起きるとりいこが辛い顔をしている、という朝が我が家ではたびたびある。慢性関節リウマチという病気は、朝の関節のこわばりが顕著な症状で、経験しなければわからない苦しみだ、と彼女は言う。それでも、彼女は会社に向かい、仕事が終われば子供を保育園に迎えに行き、帰宅すれば怒濤のような家事をこなさなければならない。
なぜ、そんな辛い体の彼女が、育児と仕事の両立にそこまで苦労しなければならないのか?そんな葛藤が自分の中に無いとはいえない。でも、これは2人の間で決めたことなのである。
健康な人だったら、それはとても喜ばしいこと、私としても助かるし、嬉しい。でも、彼女が仕事と育児とを両立させる、ということについて、「そう、じゃあお互い頑張ろうね」と言うのは重かった。妊娠の兆しを自覚してから、彼女は常時服用していた鎮痛剤をストップしていたが、それがリウマチの悪化する梅雨時と重なり、毎日痛い痛いと繰り返していたからだ。
痛みについては医師から「妊娠中も安全」といわれ、ステロイドを処方された。リウマチになってから薬に敏感になっていた彼女は、それを口にすることを極端に怖がっていた。痛みに耐えられなくて初めて飲んだ翌日の朝、起きると真っ先に鏡を見て、「よかった、ムーンフェイスになっていない!」と喜び、それから間接の痛みが全くないことに気づいたほどだった。
結局、リウマチと最悪の相性の梅雨が過ぎ、妊娠週数がすすむとともに関節の痛みはほとんどなくなり、出産後しばらくまでは薬とは無縁の生活を送ることができた。
(注:リウマチ患者が妊娠した場合、ホルモンの関係なのかリウマチの症状は軽減する。出産後は一般的に悪化の一途を辿る場合が多い)
出産後は、会社で認めている子どもの1歳の誕生日の前日までゆっくりと育児休職をとる予定でいたが、2ヶ月もとらずに復職すると言い出した。産休が明けて給料が入らなくなった途端に不安になったらしい。それにしても産後1ヶ月くらいから、リウマチの痛みが徐々に復活しているらしいのに、おいおい、大丈夫かよ・・・と思う私を尻目に、どんどん話が進んでいく。保育園は0歳児の年度途中の空きはほとんどなく、望み薄。幸い、住んでいる区は保育ママ制度がわりあい整備されていて、しかも空きもありそう、とのこと。早速復職の段取りをつけて、保育園と保育ママの申請も済ませてきた。本当にこの人、思いとどまることを知らないらしい。でも、体調もまあまあいいらしい。自信のある時が一番いいのだろう。
こうなるといよいよ私の出番である。今までは休暇中の彼女に育児・家事はお任せしていたが、彼女が復職すればそうはいかない。
もともと家事には協力的な私だった(いや、本当に!)が、今度は「協力」だけでは成り立たない。二人ともが家事・育児に主体的に関わらなければならなくなるのだ。
おむつの取り替えかた。実はそれまで「大」は苦手で、おむつをあけて「う!」と思うと彼女を呼んでいた。彼女に「男同士だから、アナタの方がよくわかるでしょ!どこを拭けばさっぱりするとか・・・」と諭され、がんばってクリアー。
ミルクの飲ませかた。薬の服用のため、早々に母乳をストップしていたので、これも全く分担。(とはいえ、夜中のミルクはどうしても起きられなかった。すまない。)
料理・洗濯は今までもやっていたからOK。私が料理すれば彼女が片づけるし、彼女が洗濯すれば私が干す・・・という具合に、お互いに指示しあわなくても、上手に仕事をシェアしていく。
そんなこんなで彼女が復職して、もう1年半経とうとしている。
家事は上手く分担できてると思っている。朝は彼女の起床から出勤まで1時間しかないので、朝食の支度、後片づけ、洗濯、那由多のお世話は私の仕事。登園までが一応担当である。復職当日は、子どもを残して先に家を出ることに非常にためらいがあったようで、通勤途中で彼女から電話が入ることもしばしばあった。それまで子どもとほとんど離れたことがなかったのだから、当然なのだろうか。今では、子どもが後追いして泣いても、しらんぷりして行ってしまう。成長したものだ(笑)
夕方は、残業しないことを前提に、担当は彼女。終業後まっしぐらにお迎えに向かい、帰宅するのが夜7時。夕食を作って食べさせ、片づけて、洗濯物をたたんで明日の保育園の支度をして(これが結構大変!)、お風呂に入れて、寝かす。夜9時に寝かすのが目標らしく、最近は目標を達成している。この怒涛の2時間の間に私が帰宅できれば、もちろんお手伝い。たまに、お迎えが遅くなりそうになったり、病院に行くような時は、私が仕事を切り上げてスライド当番をしている。
今のところ、私も彼女も、仕事と育児と家事のバランスは程よく取れている、と自認している。
ただし、やはり気がかりなのは彼女の体。実際、妊娠前と比べてリウマチは緩やかに悪化しているようだ。実は、彼女は女の子が本当にほしいらしく、いつかは第二子を・・・と夢見ている。だけど、果たしてその時、仕事は続けられるのか・・・?
焦ることなく、私たちにとって最善の答えを見つけていきたい、と思っている。
とはいえ、子どものお陰で、家族みんながそれぞれ成長していることは、とても幸せで、得難いことだ、と私は考えている。
病気でもがんばって、仕事に育児にと髪を振り乱して(・・・はいない?!)いる彼女を見るにつけ、私もそろそろ趣味でも探しなおそうかなあ・・・と考えてしまう今日このごろなのである。
homeゆめくらぶ 発行/会報『ゆめがたり』第5号(1999.12.28)に掲載
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