心の底から「わははー」と、笑えますよ。


Posted: 木 - 8月 18, 2005 at 10:52 午前          

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