Think Global Act Local
この文章は、以前(1999年)社内報に書いたもので、東京シティ・バレエ団と江東区の提携の経緯を中心に書きました。
東京シティ・バレエ団と江東区
はじめに
今年度もいよいよ大詰め、何かとそわそわする季節です。今年度この財団に入社した方々も1年がすぎてホッとしているところでしょうか。
この間こんな事を聞きました。「なぜ、ティアラこうとうではシティ・フィルのコンサートばかりやるのか」という質問を先輩社員にしている人がいたという話。
だって提携してるんだから当たり前じゃんなあ...と言おうとしてふと思いました。もしかしたらシティ・フィルとシティ・バレエ団が江東区と提携してること知らない社員の方も結構いるんじゃないかと。で、場違いな感じもしますが、この場を借りて提携団体の事業についていろいろ書いてみようと思いました。
提携について
東京シティ・バレエ団と東京シティ・フィルが江東区と事業提携したのは今から5年前の1994年7月29日のことです。7月31日付の新聞各紙に写真入りで報じられました。みなさんご存じと思いますが、お隣りの墨田区や杉並区などオーケストラと提携している自治体は多くあります、しかしバレエ団と提携というのは当時日本で初めてのことでした。その後新国立劇場にバレエ団が生まれましたが、地域に根を下ろした活動ということでは江東区とシティ・バレエ団の関係は唯一無二のものであり、それだけにここでの活動が今後の日本の芸術界にも影響があるのだと自覚しています。
では、なぜシティ・バレエ団なのかという点について書きます。そのためには提携よりもずっと前の1986年までさかのぼらなければなりません。その年は今、ティアラこうとうの目玉公演のひとつとなっている「くるみ割り人形」が江東区文化センターを舞台にはじまった年なのです。
くるみ割り人形と石井清子先生について
石井先生は門前仲町に自身の研究所を開き本当にたくさんの生徒さんたちにバレエを教えています。そして、石井先生は東京シティ・バレエ団の理事長という重責も同時に担われています。偉大なバレリーナであり振付家であり指導者である石井先生はそのキャリアや蓄えてきた力をすべて地域のバレエ文化普及に費やしたいと本気で考えています。
1982年江東区文化センターが開館し、そのユニークな運営方法は注目を浴び全国からたくさんの見学者が訪れました。石井清子先生は公演で地方に行く度、江東区の文化センターを見てきましたと声をかけられたそうです。そんな中、自分の出来ることで地域の役に立ちたいと考え、始めたのが区民による手作りバレエ「くるみ割り人形」の公演でした。
オーディションで地元の子供達の中から出演者を選ぶスタイルで行い江東区でバレエを習っている子供たちに夢を与え続けてきました。最初の年にキャンドルケーキを踊っていた子供が8回目の年には金平糖の女王という大役を客演のプロダンサー相手に踊っていました。コロラドバレエ団のソリストをつとめ昨年帰国した宮内真理子さんを始め、このくるみで育ち今内外のバレエ団などで活躍するダンサーたちがたくさんいます。これも石井先生を中心とした本当に多くの熱意ある人たちが石井先生の夢に共感し共に行動した結果なのです。
そんな地道な活動が8年間続き、いよいよこの事業が転期を迎えることになりました。江東公会堂が新しくなるときには是非オーケストラを入れたステージで公演したい。そんな夢が実現することになったのです。そして、このくるみ割り人形での客演や裏方を担ってきた東京シティ・バレエ団が江東区の提携団体として出演することも決まりこの事業は大きく躍進しました。
バレエ団と劇場について
さて、前にバレエ団とホールとが提携するのは国内唯一のケースだと書きましたが、では海外ではどうなのでしょうか。
ロシアのサンクトペテルブルク・バレエ(キーロフバレエ)はマリインスキー劇場で、ボリショイバレエはボリショイ劇場でイギリスのロイヤル・バレエはロイヤル・オペラハウスでパリ・オペラ座バレエはもちろんパリ・オペラ座で、という風に海外では劇場の付属機関としてバレエ団は存在していることが多いのです。新しいカンパニーも必ずどこかの劇場に活動の拠点を持っています。
そんな世界的な動きでみると、ティアラと東京シティ・バレエの関係は決して目新しいことでもユニークなことでもなくグローバルスタンダードを歩み始めているということなのです。少し大げさですか?
東京シティ・バレエ団について
くるみ割り人形での仕事が評価され、東京シティ・バレエ団は日本初の劇場付きのバレエ団になりました。バレエ文化の発展に寄与したとして、石井清子先生は1996年橘秋子功労賞を受賞されました。
東京シティ・バレエ団は1968年石田種生・内田道生・橋本洋・有馬五郎の5人によって設立され、その呼びかけで当時ソ連にいた石井先生や小林紀子・功夫妻が帰国して参加しスタートしました。モットーは創作と古典を両輪に公演を続けることで、5月に行われるラフィネ・バレエコンサートなどはその端的な例です。
現在は活動の中心をティアラこうとうにおき、親子劇場の依頼などで全国をくまなくまわり、数多くの公演を重ねています。先日ティアラで行われた「コッペリア」の群舞のすばらしさは批評家からも高く評価されたのですが、それも今まで公演した回数が150回を越えていると聞けば納得できました。
最近の東京シティ・バレエ団はその清々しさや爽やかさを評価されることが多いのですがその際、いつもこの江東区とティアラこうとうのことが紹介されています。本拠地で公演する安定感がでてきていると。これは、地元としても本当にうれしいことなのだと思います。鹿島アントラーズが鹿島スタジアムでは無敵なのと似ているかもしれません。(急に話がサッカーに飛んでしまいました。)
将来の夢
こんな活動をしている提携団体ですが、そろそろ次のステップも見え始めてきています。それは、現在国内唯一(こればっかりですが)劇場主催のバレエ教室である「ティアラ・ジュニアバレエ教室」を「ジュニアバレエ団」として公演のできる団体にしていくこと、またくるみ割り人形を先ほど書いた出身者なども交え、江東区でバレエを育てる会とジュニアバレエ団と東京シティ・バレエ団とが協力してして作る公演にしていくことです。これが実現すれば未来のバレリーナたちがこの劇場からさらに多く育っていくことになると思います。
おわりに
かなり長くなってしまいましたが、これでざっと東京シティ・バレエ団と江東区との提携について紹介させていただきました。この文を読んで興味を持った人はぜひ、公演を見に来てください。出演者は一言もしゃべらないこの劇の不思議な魅力にとりつかれることでしょう。そして、講座を企画するときにもバレエ鑑賞講座など企画してもらえたらバレエ団もきっと強力に協力してくれるはずです。そういう地道な活動が芸術の足腰を強くしていくのだと思っています。この欄で語りきれないことがたくさんありますので、興味を持ったら電話してください(あやしい勧誘じゃありませんよ)。それが夢の実現に向けて一緒に前進する一歩になるかもしれないのですから。
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