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今年2007年はジャンルに関係なく、自分のアンテナでキャッチできた音楽をなんでも聴いた、なかなか面白い一年でした。
最近聴いたアルバムの中でコメントしたいもの、紹介したいものを書いてみます。(2007/7 - 2007/12)

Jazz

  1. Jean-Michel Pilc "New Dreams" (Dreyfus Jazz) 2007
  2. Ketil Bjørnstad "Devotions"(Universal Music) 2007
  3. Akiko Toyama "Lilac Songbook"(YPMLABEL) 2007
    外山安樹子 「ライラック・ソングブック」
  4. Charles Mingus Sextet with Eric Dolphy "CORNELL 1964" (BLUE NOTE) 2007
  5. Tigran Hamasyan "New Era"(Nocturne) 2007
  6. Midori Shimizu, Hiroko Takada "A Time for Love" (nyx studio) 2004
    清水翠/高田ひろ子 「A Time for Love」

Classic and others

  1. 神谷百子 「マリンバ・ヴィルトゥオーソ」/
    Momoko Kamiya "Marimba Virtuoso" (Victor Entertainment) 2002
  2. Mika Väyrynen "J.S.Bach:The Goldberg Variations" (Alba Records) 2004
  3. Ky "naissanciel"/キィ 「ネッソンシエル」 (おーらいレコード) 2007
  4. Natsuki Kido / Daisuke Suzuki "The Duo" (Polystar) 2007
    The Duo [鬼怒無月 + 鈴木大介]
  5. ERIK FRIEDLANDER "Masada Book Two The Book Of Angels Vol. 8: Volac" (TZADIK) 2007

Jean-Michel Pilc "New Dreams" (Dreyfus Jazz) 2007

Jean-Michel Pilc(piano), Thomas Bramerie(bass), Ari Hoenig(drums on track 1-6, 9,14,15), Mark Mondesir(drums on track 7, 10-13)
tracks list

ジャケットの絵がアンリ・マティスの絵ソックリなのが目を引く、ジャン=ミシェル・ピルクのトリオ新作。達者なピルク節は相変わらずだけれど、今までのピルクに比べて破天荒な感じがあまりしなくて、ソツなく、こなれた感じがする。ピアノが十分に鳴っている。円熟味を増した、とでもいうのかな。
全曲15曲中スタンダードが4曲、あとはオリジナル。15曲で50分、という短さは、ピルクのグルーヴィーでスピード感あふれる演奏で聴くとなんだかアッという間だ。聴き手を飽きさせない、っていうのも重要なことだと思う。サポートするリズム陣は盟友Ari Hoenigの他、Mark Mondesirが叩き分けている。ベースはThomas Bramerie
"Satin Doll"の中間はほとんどが"There's No Greater Love"だったり、他のスタンダードがちりばめられていたり、元はなんの曲だったのかわからなくなるが、ピルクの遊び心はスタンダードでこそ本領発揮、若干とっちらかってる感もあるが、それもまたいいんじゃないかな。
ピルクらしい疾走感あふれるオリジナルはTrack 9,10あたり。「ストレートノーチェイサー」はピルクならではの馬力ある演奏でスカっとさわやか気持ち良く、聴いている方もバッチリ、ストレス解消。それ以外ではクラシック調のtrack 7、アメリカンフォークソング風のtrack 8など、ピアノを鳴らし切っている美しい響きが印象的だ。このあたりがあらためて確かなテクニックと新境地を感じさせる。
全体を聴き終えて、やはりピルクだなぁ。でも驚きはなく、従来の路線通りだなぁ、という安心感があり、同時にもう少しこれを超える部分を聴きたかったという気持ちは正直、ある。(September 19, 2007)
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Ketil Bjørnstad "Devotions"(Universal Music) 2007

Ketil Bjørnstad(piano), Wolfgang Puschnig(flute,alto flute,alto sax & bass clarinet), Alex Riel(Drums & Percussion), Arild Andersen(double bass)
tracks list

Ketil Bjørnstadの今年の新作。前作"Floating"(2005)が思いのほか気に入ったので、感動再び、と思って聴いてみた。前作はピアノトリオだったけれど、本作はWolfgang Puschnigの管入りで、プシュニクの活躍のインパクトがすごく強い。プシュニク、私はほとんど聴いていないけど、昔の"Then Comes The White Tiger"(ECM)のイメージが強くて、ロックやプログレ方面入ってるひと、という印象があった。でもこれを聴いて、「プシュニクってこんなマイルドにいろいろ吹く人なのね」と認識を新たにした次第。
中ジャケ写真の4人(超豪華メンバー^^)、それぞれに歳を重ねた重みが感じられるポートレイトだ。そんな人生の重みが逆に清々しい音に昇華されてしまったかのような、ストレートで迷いも曇りもない音になっている。
全体に哀愁を帯びた北欧フォークトラッド調の曲が多い。track 10のタイトルナンバーあたりにビョルンスタの音世界がよく表現されていると思う。track 9のサビ部分、松山千春が日本語詞つけて歌ったとしても違和感ない感じ。track 14あたりはバスクラの奏でるテーマが物悲しくて、日本の民謡にもどこか共通項がある感じがする。トラッド、フォークって万国共通なんかな?
こういうトーンだと77分真剣に聴きとおすようなアルバムではない。小春日和の空の下で芝生に横になって目を閉じて、半昼寝モードで聴くのにピッタリのBGM。ホント、ビョルンスタの音楽って今はすっかりカドがすっかりとれちゃって(苦笑)…。(September 22, 2007)
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Akiko Toyama "Lilac Songbook"(YPMLABEL) 2007
外山安樹子 「ライラック・ソングブック」

外山安樹子(piano), 関口宗之(bass) tracks list

toyama
私のすばらしき友達でもある外山安樹子さん、関口宗之さんのデュオによるファーストアルバム。
その場で演奏しているという臨場感を大切にした録音ということで、マイクバランスのみの音作りをしたとのこと。
この演奏を聴いて、お二人の人柄そのままの演奏だな、と思った。常にプラス指向、バリバリ前向きの外山さん、周囲に気配りを怠らない温厚な関口さんがそっくり表現されていると思う。そういうお二人だから、お互いの息もピッタリだ。
いろいろ音楽を聴いていると、カラリと乾いた音の人、ウェットな音の人、ナルシスティックな人、音の中に闇を抱えている人、ちょっとあまのじゃくな人など、音の中にそれぞれプレイヤーの個性が垣間見えて面白いものだが、このお二人ともホント、まっすぐで明るい人なんですよね。音の中に影や闇が全く見えてこない。
Lars Jansson(ラーシュ・ヤンソン)がお好きだという外山さんらしく、美メロ曲がギッシリ。ラーシュの世界にも通ずるような、スッキリと澄み渡った青空、カラリと乾いた爽やかな風を感じる。ジムで汗を流してサウナに入った後、マッサージチェアに座ってビールを飲みながらリラックス、「あ〜極楽極楽〜」っていうときの爽快感に等しい気持ち良さ。私はtrack 4"Nostalgia"とかtrack 8"Bateaux-Mouches"みたいな美メロ系ジャズワルツが好きですね〜。
次に向けての期待する点をそれぞれ。外山さんに、酸いも甘いも噛み分けた大人の色気、なんて期待しちゃっていいですか?今回の録音の特徴かも知れないけど、関口さん、ピアノに対してもう少しベースのバランスを大きくした方が音がクリアに聴こえていいと思う。
この世に生きて、こうして演奏していることがとても幸せ!と言っているかのような二人の演奏は、落ち込んでいる人も怒っている人も、聴けばついニッコリしてしまう、明るいエネルギーに満ちている。 (September 28, 2007)
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Charles Mingus Sextet with Eric Dolphy "Cornell 1964" (BLUE NOTE) 2007

Johnny Coles (tp), Eric Dolphy (as,fl,bcl), Clifford Jordan (ts), Jaki Byard (p),Charles Mingus (b), Dannie Richmond (ds)
tracks list

エリック・ドルフィーのミンガス・セクステットにおける1964年3月の未発表録音。本作発売の少し前にこのメンバーによるスウェーデン楽旅のリハーサル風景等収録のDVD("Stockholm 1964" 1964.4収録)も買ったけど(感想書こうと思って手つけずのまま)、録音良好なライブ音源が2枚組というボリュームで出ることになるとは。歴史的に意味がありますね。30分を超える長い曲が2曲収録されている。
私は正直いって、ミンガスにさほど興味はない。彼の音楽のようにアンサンブル重視で構成のきっちりした楽曲の中では本来のドルフィーの持ち味が100パーセント発揮されているとは言い難いけれども、ドルフィーがいるから私は聴く。このバンドのソロイストの中では際立って個性的だから、曲によってはドルフィーの世界が他から浮いてしまう感じもある。
track 5のエリントンナンバーのバラードでは、短いけれどエリントンもびっくり!と思うようなバスクラソロ。track 7はどのプレイヤーのソロも聴き応え十分で聴き所が多い。ラストのワルツはドルフィーのフルートによるテーマやソロが軽快な中にもヒートアップしてすごいことになっている。でもこの曲、皆が熱くなっちゃって、どんどんテンポが早くなってるー。ドルフィーの他では全体にジャッキー・バイヤードのストライド風ピアノが熱い。ジョニー・コールズのペットも予想以上にいい。ミンガスはdisc 2の方が全体にいい感じ。
ドルフィーはやはり、自分名義のバンドでの演奏が一番だと私は思うけれど、ここでの演奏も1964年6月の"Last Date"の、魂をゆさぶる演奏に至る過程のひとつだったと思うと、ひときわ感慨深いものがある。(October 4, 2007)
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Tigran Hamasyan "New Era"(Nocturne) 2007

Tigran Hamasyan(piano), François Moutin(Acoustic Bass), Louis Moutin(Drums), Vardan Grigoryan(Duduk and Shvi on track 4, Duduk and Zuma on track 8)
tracks list

ファーストアルバム "World Passion"での早熟ぶりが記憶に新しいTigran Hamasyanのセカンド・リーダー作が早くも登場した。ほとんどオリジナル曲で、アルメニアのトラッドが2曲、モンクとマイルスのナンバーが1曲ずつ入っている。
やっぱりこの人の演奏はスゴイ。まだ20歳とは思えない達者ぶりには舌を巻く。アルメニアのトラッド曲は2曲とも「ここまで自由でハイで熱くなれるか!」と思うような素晴らしい出来ばえのソロだ。キースほどではないが唸り声もかなり収録(笑)。メンバーそれぞれがまた素晴らしく、特に笛奏者の枯れた味わいの演奏にグッとくる。マイルスの"Solar"は、正統的ながらはっきりと個性を打ち出した自信あふれる演奏でいい感じだ。フレンチ・メインストリーム界の実力者ムタン兄弟もさすがの好サポート。
ただ、今回の作品では上で書いた曲たちに比べて、オリジナル曲が負けていると思う。 track 6なんて、20年くらい前の三流フュージョンみたいだし、track 7も疑似トラッド曲風なのになんだかピアノの練習曲のようで全然アピール力なし。オリジナルに対する意欲は評価するが、もっと作曲の力を磨いてほしいと思う。しかし、曲が魅力的でない割には、ソロ演奏はいいし、ちょっと力が入り過ぎだけど曲に向かうパッションはすごく感じられるので、若さゆえとして許可しちゃう。私が一番いいと思ったオリジナルはラストトラックのトラッド風な軽めの曲。これは奇をてらったところがなく素直な感じがする。
どうこういっても、素晴らしく前途有望な若い才能だと思う。未来に繋がるものが感じられるから、どのように化けるかわからないから、「青い」ってことはいいことだ。(December 12, 2007)
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清水翠/高田ひろ子 「A Time for Love」 / Midori Shimizu, Hiroko Takada "A Time for Love" (nyx studio) 2004

清水翠 Midori Shimizu (vocal), 高田ひろ子 Hiroko Takada(piano) tracks list

duo
今年は幸運なことに高田ひろ子さんの生演奏を1月11月と2回も聴く機会があった。1月に高田さんの演奏を聴きにいった時に購入していた、清水翠さんとのデュオアルバムがこれ。制作のリーダーは清水さんのようだ。
実は私、正直いってジャズヴォーカルものが不得手なのだ。特に「ジャズやってます」という感じのヴォーカルにはどうも共感できない。J-popの絢香とかSuperflyのヴォーカルの越智志帆とかは大好きなんだけどなぁ…。
この作品の清水翠さんのヴォーカルだけど、私の感覚ではちょっと堅くて力が入り過ぎな感じがする。声はきれいなんだけど…。ジャズはもう少しくだけた風に自由な感じで歌って欲しいなぁ、というのが私の希望。
高田さんのピアノはいい。出過ぎず、ソロの部分はバンバン飛ばす。私はtrack 3や5や9のソロの部分は、もう少し聴きたいな〜、と思っていると終わってしまうのが残念。track 7は高田さんらしい闊達なピアノが一番に堪能できる曲。どうせならピアノソロの曲も一曲入れてくれると良かった。
というのはピアノ贔屓の私の見解であって、ジャズヴォーカル好きの人には違う見方もあるかも知れない。でも、高田さんのピアノと、阿吽の呼吸で歌う清水さんの歌との相性はいいと思う。(December 15, 2007)
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神谷百子 「マリンバ・ヴィルトゥオーソ」/Momoko Kamiya "Marimba Virtuoso" (Victor Entertainment) 2002

神谷百子 Momoko Kamiya(マリンバ),池上英樹 Hideki Ikegami(マリンバ track 2-4,8), 本島阿佐子 Asako Motoshima(ヴォーカル track 8)
tracks list

先日初めて生演奏を聴いた神谷百子さんの2002年の作品。アストル・ピアソラ作「タンゴ組曲」のマリンバ・デュオというのをどうしても聴きたくて購入。この作品は現時点での最新作らしい。
「タンゴ組曲」はピアソラがギターデュオのアサド兄弟のために書いたという、私の大のお気に入り曲。マリンバ2台でどう演奏するのか興味津々だった。しかし、この作品全体を聴いてみると、神谷さんの意欲的で先進的な取り組みがあまりに素晴らしくて、特別「タンゴ組曲」が目立っているということもなく、どの曲も甲乙つけ難い出来映えだ。
「タンゴ組曲」はよくここまで自然にマリンバ用に編曲できたなぁ、と思う。ギターと同様、マリンバは音が長く伸びず、むしろギター以上に音が早く減衰するので、音を伸ばす部分はトレモロで演奏している。第一、第三楽章はテンポが早く軽快に流れるので、ここまで流暢な演奏をするには相当のテクニックを要しただろうと思う。
先日のリサイタルで聴いた「タンゴの歴史」では、フルートパート→マリンバに編曲するとずいぶんイメージが変わったけれども、ギターパート→マリンバは大きくイメージが変わることはなかった。だからもともとギター二台の「タンゴ組曲」は違和感なく聴けるのだろう。
その他の曲では、特に一柳慧さんの作品2曲が目立ってコンテンポラリーな雰囲気で、神谷さんがこのアルバムで目指したと思われる、一歩前へ進んだマリンバの表現形式を感じさせる。自己の内面を深く見つめるような、掘り下げた演奏だと思う。
と思えば、エンターテインメント性と前衛的な面との両方を備えたヴォイス入りのtrack 8は、マリンバの可能性を深く、広く追求した作品だと思う。マリンバど素人の私にもその意気込みと情熱はひしひしと伝わってきた。クラシック、タンゴ、現代音楽その他どんなジャンルをもってしても表現しきれない、マリンバ音楽の集大成だ。(July 31, 2007)
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Mika Väyrynen "J.S.Bach:The Goldberg Variations" (Alba Records) 2004

Mika Väyrynen(accordion) tracks list

先月Mika Väyrynenさんの演奏会に行ってからこれがすっかりマイブーム。ゴルトベルク、といえばグレン・グールド。天才グールドは、スルスルと信じられないようなテンポで流れるように弾く。もう一枚、私の持っているゴルトベルクはキース・ジャレットによるハープシコード演奏。Mikaさんのアコーディオンによる演奏は、それらの演奏と楽器(ピアノ、チェンバロと)の違いも影響しているせいか、少し雰囲気が違って、生身の人の息づかいや、血の通ったあたたかみが感じられて、すごく親しみやすい。
先日の演奏会の感想にも書いたけれども、右手と左手とで異なる音色にしたり、曲ごとに音色を変えたりすることができるところ、これがアコーディオンのとても面白いところだと思う。パイプオルガンのような荘厳な音になったり、軽めの管楽器のような音になったりと曲によって変化をつけている。
初めてこのCDを聴いたとき、ホールの響きの良さのせいかも知れないがコンサートの方が良かったと思った。このCDは2004年の録音だから、今現在の方が演奏が進化しているんじゃないかな、という気もした。でも、何度もこれを聴いているうちに、どんどんこの演奏に魅せられてしまい、今ではこのCDが大好きだ。
つんとすました感じが全然なくて、聴いていつでもリラックスできる、演奏者と聴き手との距離が近い感じが気持ち良いゴルトベルク変奏曲だ。そして、美しい。これは折に触れて聴く愛聴盤になりそうだ。(October 22, 2007)
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Ky "naissanciel"/キィ 「ネッソンシエル」 (おーらいレコード) 2007

Nakano Maki(alto sax, metal clarinette), Yann Pittard(guitar, oud), Thomas Ballarini(percussions)
tracks list
ky

パリ在住のサックス奏者、仲野麻紀さんのトリオの新作。この夏の発売記念日本ツアーに行ってからずいぶん時間が経ってしまい、いまさら何、って感じで恐縮ですが…。エリック・サティの楽曲をKyトリオ流に解釈しなおしたものと、Kyのオリジナル曲で構成されている。
昨年、麻紀さんとヤンさんのデュオは聴いたけれど、パーカッションのトマさんが入ったここでの演奏は、麻紀さん達のやりたい音楽の方向性や輪郭が、よりはっきりしていると思う。このトリオしかできない音楽がここにある。
このトリオの音は、お囃子のようだったり、サーカスの道化役者を見ているようだったりというように、ファンタジックなイメージが強くて、全体をとおしてひとつのストーリーがあるように感じられる。情景と音楽がセットになっているようで、まるで映画のサウンドトラックを聴いているかのようだ。ジャズとかポップとかの枠には納まりきらない。素材がエリック・サティだからか、CDDBのジャンル分けではクラシックになっている。ここのジャンル分けって、第一印象でパッと決めるものなのか、結構意外で面白い。確かに一貫してビートやノリ、というものとは無縁な音楽であるところはある意味クラシックに近く感じるのかも。即興なのだけれど、ジャズを指向しない即興だ。
おなじみの「ジムノペディ」のテーマが何度も出てくる。「ジムノペディ」で始まり、「ジムノペディ」で終わる。何ヶ月か前に「ル・コルビュジェ展」を観に行ったときに見た、コルビュジェのDVDの中のBGMがピアノソロの「ジムノペディ」だった。この曲はフランス的美意識の一面を象徴しているようでもある。それを日本人の麻紀さんが演奏する。
麻紀さんのアルトの音は真夜中から明け方をイメージする。音が鳴っているのに静寂のときを感じさせる。(December 10, 2007)
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The Duo [鬼怒無月 + 鈴木大介] / Natsuki Kido, Daisuke Suzuki "The Duo" (Polystar) 2007

鬼怒無月 Natsuki Kido(electric and acoustic guitar)、鈴木大介 Daisuke Suzuki(acoustic guitar)
tracks list

この2名のツワモノのデュオ、というだけで、発見即買いした新作アルバム。鬼怒さんは小松亮太のバンドで地元に来た時に、鈴木さんは福田進一、渡辺香津美との共演というスゴいコンサートで船橋に来た時に生演奏を聴いたことがある。
鈴木大介さんは近年、ジャンルをクロスオーバーした音楽家との共演で新境地を拡げ、その活躍ぶりはめざましい。私は今年、この他にもブランドン・ロス、ツトム・タケイシとの共演盤「夢の引用」(intoxicate)を聴いた。
この作品に収められている曲は、ひと昔前の懐かしい曲が多い。キース・ジャレットの"Country"やサンタナの「哀愁のヨーロッパ」、リンゴ・スターのヴォーカルが思い浮かぶビートルズの"With a Little Help form My Friends"なんて、何度オリジナルを聴いたかわからないくらいだ。その他にもベサメ・ムーチョ、グリーンスリーブス、サマータイム、見上げてごらん夜の星を、など誰でも知っている曲が多く、二人のオリジナルも一曲ずつ等、ジャンルにこだわらないバラエティに富んだ選曲が二人の音楽性の幅広さを物語る。
鬼怒さんがtrack 5, 11等、部分的にエレキを使っている他はほとんどアコースティックギターなのだが、私は全部アコギでも良かったと思う。アコギ4連発の部分、track 7"Greensleeves"からtrack 8"Stone Flower"とたたみかけるようにいって、track 9 "It's Been A Long, Long Time"でまったりする流れがいい感じ。そして明るく爽やかな鬼怒さんのオリジナルのtrack 10までの部分、ここがこのアルバムの聴きどころかな。
アコギで聴き手を惹き付けるのはこういうツワモノしかできない技だ。あさってのインストアライブのチケットがあるので、できれば生を目撃したい。(December 20, 2007)
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ERIK FRIEDLANDER "Masada Book Two The Book Of Angels Vol. 8: Volac" (TZADIK) 2007

Erik Friedlander(cello) tracks list

私はJohn Zornの曲をこの作品のようにいろいろなミュージシャンが演奏しているシリーズ"The Book of Angels"を聴くのはこれが初めてなので、他の"The Book of Angels"シリーズと比較してこの作品がどうだとか、ジョン・ゾーンの曲の解釈としてどうだとかいうことは全然わからない。
ただErik Friedlanderが気になって聴いたこの作品が、結果的には私が今年聴いたアルバム中ベスト3に残る素晴らしい作品だった。今年の最後をこういう作品で締めくくることができて幸せ。2004年リリースの"Quake"(Cryptogramophone)を聴いた時から、この人はすごい人だと思っていたけれど、チェロのソロでこれだけ感情の機微を聴かせるとはやはり相当の強者だ。最後まで聴く側を惹き付けて離さない。一曲たりとも退屈する曲はない。こういう演奏ができるというのは、技術的に確かなものを持っているだけでなく、抜群の音楽的センスがあるからだと思う。アルコもピチカートも自由自在に操る彼の演奏にはゆったりと全身まるごと委ねても安心できるような包容力がある。
ジョン・ゾーン、マザダとくれば現代のクレズマーの代表格だが、クレズマー音楽に実はこのチェロという楽器が抜群に合うことがわかった。この演奏はジョン・ゾーンの音楽を120%生かしたと言っても過言ではないと思う。特にtrack 5から6への流れには「クレズマー!」を感じる。爽快感から哀愁まで見事な表現ですね。
理屈はともかく、純粋に音楽作品として素晴らしい出来だと思う。皆さんにお薦めできる。いろいろ勝手な感想は書いているけれど2007年、このサイトでお薦めした作品は唯一これだけ。Erik Friedlanderの今後のさらなる活躍を期待して今年を締めくくりたいと思います。(December 27, 2007)

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