こおろぎ社訪問レポート 2003/08/18

2003年夏におこなった福井県武生ライヴ。その翌日武生の隣町である朝日町に工場を構えるマリンバメーカー、こおろぎ社を訪問いたしました。こおろぎは50年以上の歴史をもつ、世界最高の品質でリードする日本が誇るべきメーカーです。うんざりは全員こおろぎオーナーで、武生ライヴでは楽器を提供してくださいました。

というわけで武生の旅館、あかしさんを発ち、一路こおろぎに向かったのでした!

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福井県朝日町というところに本拠を構えるこおろぎは、武生の街から車で約20分。日本ののんびりとした田園風景を走ると田んぼと小山に挟まれた場所にポツンとありました。

ポツン、と書きましたが、実は巨大な敷地面積の工場です。周りの風景があまりにも広々としていて、遠くからも確認できるのどかな場所のため、ポツンです。

工場内の案内は、昨日のライヴも楽器をもって見に来てくださった、斎藤宰(さいとうおさむ)社長自らなさってくださいました。工場はWood 部門、Metal 部門の分かれていて、それぞれでパーツを作成していました。

これ、こおろぎ社の入り口から外側に向けてカメラを向けたところです。ね、あんな遠くのおうちも見える田園風景。

世界のマリンバメーカーからも注目を浴びている工場があるとは、とても思えない光景。

まず建物の中に入ると、きのうお借りしたパーフェクションが置かれていました。社長さんがはってくれた、うんざりシール!

昨日のライヴが思い出されます。

エントランスを抜けて作業場に一歩足を踏み入れると、木材が所狭しと積み上げられていました。よく見ると置いてある場所で作業工程の違う木材。

中米のグァテマラから輸入されたローズウッドはまず、この倉庫内でシーズニング(乾燥)を行います。この時点ではまだ未加工の長い板の状態。倉庫内は除湿器と大型扇風機が24時間フル回転しながら、第二の生命を吹き込まれる時を静かに待つ木材で埋め尽くされていました。

この行程、5年!つまり今製作している音板は少なくとも5年以上前に輸入したものですね。しかもこの音板、こおろぎでは○○年分ストックがあると言っていました。(斎藤社長さん、気さくにしゃべってくれているので、どこまで企業秘密なのか(^_^;)、一応自主規制で伏せ字にさせていただきます。)

木材にも当然ながら善し悪しがあり、最高品質の木材を安定して供給することがマリンバメーカー最大の難関のようです。最近は海外からどんどん新しいメーカーが参入しているようですが、50年の歴史をもつこおろぎは他メーカーとは違う別待遇で輸入しています。

倉庫隣には、加工が間近に迫った木材の強制乾燥機が並んでいました。

1週間だったかな?24時間稼働して、10%だったかな?(すいません。細かい数字は忘れた)とにかく限界まで乾燥させます。

木材をもって、「ほら、ここ見て。こういう木目のものがいい鍵盤で、ここからここまで(左の社長さんがもっている木でいうと、半分くらいの長さ)が鍵盤で使えるけど、あとはダメ」と説明。斎藤社長の木を語るときの表情は昨日のそれとは全く違って、職人でした。
カッコいイー!
長い木材から、鍵盤として使える部分、さらに品質の善し悪しをチェックしながら等級別に分けていく作業をするおじさんです。この時点で音域まで決定するそうです。一枚の板から品質のよい部分が長く取れないと、低音の音板は出来上がらないということですね。こおろぎの木材を加工する行員の皆さんは全部で15人もいないくらいですが、誰もが相当のキャリアを持っています。まぁそうでないと木材の判別なんてできないから当然ですね。
工場内には加工ロボットもたくさんありました。どれもこおろぎオリジナルの機械のため、「これは写真とらないで!」と注意されるものもありました。

左はヒモを通すための自動穴開けマシン。音程を入力することで、あとは次々と穴を開けていきます。面取りも自動。
メンバーは鍵盤が流れて、穴があいて行く状況に目を丸くしてみていました!

その後ニス塗り、グレード選別など様々な行程を経て、最後は調律になります。小さいブースの中にマイクロフォン、オシロスコープ、研磨機がありました。

実際に社長自ら調律の作業をしてくださいました。今でもこおろぎの最高グレードマリンバは社長自らが行っているそうです。こおろぎマリンバの音色が決定づけられる行程ですから、その斎藤社長さんも次第に気合いが入っていくようでした。・

作業は硬いマレット(シロフォン用くらい硬い綿巻でした)で相当強くガンガンたたいて、音板の持っている倍音構成を整えていきます。ドラム状の研磨機が高速で回転しているため、ブース内は相当の騒音が発生しています。その中で鍵盤を隅から隅までガンガン叩いて、濁り成分を抜き取る作業。

音板のどこをたたいても同じ倍音になるように、また濁りのない音板をつくる作業は、少し見せていただいただけでもその大変さが伝わるものでした。「これ見ると音板割っちゃいけない!って思うでしょ?」(^_^;)、ホント。頭の下がる思いです。

次にメタル部門を案内してくれました。

メタル部門のメイン作業は、共鳴パイプの作成です。

木材部門は工場内に木材の香りが充満していて、「道具を作っている」雰囲気に溢れていましたが、メタル部門は鉄工所のような雰囲気。丁度昼休み中ということもあり、人もほとんどいなかったんですが、楽器を製作している場所には到底思えない空間でした。

加工前の長いパイプがずらり!直径の太さが違うだけでどれも水道管のようでした。素材はアルミニウムなので、手にとると見た目よりずっと軽かったです。パイプは音程別に裁断され、組み立てられます。

リベット打ち込み機を動かしてくれようとしていますが、動きませんでした(^_^;)。昼休みだからね。

組み立ての終わったパイプは塗装行程に入ります。塗料を吹き付ける向こう側の壁は大きな排気機能を持つボックスになっていました。それでもこの作業場所はシンナーの匂いで充満していて、厳しい環境でした。

マリンバのパイプは音が低くなるにつれて長くなります。昔は直管(まっすぐなパイプ)で脚立に昇らないと演奏できない「2階建てマリンバ」か、サックスのように折り曲げた曲管しかありませんでした。いずれもパイプが長くなるに従って、温度と湿度の影響をものすごく受けるため、音板とパイプの距離を調節するだけでなく、パイプの蓋(底板)を調節して、パイプ自体の長さまでもコントロールしないと鳴らないものでした。サックスやクラリネットなどの管楽器であれば、唇とマウスピースの抜き差しで微調整できるけど、マリンバとなると演奏中の微調整ができないという点で、音域拡充にとってマリンバの弱点がここにありました。

これを解決したのが大きな音板の作成技術とこおろぎの開発したボックス型の四角いパイプです。これを「ヘルムホルツ管 」といいます。斎藤社長がパテントをとらなかったので(オイラはバカだなーって思うけど)、今では他社もヘルムホルツ管 を採用しています。「音色は直管がもっともシンプルでベストだね。いろんなメーカーがいい技術を使うことでマリンバの進歩につながればそれでいいと思うよ」斎藤社長さんはおっしゃっていました。こおろぎマリンバが他社には絶対マネのできない品質を誇っている表れで、また何と言っても楽器を愛しているからこそ出てくる発言と目の輝きでした!

全ての行程を見終わり、最後にこおろぎマリンバについての僕らの要望なんかを言わせていただきました。特に鍵盤とプレイヤーの関係。実はJOL、今回のライヴで肩を痛めて早朝先に帰りました。やはりバスマリンバを演奏するのは、プレイヤーにも相当負担がかかっていることは事実です。マリンバプレイヤーに腰痛が多いのも現実です。マレットが重くて長くなっているのも時代の流れですが、その中でプレイヤーが音楽に集中できるために、楽器が道具という側面に於いてもっと進化して欲しい!楽器はシンプルな方がいいに決まっているけど、人と楽器を結びつける接点に於いて、まだまだ工夫する余地があるのではないか?オイラはそう感じています。じゃないと将来、体格、リストの強さで圧倒する西洋人に対して、日本人プレイヤーは歯が立たない時代が必ずやってきてしまう。今までマリンバ界は日本人の天才プレイヤーを輩出してきています。

斎藤社長さん、エンジニアの吉村さんと一緒に、「こんなマリンバは作れない?」「それは耐久性が問題ある」「この部分をこうすることは出来ないんですか?」「それはいろんな人から指摘されているので、検討して見る価値はあるね」こんな感じで突飛な質問から細かいことまで耳を傾けてくださいました。もしかしたらそのうち「うんざりモデル」でるかな(笑)!

音域が低いところでは、音板にアプローチするマレットの角度が、白鍵と黒鍵で変わってくることでの音色の変化が顕著に出ます。これを克服しているのは現時点でプレイヤーの能力です。JOLが肩を痛めているのもこの問題と無関係ではありません。

斎藤社長さんと吉村さんは。、僕らの意見に真剣な姿勢で耳を傾けてくださいました。感謝です。

実はライブの翌日と言うこともあり、メンバーはみんな頭の中がストライキを起こしているような、疲労感に包まれて訪問したこおろぎでした。しかしその設備、緻密な作業工程を見るうちに感動すら覚えるほどの見学となりました。ひとつのステージを支えるために、一体何人の力が動いているんだろうと、スケールのデカイことまで考えてしまうほどの有意義な時間となりました。斎藤社長さんはじめ、工場のみなさまに厚く感謝いたします。

☆マリンバのことについては、こおろぎのHPでも詳しい情報が載っています。
「木琴に関するよくある質問」を御覧下さい。こおろぎのHPへ


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