「大縄跳びで彼を輪から外すのはイヤなんです」
ある中学校の運動会の前日、クラスの一人が先生に言ってきました。
長さ20メートルの縄を、クラス全員で跳び、その合計回数を競い合う大縄跳び。
身体的な理由で、どうしても跳べない生徒が一人だけいました。
最初は、一人で練習した彼。 跳べませんでした。
次は友だちと2人で。 それでも、跳べませんでした。
そして、みんなで。 やっぱり跳べませんでした。
「一緒に跳ぶことが平等なのか?」
「彼を外してあげることが、思いやりなのか?」
先生は悩んだ末に、彼を、声掛け役にしていたのです。
そんな時に飛び出した、一つの意見。
「大縄跳びで彼を外すのはイヤなんです」

放課後、みんなで話し合うことになりました。
素直な気持ちでぶつけ合った36人の意見。
「勝てなくなるから、入れない方がいい」13人。
「チームワークが大切だから一緒にやろう」11人。
さらに、「後半だけ入ってもらおう」という折衷案も出ました。
先生はこの折衷案を採用しようとしました。けれども・・・
何と、半分以上の生徒が、この折衷案に反対したのです。
「全部出ないのよりつらい」
「みんながバラバラになっていくのはイヤ」
みんなの意見が一つにまとまり始めます。そして…誰かが言いました。
「跳びたくないの? って彼にきいたら、跳びたいって。だから、入れたい」
パチパチッと、小さな拍手。
さらに、別の生徒も立ちます。
「勝ち負けなんて」
拍手はクラス中に広がり、さらに大きく確かなものになりました。
「本音を聞かしてくれ。みんな、本当にそれでいいのか?」
先生は涙声で尋ねました。すると…
クラス全員の手が真っ直ぐ、挙がりました。

そして運動会。 大縄跳びの本番。
結果は、5クラス中、ビリでした。
それでも彼は初めて、大縄跳びで続けて跳ぶことができました。
友だちと手を取り合って、そして、一人で…全部でなんと71回も跳べました。
彼は、その後、作文にこう書いています。
「跳びはねるほど嬉しいです。今日の僕は絶好調でした」
本番中、心配で心配で、みんなの足元ばかり見ていた先生が、
後から、生徒達が書いた作文を見て、一つだけ知ったことがあります。
「みんな跳びながら、泣いていました」


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