New World Party ←back to list
あっという間にもう2000年。今から紹介するCDはPutumayoレーベルがミレニアムを迎えるために組んだコンピレーション「New World Party」です。世界中のいい音楽を、国やレーベルに関係なく最高のセンスでどーんとまとめるPutumayoが、世紀末にあなたに贈るスペシャル・ダンス・アルバム!というわけです。前にリリースされていた「World Dance Party」の続編という感じで組まれたこのアルバムは、またまたいい曲ばっかり入ったすごい選曲。じっくりお楽しみいただきましょう。
ダンス・ミュージックときくと、ソウル・ディスコ、R&Bものからユーロ・ビート、レゲエやテクノまで色々なジャンルを思いつきますが、このこのコンピレーションに入っているものは特に「ワールド・グルーヴもの」と呼べるようなものです。特徴としては、先ほど書いたようなダンス・ミュージックの要素をそれぞれ自分たちの国にある独特のミュージック・スタイルとうまくミックスさせることに成功したもの、とでも言ったらいいでしょうか。「Algerian funk, Haitian hip-hop, Brazilian R&B, Latin soul and African rap」などを集めた、と英文解説に書いてあります。「ただのダンス・ミュージックではない」「本当の意味でのミクスチャー」ものばかりを集めたコンピレーションというわけです。アフリカ音楽の一つの特徴である「ポリ・リズム(いくつかの拍子を組み合わせた複雑なリズム)」や、南米のラテン・ビート、レゲエなどがうまーくブレンドされた「ひと味違う」曲たちを聴いていきましょう。
1 ミリアム・マケーバ (パタ・パタ 2000)
アフリカン・ポップの女帝と呼ばれるNo.1ヴォーカリストで、自身のグループ 'The Skylarks' で長らく活動。アパルトヘイドに反対したことで、南アフリカから追放されていた間、アメリカに移住していたときにハリー・ベラフォンテらと共演を果たし、アメリカやヨーロッパでも人気・知名度ともに絶大なものがある。'67年にアメリカのトップ・10チャートに入ったこともあるこの曲は、世界中のいろんな人たちにカヴァーされた彼女の代表曲で、2000年2月に彼女のニュー・アルバムがPutumayoからリリースされるそうです!これはそれに先がけてのミレニアム・ヴァージョン。11曲目に入っているブラジルのダウージや、ギニアのラッパー、エル・ジェネラルも参加。
2 デシデンテン 「ロブスター・ソング」
あのローリング・ストーンズに「ゴッドファーザー・オブ・ワールド・ビート」と言われるほどのドイツで20年以上活動しているバンド。元々はアバンギャルドなロック・バンドだったが、世界を旅していろんな国の人たちと共演。今は様々なスタイルを取り入れた「トラディショナル・ワールド・ミュージック+モダン・エレクトロ・ポップ」という感じのジャンルレスな音楽を作り出している。この曲も「インドの映画音楽のメロディー/トルコ風のスライド・ギター/アフリカのカリンバ(親指ピアノ)そしてファンキーなベース・ライン」、と実にいろんな要素がブレンドされていて、これだけの要素が混じり合いながら非常にポップでダンサブルなところがすごい!南インドのタミル語と英語で歌われている。デシデンテンってこんな風になってたんだ!と久しぶりに聴いてびっくりしました。何とも幅広いスタイルですね。これぞミクスチャー!って感じがします。「ロックとファンクの融合」だけでミクスチャー、と騒いでる人たちにぜひ聴いていただきたいです。
3 ハーミッド・バールディ 「キャラバン・トゥー・バグダッド」
アルジェリア生まれで、13歳でステージに上がるようになってからずっといろいろな音楽界を渡り歩き、ヨーロッパで6年間デシデンテンのメンバーとして活動。その後自身の活動を始めた。「アラビック・ディスコ」といった感じのこの曲も、完全に異文化同士が違和感なく融け合っている。子守歌をねだる子どもの話。
4 アビィ・ン・ドゥール 「シェル(コンシャスネス)」
名前でお気づきの通り、あのアフリカ/セネガルのスーパースター、ユッスー・ン・ドゥールの妹さん。ユッスーのツアーやレコーディングにも参加、アムネスティーのコンサートでピーター・ガブリエルらとの共演も果たしている。ユッスーよりも、SOUL/HIP HOPの影響を受けた音作り。セネガルではHIP HOPがとてもポピュラーだということです。この曲は「無知で暴力的な世界で、教育や知識の大切さを意識して生きていかなければ」というような内容。こういうヒップな曲でこんなことを歌っているとは....。かっこいいですね。
5 ラマタ・ディアケテ 「ナー(マイ・マザー)」
アフリカのマリという地方にはユニークな音楽文化があり、ウーム・サンガレなど のアーチストで有名ですがこの曲のラマタさんも南マリ出身。12歳の時に乾いた地面を太鼓がわりに叩いて歌い始めた(!)という。おばさんが有名な歌手で、一緒にレコーディングなどしていた。'96年にデビュー曲が大ヒット。地元のスターになる。タジ・マハールら有名なミュージシャンと共演。この曲は「つらい世の中だけど泣かないで。がんばっていきましょう。」という自分のおかあさんに捧げるメッセージ。アフリカの伝統的なパーカッションに聴こえるサンプリング・ビートとマリの伝統的なメロディーが混じり合い、「伝統の境界線をいっぱいに引き延ばす」という目的に大成功している。忘れられないメロディー。心を打ちます。
6 ガル・コスタ 「ハビブ」
ブラジルを代表する女王的存在で、60年代にカエターノ・ヴェローゾ、ジルベルト・ジルらと共に「トロピカリア」というサイケデリック・ヒッピー文化に影響を受けたアート・ムーブメントに参加。サンバ、ボサ・ノヴァ、ブルース、ロック、ブラジリアン・ファンクなど、どんなものでも取り上げて歌いこなす。この曲はジョルジ・ベン(あのマシュ・ケ・ナダの作曲者でもある)による曲で、彼女の解釈でブラジルの伝統音楽と、アース・ウインド&ファイヤーやパーラメント/ファンカデリックのようなスタイルの洗練されたファンクが効果的にブレンドされた物となっている。'Habib'とはアラビア語で「ダーリン」。'99年にリリースされたアルバム 'Aquele Frevo Axe'に収録されています。
7 シコ・セザール 「ダ・リセンサ・マヨ(エクスキューズ・ミー、デュード)」
なんとも特徴のあるルックスと、抜群のソング・ライティングで一躍注目され、「天才」とも評されたシンガー/ソングライター。カエターノやダニエラ・メルクリなどMPB/バイーアの先輩アーチストたちの影響を受けていたり、ブラジルのちょっと珍しい地方の音楽のリズムを取り上げたり、その作品は独特の曲が多い。この曲はレゲエ風で途中ラップのブレイクも入った凝った作り。しかしレゲエというのは本当に世界を制覇したリズムなんだなぁ。どこの国でも最先端の音楽をやってる人たちは、かならずレゲエを取り入れますね。
8 ロス・モコソス 「ラ・ボア」
サン・フランシスコの色々なラテン諸国の出身者が集まってできたラティーノ・ファミリー・グループで、「下町の不良たち」という感じでしょうか。「テキーラのにおいが立ちこめ、ロー・ライダーズ(シャコタン...といっても知らない人もいるか...えー車高を低くした改造車です)のエンジンがうなり、そのラウド・スピーカーがら耳障なほどにに鳴り響く轟音...」ラテン・コミューンのこんな風景から、サルサはもちろん、HIP HOP、スカ、ジャズ、ロックなどがごちゃっと混じって生まれた「ラテン・グルーヴ」というわけです。歌詞も、英語とスペイン語が混在した「スパングリッシュ」と呼ばれる独特の言葉で歌われます(最近の若いラテン・アーチストの曲にはだいたいこのスパングリッシュのヴァージョンがあって、ラテン語圏と英語圏の両方にアピールするようになってきています)。メキシコのラ・ソノラ・サンタネラの古い曲を今のラテン風にカヴァーしたもの。このようなラテンのアーチストが最近いろいろ脚光を浴びてきて、嬉しいです。
9 ゼカ・バレイロ 「マヨ・アモール・マヨ・ベム・メイ・アメイ(マイ・ラブ・マイ・ディア・ラブ・ミー)」
先ほどのシコ・セザールとルームメイトでお互いに影響を与え合った仲間で、キャッチーなメロディーと才気あふれる歌詞で「ニュー・ウエイヴ・オブ・ブラジルの大物」と呼ばれ、新しいグローバルな作品を作り出しています。HIP HOP、レゲエ、ファンク、ソウル、ワールド・ミュージック...これまた抜群にかっこよくミックスされていますね。「ヘヴィーなファンク・ビートと強力なラップ...それにもかかわらず、伝統的なブラジル音楽/西アフリカの文化の骨組みがあることがわかる。」このへんが、ただ者じゃぁないところです。
10 ワイクリフ・ジーン (フィーチャリング リフュージー・オールスターズ) 「サング・フェジー」
お馴染み「フュージーズ」のワイクリフ!ハイチ出身でアメリカに移住しブルックリンで育った彼は「rara」というアフリカにルーツのあるハイチの儀式を見て音楽に魅入られたそうです。ブルックリンで、いとこのプラスとローリン・ヒルと共にフュージーズを結成。N0.1HIP HOPグループとなりました。その後彼は'97年にソロ・アルバム「ザ・カーニヴァル」を発表。色々なジャンルのゲストを迎え(ラテンの伝説的女性歌手セイア・クルーズ、ボブ・マーリー&ウェイラーズのコーラス隊アイ・スリー、ニューオリンズのネヴィル・ブラザースなど超豪華!)、クレオール語で歌われた、ハイチでの彼の原点を大切にした素晴らしい作品でした。この曲は「朝日の当たる家」のメロディーにのせて人種差別、警察の残忍性、(ハイチ人としての)文化的プライドについて歌ったもの。ローリンの歌も格別ですね。
11 ダウージ (ウィズ ジャバン) 「ヴァモス・フージー」
ブラジルのバイーアというアフロ・ブラジリアン・カルチャーの中心地出身。アメリカン・ポップ、ソウル、ファンク、R&Bなどを彼女の出身地の音楽とを継ぎ目なしに融合しています。様々な国のアーチストに影響を受け(この影響を受けたアーチストの解説は、原文をぜひ見てください。すごくおもしろいから...)、ジルベルト・ジルがプロデュースしたデビュー・アルバムはセルソ・フォンセカやウィル・モワット(soul soul)も参加した豪華なもの。この曲はジルベルト・ジルの曲で、デュエットしているのは有名なシンガーソング・ライターのジャバン。アメリカのソウル・シンガーの影響が伺えるその歌唱法は「まるでTLCやジャネット・ジャクソンのよう」と解説されています。
ぜんぜんばらばらの国の人たちになのに、共通した「ワールド・グルーヴ」が感じられるこのアルバム、充分堪能していただけましたか?ミリアム・マケーバのアルバムも楽しみです。これからもこうした人たちのアルバムがPutumayoからもっとリリースされるといいですね。そして、このシリーズの続編のリリースも楽しみにしながらペンを置きたいと思います。では、良いミレニアムをお迎えください!
1999年11月