以下はアオイスタジオ発行の「どんちょう」に掲載された、ティアラこうとうの仕事紹介です。


エデンの東にコンサートホール在り
ティアラこうとう
事業担当 森隆一郎

西に隅田川、東に荒川、南に東京湾。区内を縦横に流れる運河、堀割。豊富な水に囲まれた東京江東区。かつて、この地を「エデンの東」と呼んだ詩人もいました。
ティアラこうとうは江東区の北の端に位置し、墨田区との境近くにあります。大小のコンサートホールを中心とした施設で、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団および東京シティ・バレエ団と事業提携を結んでおり、この両団体の公演を中心に様々なプログラムを行っています。
東京で、オーケストラやバレエの公演を行う難しさといえば、いわゆるファンといわれる限られた顧客層に対して供給が過剰になっている点ではないかと思っています。大げさにいえば電車30分圏内で毎日何かしらコンサートをやっているわけですから、その中でちゃんと公演を成り立たせるのには、プログラムの内容に気を配るだけでなく、はじめてコンサートに行くというお客様にホールに来ていただくための様々な工夫が必要になってきます。その方法を少し紹介したいと思います。
まず、コンサートホールだからといって偉ぶって「クラシック音楽」という言葉を使ったりしないようにしています。ヴィルトゥオーゾとかそんな言葉もだめです。どういうことかというと、私たち公立ホールの使命は地域の住民が、舞台芸術に親しみ、共感し、感動を分かち合う場所を提供していくことにあり、けして、コアな音楽マニアのためにあるのではないということです。たとえば、ヴィルトゥオーゾという言葉はコアなマニアのためのものだと思うのです。私たちがホールに来てほしいのは、将来、良い観客あるいは演奏家になりうる子供たちや、音楽を聴くことで生活に潤いを感じてほしい地域のふつうの方々です。オーケストラの生の音をコンサートホールで聴くと、まずその迫力に圧倒されます。生の迫力、緊張感、人が演奏しているんだという実感。私たちがこの仕事に関わることになったルーツの体験、そんな感覚を一人でも多くの人に味わって欲しいと思うのです。そのためにはヴィルトゥオーゾではなく「素晴らしい」という言葉を使った方がずっとシンプルで伝わりやすいのです。
こんなことを踏まえて、私たちがターゲットとしている方たちに一番伝わりやすい言葉と、表現、媒体を選んで、アプローチしていきます。具体的には、曲目は非常にポピュラーなものにしています。私たちがテーマにしているのは「肩のこらないクラシックのヒット曲」です。TVCFでBGMに使われている印象的な曲を、どの会社のどのCMで使われているこの曲、として紹介し宣伝しています。媒体もコストのかさむ有料広告ではなく、親子連れの集まる場所や学校へのちらし配布ローラー作戦。これで、クラシックのコンサートは初めてという方が来客者中半分という実績があがりました。あとはこういう方々に継続的にホールに足を運んでいただき、個人個人のライフスタイルにコンサートホールで音楽を聴く、バレエを観るという行動が取り入れられていくよう、次々に魅力的な事業を展開していくこと。これが大事なんじゃないかと思います。
豊かな水に囲まれたエデンの東、芸術を楽しむライフスタイルを持った人々が多く暮らす地域を目指して、これからも楽しく仕事をしていきたいと思っています。


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