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「テレビがつまらない理由は、観るのが無料だからです。」
     _____ 森博嗣



[0001]「頭文字D」のすごさについて
 KBS京都というUHFの地方局があり、そこでたまたま見たのがアニメの「頭文字D」。あまりのすさまじさにびっくりしました。毎週毎週楽しみでしょうがなかった。別に僕はカーキチ(ってふるい言葉か?)でも走り屋でもない。車なんか走ればいいと思っている。テレビでF1なんかも見たことないし。でも、この物語にはものすごくシンパシーを得た。テレビでの放映が終わった後も、ビデオを借りてまた見た。ダビングした。ラジコンも買った。ガシャポンも集めた。ゲーセンでハチロクのキーホルダーも取った。
 簡単に説明すると、「AE 86(ハチロク)」というトヨタのカローラ・トレノという古い一般車(だがムチャクチャ早い名車)に乗ってる天才ドライバーが、公道レースで最近の性能の良い車を操る「その場所のNo.1」たちを次々とうち負かしていくというもの。舞台は関東にある実在の「峠」で、それぞれの場所で一番早いチーム(や個人)のレーサーが彼と戦い、負けていく。「こんな古い車なんか話にならないぜ」「このコースで一番早いのは俺だ。初めて走るやつに、負けるはずはない」というものすごいドライバーたちが、まだ未成年の豆腐屋の息子に「藤原豆腐店(自家用)」と書かれた古い車でうち負かされる。
 この感覚は、もう、僕が大好きな「パンク」の概念に合致する。「弱いとされているものが、その才能やセンスで強いものに勝つ」という、このコンセプトは僕を一番感動させるもの。

 ボクの好きなものは大体こういうもので、「高い楽器を揃えて、ものすごく練習しているロック・バンドが、安ものの楽器しか持ってないし、ろくに練習もしてないが『本気でやってるパンク・バンド』に負ける」ようなことが、ものすごく好きで。

 ちばあきおさんの漫画「キャプテン」や「プレイボール」も、そういう感じの主題で好きでした。「墨谷二中の野球部」。これはパンクな集団だ。

 この「頭文字D」の主人公「藤原拓海(ふじわらたくみ)」は群馬にある豆腐屋の息子。「クレイジー・文太」の異名を持つ元天才走り屋の父「藤原文太」がいまだに乗っている昔の名車「AE 86」で、なんと中学生の頃から峠の向こうのホテルに毎早朝豆腐を配達してきた。彼が高校生になりアルバイトしている、父の昔の走り屋時代の友人が経営するガソリン・スタンドの先輩店員たちが結成しているこの秋名峠の素人レーシング・チームに誘われ、彼らをそのドライビング・テクニックで驚かせ、チームの代表的存在になる。「秋名のハチロクはすごく早いらしい...。」その噂を聞きつけた他のチームやドライバーたちが次々と彼に挑戦してくるが...。という物語。車や峠はすべて実在のものでそこがまた走り屋たちの心をとらえているらしい。

 この漫画は現在もヤング・マガジンに連載されていて、単行本は19巻までで出ている。ほとんど漫画の原作通りにアニメ化され、絶大な人気が出た。
「1st stage」「2nd stage」とテレビで放映されたが、テレビ東京系だったため、地方局が放映していない場合も多い。ボクはたまたま京都の局が放映していたので見れたわけです。もちろんプラモデル / ガシャポン / ラジコンも作られている。その筋の人たちにとってのバイブル的存在にまでなっているよう。

 漫画ももちろんものすごく面白いのですが、何がすごいってこのアニメ。あのAVEXグループがこの原作をアニメ化するに当たってすごい仕掛けを2つ仕掛けた。

1)サウンド・トラックに、ユーロビートを使ったこと。豊富なユーロビート音源をもつAVEXグループがパラパラなどでもう一度ユーロビート・ブームを仕掛けたのが今大流行しているわけですが、このアニメもこういう風潮を盛り上げる一要素となっている。この僕らの世代にしては古くさくも思えるユーロビートが、公道バトルを盛り上げるBGMにぴったり。恐るべしAVEX。

2)最新のCGの3D技術を投入し、ものすごいバトルの映像を作り上げている。監修に「ドリキン(ドリフト・キング)」と言われるレーサーの土屋圭市氏を迎え、ものすごいCG技術で実写を越えるような臨場感、スピード感のある映像。これはやみつきになります。

 この2つが相まって、バトル・シーンはもう、実際のバトルを見ている以上の緊張感が漂う。話の面白さももちろんだが、この企画を考えたAVEXのやつはすごいな。「頭文字D」のサントラCDはたくさん出ていて、中には漫画やアニメに出てこない週刊誌時代の増刊号にだけ掲載された「特別編」の話をラジオドラマ風にしたものを収録したCDも出ている。今から集めようとしてもくじけそうなぐらいたくさんのCDがリリースされているのだ。それだけ好きな人がいるということだろう。

 実はもう一つこの物語にはまった理由があって、拓海と一緒にバイトしている樹(いつき)という3枚目の青年がいて、拓海のもり立て訳になっているのだが、彼が「ハチロク」と間違って(!)買ってしまう、姿形は「ハチロク」と同じだがエンジンがショボイので乗ってると走り屋の間ではバカにされるという「AE 85(ハチゴー)」に昔僕も乗っていたのだった。昔一緒にバンドをやっていたメンバーがお兄さんから譲り受けたこの車を処分するというのでもらった。最初に乗ったときから「この車早いなぁ」と思っていたら、同じく僕のバンドのドラムのメンバーが車好きで、「この車、86やったら走り屋にいまだに人気のやつやで」と教えてもらった。そういえば、走り屋にあおられたりしてたなぁと、後で気づいた。この樹のハチゴーに拓海が乗って、最近の速い車をぶっちぎるというお話もあって、その話で完璧にはまってしまったのでした。事情で手放したのだが「ハチゴー」でさえこんだけ早かったのだから、「ハチロク」ってすごいんだろうなぁ。いつか手に入れたいものです。この漫画の人気のおかげでまた値段が上がってしまったようだが。

 2001年1月中頃に「3rdステージ」が映画で公開されるそうで、とっても楽しみです。みなさんも、ビデオ屋さんにあったらぜひ今までのを借りて見てみてください。ほんで映画も見よう。かっこいーぞ!


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