■伊豆熱川・カターラ福島屋
★旅のデータ
期間 :2001年10月31日(水)〜11月1日(木)
行き先 :静岡県東伊豆町/熱川温泉
宿泊施設:カターラ福島屋
交通手段:自家用車
メンバー:私、妻、チビ助(♀/2才8ヶ月)
☆国際情勢と予算の関係で国内で南国リゾート気分を目指したのだが、
出発前に思わぬトラブルが発生し、ホテルは貸し切り同然となった。
◆プロローグ
8月の終わり頃から秋の旅行計画について検討を開始したのだが、チビ助の様子を見る限り、何時間も飛行機に乗るのは厳しそうな感じだ。4月にテニアンに行ったときはジャンボの中ではうるさかった小僧だが、7人乗りの軽飛行機では神妙にしていたので、伊豆諸島あたりを検討してみることにした。最初の候補地は新島。しかし、新島はアクセスが悪いのでボツ。八丈島はなかなか良さそうだが、やはり調布飛行場への足が悪い。羽田からの飛行機は軽飛行機ではなくジェットだが、飛行時間が45分位なので小僧も我慢できるかもしれない。とはいえ、それと並行してグアムの安いツアーにも心が揺れるのであった。
そんなことを悩んでいるうちに、9月11日にテロ事件が発生したため、とりあえず当面は海外は候補から除外することにした。危険性云々というよりも、現地で足止めになるのがイヤだからだ。他にも問題はある。Mac
OS Xの単行本の仕事がなかなか終わらないのだ。当初は7月中旬という話だったのが、いつの間にか9月10日にUPということになり、何とか9月中にはと努力したものの、2日ほど10月に食い込んでしまったのであった。9月末に友人が八丈島にダイビングに行くので、日程を合わせようかとも考えていたのだが、そんな申し込みをしなくて良かった。聞けば、八丈島の近海には冷水塊があるらしく、寒いという話である。せっかく南の島に行っても泳げないのなら意味が無い。ホテルのプールは10月一杯は開いているようなのだが、気温が低いとつらいものがある。
あまり予算が無いという事情もあり、結局は久々の伊豆方面で、室内の温水プールがあって、部屋で食事ができる宿を探すことにした。引っ掛かった候補はあまり多くない。その中でいちばん良さそうな感じなのは、熱川の「カターラ福島屋」だった。料金的には平日1人1泊2食付きで1万9千円前後で、どこのツアーでも大差は無さそう。早速、いつもの旅行屋さんに相談してみると、JTBの「エース」でお得なプランがあるとのこと。料金は1万8千700円で他と同じ位なのだが、ホテル内で使える3千円分の金券が付いているとのこと。食事の際の飲み物や売店での土産物の購入に使えるらしい。アロマセラピー・マッサージの支払にも使えるといいのだが、そのあたりは不明である。バナナワニ園の入場券とも交換できるようなので、なかなか良い条件だと思われる。宿のホームページやパンフレットを見ると、温泉旅館にしては珍しく、本格的なリゾートっぽい雰囲気にしつらえてあるようだ。
ところがどっこい、出発まであと1週間というときになって、旅行屋さんから緊急連絡が入った。何と! 予約した10月31日は全館休業日だというのだ。他のツアーでは予約を受けないように設定されていたようだが、JTBのエースだけはパンフレットと予約コンピュータの設定変更を忘れていたらしい。天下の大企業がおマヌケな話である。対応としては、同じ日程ならば宿を変更するか、カターラに泊りたいなら日程を変更するということになる。最初に調べたときに第2候補になっていた「セタスロイヤル」に行くことも考えたが、やはりカターラの方に惹かれる気持ちが強い。そこで日程を1日前に変更して、10月30日ということで進めてもらうことにした。こんなとき、自由業は融通が利きやすい。しかし、浮かれ気分に水を差されてしまった感は否めない。まあ、1日早く行けるということで、良しとしようか。旅行屋さんには半分冗談で、JTBに「伊勢海老のお造り」をサービスするように伝えて欲しいと告げておく。
だが、まだ波乱が終わったワケではなかったようだ。3日前になって更に旅行屋さんから緊急連絡が入る。どうも関西方面で変更を了承しなかった人がいたようで、やむなくカターラは31日も営業することになったらしい。やっぱり普通ならゴネるよなあ。それにしても、JTBはかなり強引にカターラに頼み込んだんだろうなあ。再変更には気分が乗らなかったが、色々と事情を聞くと、30日は混んでいて、ほぼ満室状態とのこと。一方の31日は元々予約を受け付けていなかったため、ほとんど他の客がいないらしい。大浴場もプールも貸し切りに近い状態で利用できるというのは、とても魅力的な話だ。ホテル側の事情としても、「良かったら元に戻しませんか?」という提案ではなくて、「できれば31日にして欲しい」というニュアンスの、お願いに近い印象を受けた。というワケで、当初の予定通りに10月31日に出発することになった。さすがにもう、これ以上の変更は無いよなあ…。
●10月31日(水)−−第1日目
数日来の雨模様とは打って変わって、抜けるような晴天である。あれだけ事前にトラブルが出ているのだから、旅そのものは順調になることを期待して、午前10時頃に自宅を出発。踏み切りを避けて環7から目黒通りに入り、エネオスで給油後、裏道を駆使して瀬田付近で環8に出る。用賀インターまでは混んでいないようだが、東名の集中工事の影響が少し心配だ。東名に入ってみると、厚木までの区間の大部分で2車線規制になっており、平均で時速60キロ程度のスピードしか出すことができない。それでも渋滞というほどのものではないだろう。あまり時間がかからなかったので、混んでいそうな海老名SAはパスして、厚木インターから小田原厚木道路に入る。小田厚はガラ空きであった。
小僧が少し飽きてきたので、小田原の少し手前のパーキングでトイレ休憩とする。持参したサンドイッチと購入したオニギリを食べ、しばしベンチでくつろぐ。快晴の陽射しが暑いくらいの好天だ。腹が満たされたチビ助は近くの植木が気に入った模様。出発前に再度トイレ。トレーニング中の小僧も外トイレで練習だ。
小田原から西湘バイパスに入り、石橋から国道135号へ。続く真鶴道路も熱海ビーチラインも順調に流れている。キラキラ光る海を見ながら遊べそうな場所を探すが、なかなか難しい。順調に進んで来たため、このままではチェックイン開始時刻の2時よりも、かなり前に到着してしまいそうだ。間もなく伊東の市街地を通り過ぎそうになったとき、市営駐車場の看板を発見。その奥は「伊東なぎさ公園」という芝生と彫刻のある海辺の広場になっていた。ここでしばし海やカモメなどを見て過ごす。他にも赤ん坊や幼児を連れた家族が数組いたが、まったく空いていてノンビリした風情が漂っていた。ただし、海には降りることができない。波打ち際に行こうと思ったのか、小僧は漁港の防波堤へと続く階段を降りていく。しかし、その先に発見したのは、ゴミを燃やす地元の人々の姿だけであった。相変わらず陽射しが強く暑いため、とうとう上着を脱いだ。
1時半ごろに公園を出発。駐車料金150円也。伊豆高原付近では車の流れが悪く、少しイライラさせられる。いいかげん小僧も車内にいることに飽き飽きしたようで、チャイルドシートからの脱走を図っている模様だ。そのうち1回くらい急ブレーキをかけて、少し痛い目にあっておいた方がいいかもしれない。とか思っているうちに大川、北川を過ぎ、熱川温泉が近付いてきた。確か温泉街に行くには、国道の右側の道に降りるはずだ。交差点を探して走っていると、いきなり目の前に案内表示が現われたので、あわてて減速して右折。後部座席では転落したチビ助が泣いている。言わんこっちゃない。バナナワニ園と伊豆急の駅を通過し、ホテルへの曲り角を探しながら走っていると、道路脇に座っていたオジサンに呼び止められた。「宿は決まってるの?」と聞かれたので、客引きかと警戒しながら「カターラです」と答えると、「あっち」と元来た道を指差すではないか。どうやら行き過ぎたらしい。おじさんに「どうも」と頭を下げてから、今度は見落とさないように徐行して走ると、ようやく看板が見えた。その先は、高台にあるホテルまでの急坂だ。カジキマグロのマークの建物の前のスペースに車を入れると、係員と共に荷物を降ろす。と言っても小さなバッグ1つなのだが…。
駐車場からの入り口は1階だが、フロントは3階になっている。チェックインしたのは午後2時少し過ぎで、おおむね予定通りだ。例のトラブルの件もあってか、マネージャーらしき人が現われてアレコレと口上を述べる。エステは現金オンリーで、JTBのオールマイティーチケットは使えないらしい。消費税分も現金払いだ。今日のお薦めオプション料理は、アワビの踊り焼きが3800円也。普通は5000円くらいだから、かなり安いかもしれない。フロントの横には「ボラボラ」というレストランがあるのだが、今回の我々には用が無い。エレベーターに乗り込むと、ドアの反対側に多角形のプールが見える。ガラス張りに陽射しを受けて、なかなかゴージャスな雰囲気だ。仲居さんが押したボタンを見ると、部屋は8階らしい。プールを見下ろすようにエレベーターが上昇すると、一瞬の後に海の展望が開ける。なかなか細部の演出に凝った建築になっているようだ。プールの屋外にはジャグジーらしき施設も見える。
部屋は811号室で12畳の和室と6畳の次の間が付いている。スタンダードルームは10畳+踏込みというデータだったから、これはデラックスルームなのであろう。このアップグレードが、JTBの「お詫び」なのかもしれない。単に部屋がガラ空きなので、ホテル側が好印象を与えようとしただけかもしれないが…、真相は不明。部屋の窓からも海が良く見える。お茶を飲んだ後でテラスに出て樹脂製チェアーで一服。柵が透明アクリル板になっているので、チビ助にも景色が良く見えるし、隙間から転落する心配も無い。が、排水孔にタバコの吸い殻が2本落ちていたのは、チョットいただけない。そんなところに捨てる客も困りものだが、掃除で気付かないホテル側も1ポイント減点かな。変色の具合からして、昨日今日というものではなさそうに見えるのだから。
マッサージにチケットが使えないということなので、ホテル案内を見ながら作戦を練る。バナナワニ園の入場料は通常1000円のところ、ホテルで前売り券に交換すれば900円になる。×2で1800円。残りは4200円だ。夕食時に酒類を少し飲んだとしても、せいぜい1000円くらいのものだろう。ミニバーのリストを見ると、ビール1本720円とのことだ。う〜ん、売店で土産物を買うという手もあるが、海産物をホテルで購入するのは気が引ける。色々と悩んだ結果、せっかくだからアワビを1人前だけ注文することにした。サザエのつぼ焼きも考えたが、夕食のデフォルト設定に含まれていそうな気がしたのでヤメ。
移動の疲れもほぐれたので、浮き輪を膨らましてプールへ行くことにする。水着の上に浴衣というのは妙な感じだ。チビ助が大人と同じ待遇を要求すると面倒なので、持参の子供用浴衣を取り出そうとしたら、なぜかカバンの中に入っていない。シワにならないように、出発直前に詰め込もうとした心づかいがアダになり、そのまま家に忘れてきてしまったのだ。幸い、チビ助は何も気にしていないようなので、そのままフロントへタオルを受け取りに行く。更衣室は2階で、近くの専用階段で3階のプールへ行く。
ガラス張りの吹き抜けにある6角形(8角形だったかな?)のプールは、水面とプールサイドの高低差を排した最近の流行りのオシャレな構造になっている。他にはまったく誰も居らず、完全に貸し切り状態だ。小僧は最初のうちは警戒モードだったが、次第に思い出したのか、リラックスして楽しんでいる模様。スポンジのボールを投げて遊ぶ。水中を良く見ると、海寄りの一角が水深の浅い子供用プールになっており、そちらの方から温水が供給されているようだ。上を見上げると、我々の部屋の隣のテラスに浴衣の人陰が見える。最初に部屋に向かったときにすれ違った人物と同一と思われるので、とりあえず他に1組は客がいるようだ。アレがゴネた人だろうか?
プールサイドにはステンレス製の滑り台が設置されている。普通の児童公園にあるようなものなので、ウォータースライダーとしての迫力は期待できないだろうと思い、チビ助に使わせる前に私がテストしてみることにした。建て付けが悪いのか、上部に乗ると電車の警笛のような大きな軋み音が鳴る。何気なく滑り始めたところ、摩擦抵抗が低いのと、距離が短いため一瞬で水面に到達してしまうため、意外に恐い。ちょっとチビ助が単独で使うには適さないだろう。そこで、妻がトライした後、私が小僧を抱えて行ってみることにした。浮き輪は無しである。10キロとはいえ重量が増加すると、落下の運動エネルギーも比例して増大する。着水時、私の胸元に頭があるチビ助は、水没してしまうかもしれない。とっさの判断で小僧を持ち上げたまでは良かったのだが、作用と反作用の法則に従って私は深く水没し、水底に強くカカトを打ちつけてしまった。質量増加に加速度が加わったため、かなり痛い。骨が弱い体質でなくて良かった。
1時間弱は遊んだ頃だろうか、チビ助が少し寒そうにしているため、予定を変更して風呂に直行することにした。私と小僧は混浴のジャングル風呂「パウ」へ、妻は女性専用浴室「伯爵婦人」と露天風呂「海と月」に別れた。ジャングル風呂は、夢の島にある熱帯植物園の温室に浴槽が点在している感じの大浴場だ。やはり誰もいない。後で聞いたところでは、女風呂も無人だったそうである。いくら客が少ないとはいえ、このカターラに来て、プールもジャングル風呂も入らないということは無いだろうと思うのだが…。まだ時間が早いからだろうか。またしてもチビ助は警戒モードに入ってしまい、私にピッタリとくっついて離れない。足で湯温を確認しながら移動するが、少し熱いようだ。いちばんぬるい浴槽は洗い場の近くの岩風呂なのだが、洞窟風に少し薄暗いため、さらにチビ助は落ち着かない。しきりに手を引いて移動を要求した先は、何と出口であった。まあ少しは暖まったからいいだろう。2人とも蚊に刺されてしまったのは予想外だった。
風呂での滞在時間が短かったので、妻の入浴時間を勘案し、帰りがけに売店をのぞいてみることにした。やはりここにも誰もいない。隣はゲームセンターだ。財布を持っていないので早々に退散。部屋ではテレビで夕方の幼児番組を見つつチビ助が昼寝することを期待するのだが、テンションが高いのか気配すら無い。昔はプールの後は良く寝たんだけどなあ。
夕食は6時に予約してあるため、まだ少し時間がある。そこで今度は3人で売店に行くことにした。今度は財布とチケットを持参するが、特に買いたいと思えるようなものは見当たらない。ゲームセンターに自動販売機があったので、チビ助用にブリックパックのリンゴジュースを買っておく。200円也、高い。小僧はアンパンマンのUFOキャッチャーにも心惹かれるようだが、テトリスが気に入っってしまった模様。デモ画面の前でスティックとボタンを操作している。どこで覚えたんだか…。妻は無料のマッサージチェアーを使っている。少しオヤジの整髪料臭いらしいが、なかなか快適らしい。後で私が試したところ、体が持ち上がってしまって全然ダメだった。座り方が悪いのだろうか。ルームサービスのコーヒーは夜だけの営業だということを思い出したので、私の翌朝用のコーヒーも仕方なく買っておく。部屋に戻るエレベーターからは満月が美しい。海面には光の帯が連なり、小文字の「i」のようである。
6時少し前になると、部屋では夕食のセッティングが始まった。食前酒に山ブドウのブランデーが付いているが、とりあえずミニバーからビールを1本出す。突き出しには小さいながらもサザエのつぼ焼きが付いている。やはり注文しなくて良かった。他に、海老の山芋&緑豆のマヨネーズ焼き、むかご、エシャロット(ノビル?)の金山寺味噌などが盛られている。刺身はカンパチ、鮭、甘海老、イカ、ウニ。カンパチはなかなか美味いが、ウニは少し臭みがある。シャブシャブがブタなのは、最近の狂牛病騒動の影響だろう。けっこう良い豚肉を使っている。ウドンが入っているので、小僧にも結構なことだ。追加オプションのアワビは値段に比例した小さめのもので、トコブシとの中間くらいのサイズだった。味はマズマズだが、固形アルコールの火力が弱かった感じがする。天ぷらは練り物2種とシシトウで、煮物も蓮の進上と練り物が中心だ。どうやらここの料理長は練り物(すり身)が好きらしい。チビ助は眠気がピークに達してヘンテコになってしまい、ほとんど何も食べないで、仲居さんが熱物を持って入っ来る度に泣いている。焼き物は「アラ」との話だが、銀ムツではないかかと疑っている。まあ美味しいからどちらでも良いのだが…。その他は鮭ご飯とお吸い物、おしんこと白飯もある。謎だったのは茶色くて粘りのある海苔の佃煮である。見た目からして最初は「もずく酢」かと思って口にしたのだが、味は海苔であった。珍しいので、土産品の候補に入れることにしよう。下の売店に売っているかもしれない。
いかれたチビ助を持て余してきたので、さっさと寝かし付けようと思い、握り飯を1個作ってからテーブルの片付けを依頼する。すると、デザートのオレンジシャーベットが登場してしまった。この品目だけしっかりと食べた小僧は、一時的に眠気から復活してしまったようだ。仕方が無いので、さらに疲労させるべく、プールに行くことにした。今度は風呂の支度もしてから、部屋を出る。
やはり誰も居ない夜のプールは、温室効果が薄れて少し寒くなっている。10分ほどで切り上げて、今度は風呂だ。ジャングル風呂は19時〜21時は女性専用になっているため、私とチビ助は男性露天風呂の「天と海」に行く。ここにも誰もいない。暗い露天風呂を小僧が怖がるため内風呂に入ったのだが、大人しく浸かっているようなヤツではない。危険は無さそうなので、放っておくことにする。見通しの利く細長い洗い場で、水たまりを足でピチャピチャやって遊んでいる。私の方が充分に暖まったところで、チビ助の体と頭を洗う。手桶も椅子も使い放題なのが助かる。しかし、自分の体をちゃんと洗っている余裕は無さそうだ。相変わらずジャングル風呂の方も無人だったようで、妻は無邪気に滑り台を5回も楽しんだとのこと。情景を想像すると、何だか笑ってしまう。
部屋に戻ると蒲団が敷いてあり、チビ助は突進して潜り込むのだが、なかなか眠りには入らない。もうすぐ寝るのではないかと期待して、かなりの間は3人で蒲団に入っていたのだが、部屋を走り出すに及んで諦めることにした。小僧が寝たら、もう1回風呂に行こうと思っていたのに…。
そこで、私は部屋風呂に入ることにした。海の見える浴室はそこそこの広さがあり、大きめの浴槽を良く見ると、ジェットバス(ジャグジー)になっている。蛇口やノズルに石灰質が多く付着しているところからすると、お湯は温泉のものらしい。お湯を張っているときに、ふと脱衣所の横を見ると、洗面台が2つ並んで設置されている。これはアマンあたりが流行らせた、カップル向けのゴージャス仕様を取り入れたものだろう。してみるとこのホテルは、若者でも年輩でも、カップルでもファミリーでも、それなりに満足ができるような汎用性の高い宿だと言えよう。洋風リゾート純和風旅館の長所を上手く組み合わせて、誰でも80点を付けてしまうトヨタのカローラのようなものである。感心、感心。ただし、このジャグジーはスタンダードルームには付いていないものと思われる。
私の入浴中も部屋を走り回っていたチビ助は、その後に電灯を消してももなかなか寝入らず、結局10時頃までは起きていた。どうやら腹も減っっていたようなのだが、ちゃんと夕食時に食べない自分が悪いのである。大人2名は隣の6畳に移動し、お茶など飲んで1時間ほど過ごす。
●11月1日(木)−−第2日目
翌朝は7時半に仲居さんからの電話のベルで叩き起こされた。朝になったことに気付かずに爆睡していたのである。8時から朝食ということになっていたので、ホテル側としては準備をしたかったのであろう。少し待ってもらうように言ってから窓を開ける。テラス側の窓は夕食後に障子が閉められていたのだが、チビ助が穴を開けそうなので、私が遮光用の襖を閉めておいたのが敗因だ。朝日と言うには高く昇り過ぎた太陽が眩しい。
朝食はお茶と梅干し、アジの開きとタタキ、みそ汁はカニで温泉卵やほうば焼きも付いている。サラダはイマイチで、海草が少し生臭い。海苔の佃煮は普通の黒緑のもので、おしんこもある。デザート(?)はピーナツ味噌の「へらへら餅」だ。おにぎりも作っておく。
食前に風呂に行きそこなったため、チェックアウト前の時間を利用して入ろうとしたところ、大浴場は9時までということが発覚した。時計を見ると8時50分である。うかつであった。そこで急きょ9時に開くプールに行くことにした。9時ピッタリにフロントに行ってタオルを借りようとしたところ、係員が不在である。チェックアウト待ちをしているらしい夫婦が何か用事を頼んでいるらしい。タオルは妻に任せて、私とチビ助で先にプールに行く。後から来た妻の証言によると、何やら朝食を摂らなかった分の返金を求めていたようで、おそらくJTBの変更依頼に応じなかったのは、あの人たちであろうとのこと。隣室の人とは別人のようなので、客は3組だったのだろうか。プールで15分ほど遊び、更衣室でシャワーを浴びる。チビ助は風呂でもプールでも更衣室がお気に入りのようだ。ロッカーの鍵が沢山あるからだろうか。
10時10分前にチェックアウト。バナナワニ園の前売り券900円×2を含めて税込546円オーバーというのは、オールマイティーチケットの効用だ。本来なら6546円の支払いとなる。1階に降りてカウンターで車の鍵の返却を受けるとき、たくさん並べられたタグが目に入った。今日の客の車の鍵に付けるものだろう。我々は貸し切り状態だったが、普段はとても繁昌しているようだ。
ホテルからバナナワニ園へは車で5分とかからない。最初に本園のワニ園を見学する。最初は小型のメガネカイマンあたりから始まって、奥に進むと巨大なワニもいる。左手が無いのはケンカの勲章だろうか? 口を開いているのは体温調整のためだそうだ。ワニ園のいちばん奥には赤いインコと白いオウム×2がいる。オウムのうちの1羽は良くしゃべる。いまだに「オハヨウ」も言わない小僧は負けているかもしれない。アリゲーターとクロコダイルの違いは初めて知った。最後のワニはアルビノの白ワニで、その後の順路にはアロワナの水槽などがある。細長い生け簀のようなところで水音がするので覗き込んでみると、ピラクルという巨大魚がひしめいていた。見た感じでは1メートル50センチくらいはありそうだ。それが10匹くらいうごめく様は、ちょっと無気味。
次に行ったのは道路を渡った向いにある、本園の植物園だ。前に若い女の子の4人組がいて、ちょっとうるさそうな感じ。いわゆる熱帯植物の最初の温室を抜けると、そこにはなぜかマナティーの水槽がある。先ほどの女の子たちはキャーキャーはしゃいでいるが、「ストロボは使わない方がいい」などと言っているところを見ると、それなりにちゃんとした常識をわきまえているのかもしれない。先入観と偏見には気を付けなくては。とベンチで小僧に握り飯を食べさせながら聞くともなしに聞いていると、4人のうちの1人が妙にマナティーに詳しい。誰かが疑問を呈すると、確信を持ったように即答するのだ。専門家かマニアなのだろうか。そのうちに不審に思った別の1人が「なんでそんなこと知ってるの?」という質問を投げかける。それに対する答えは「上に書いてあるよ」というもの。水槽の間近で見ていると、頭上にある説明表示は目に入らない。クールに後ろから眺めていた者のみが気付いていただけのことであった。これには私も苦笑してしまった。近くで吹き上げる温泉の源泉の前で係員にシャッターを頼んでいたところ、エサの時間になったので再度マナティーの前に戻る。エサの内容はニンジン、白菜、チンゲン菜などで、とりあえず最初にニンジンばかり食べるところを見ると、好物なのだろう。
香りの良い洋ランの温室で三脚を使って年賀状用の写真を撮った後は、斜面の上の方にある温室にエレベーターで上がる。トックリヤシなどのある観葉植物温室を過ぎると、名物のバナナソフトクリームが売っている。250円也。子供の頃に食べたような、何だかとっても懐かしい味だ。売店の後は睡蓮や原種のラン、オオオニバスなどの温室があって行き止まりになる。帰路のエレベーターホールでは、チビ助がネオンテトラの水槽を見つけてしまって足止め。水草を見て小僧が「海の木」と表現するのを、手持ちの語彙を組み立てる能力が身に付いてきたのだと喜んでしまうのは、我ながら親バカ全開である。
少し離れた場所にある分園に行くには、本園の前から無料のマイクロバスを利用する。数人の客が乗り込むと、すぐに出発し、5分もかからずに到着する。ここにもワニが居り、少し広い池になっているため、時々は泳ぐ姿も見ることができる。チビ助はワニが気に入ったようで、本園でもココでも「じ〜」っと見ている。ワニの横はアンスリウムとランの温室だが、テキトーに流してレッサーパンダを見学する。なかなか可愛げのある姿をしていて、それなりに動きもあるから、一般向けにはワニより良いかもしれない。ふと振り返ると、後方からスゴイいファッションセンスのカップルが現われた。最近は袖ヶ浦や土浦(またしても偏見?)のヤンキーでもあまり見かけないような、いただけないセンスである。
レッサーパンダの横の階段を登ると、バナナの温室だ。ここは小僧に良く見せておきたい。見学者の中には不届き者もいるらしく、低いところに実っているバナナがネットで被われているのが不粋な感じ。次の温室はスターフルーツやパパイアなど。マンゴーは果実を付けていなかった。フラミンゴとゾウガメを見るとだいたいお終いなのだが、我々はもう一度レッサーパンダの方に戻ることにした。
最後に見晴しの良い展望台に寄ると、そこでは老人の団体が休憩に入ろうとしていた。気前の良い1人の爺様が、皆に缶ジュースをおごっているようである。我々もジュースを飲み、記念写真を撮る。そろそろ昼時なのだが、展望台の階下のフルーツパーラーには腹を満たすような献立は無いので、パスして1階の売店へ。この旅行で何も買わないで帰るのも寂しい気分だが、バナナやワニのヌイグルミを買ってもしょうがない。チビ助はアンパンマンのゴム鞠に心惹かれているようだったが、それは無視して「パン工場」の玩具を850円で購入し、マイクロバスに乗り込む。座席では小僧が買ったばかりの玩具を出せと要求するのだが、我が家の家訓(?)に従って、家まで我慢するように諭す。その後、バスには先ほどの老人団体が乗り込んできてにぎやかである。誰か1名がなかなか来ないというのも、ツアーのお約束のようだ。
バスが本園に戻ると、老人達はコインロッカーから荷物を取り出しながら、昼飯の相談をしている。どうやら駅前でソバか何かを食べることに決まったらしい。チビ助のトイレを待っていた私は、横にある食堂の内部とメニューをチェックする。客は観光バスの運転手とツアコンの2名だけだ。老人達も去って行った。献立にはカレーやラーメンもある。途中のコンビニでオニギリを買って車中で食べるのも空しいし、かといってファミレスなどは気が進まない。外食は周囲への気づかいが多くて疲れるのだ。しかし、ここなら何とかなりそうだ…。
というわけで、バナナワニ園の本園のレストランに入って、カレーライスとラーメンを注文する。各700円也。5分と待たずに料理が出てくるのも有り難い。味の方は昔懐かしい子供の頃に食べたような感じで、決して不味くはない(美味くもないが…)。先ほどオニギリ食べているチビ助はラーメンを少々食べただけ。その後で冷水のコップを倒してしまったが、大事には至らなかった。先客と従業員の会話や案内表示によれば、通常の見学は所要1時間程度とのことである。あまり丁寧に見てはいないはずの我々は、食事の時間を差し引いても2時間半以上かかっている。ワニは動きが少ないとか、さびれているなど、事前にあまり良い評判は聞いていなかったのだが、我が家にとってはなかなか見ごたえのある、相性の良い施設だったと言えよう。
熱川を後にした我々は、途中の魚センターで友人への土産物の海産物を買うことにする。沿道に店は数々あるようだが、我々は無難な路線で伊東のサンハトヤを目指した。ところが中に入ってみると、ぜんぜん客が居らず、何だかうらぶれた感じ。味見もできない。平日だからだろうか? とりあえず購入計画は中止して、水槽で泳ぐアジやタイなどを見学する。最近、小僧は魚の名前の識別に凝っているようで、イルカを見て「アジ〜!」などと叫ぶことがあるのだ。泳いでいるアジを見る機会は多くないので、これは良いチャンスだ。
サンハトヤを後にしたものの、どの店が良いのやら。のんびり探しながら車を走らせていると、宇佐美あたりで小規模な店が目に入った。そこの駐車場に入れるとき、後続のトラックに煽られたのは不快である。不景気で心に余裕の無い人が増えているのだろうか。味見もでき、賞味期限も大丈夫そうだったので、贈答用の塩辛や海苔佃煮などを買う。眠気が入った小僧は私に抱きかかえられながら頻繁に背後に仰け反るため、店員のお姉ちゃんたちは驚いて見ている。そんなチビ助はウェハースをゲット、我が家にはサービスの生ワカメだ。駐車場脇のトイレに寄ったら、後は帰るだけだ。
熱海も真鶴も順調に通過し、西湘から小田厚に入る。その頃にはチビ助も寝入ったようだ。東名は集中工事で渋滞が予想されるため、大人2名は大磯のパーキングで交代で休憩に出る。厚木インターからは予想以上の渋滞で、本線に入るだけでも一苦労。合流した後もなかなか進まない。海老名パーキングに入ろうなどと思わなくて良かった。どうやら渋滞対策として、海老名SAと悪名高い綾瀬バス停までの間を4車線化する計画らしい。そんな小手先の改良で効果があるのだろうか?
充分に眠ったらしいチビ助は、海老名付近で目を覚ます。工事のロードローラーなどを見ながら進むうちに、綾瀬バス停を通り過ぎたあたりから順調に流れ始めた。トイレ休憩に寄った港北パーキングでは、夕焼けが美しい。カメラを構えているいる人も多いほどの見事さだ。その後は特に問題もなく、17時半頃に帰着。荷物があるので、駐車場から自宅までチビ助が歩いてくれた助かった。
10月中旬に風邪を引いてしまった私は、直った後も左の耳と鼻の調子が悪く、ずっと蓄膿症ぎみの様相を呈していたのだが、旅行の後は症状が解消していた。これは温泉の効用かもしれない。
折中 良樹