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余丁町散人(橋本尚幸)
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2003.3.5


夢のメカニズムについての大脳神経生理学者の最近の研究です。難しいけれどとても面白い。フロイトの理論が生化学的に裏付けられた格好です。夢というのは目覚める瞬間に見るものなのだ!


Peut-on rêver sans Freud ? (2003.3.2)


フロイトなしに夢を見ることが出来るか?

目覚めから夢が生まれる。この最近の神経バイオロジーのアプローチは精神分析とは矛盾しない。


1899年に『夢の解釈』が出版された。このなかでジグムンド・フロイトは精神分析の基礎を築き「無意識の意識にたどり着く王道を」切り開いた。一世紀が経過してもこの夢の分析は精神分析の実践面で大きな柱の一つとなっている。いま最近の神経科学の研究の結果、この手法の生化学的な原理がようやく分かるようになった。

夢とは一体何か? 一連の支離滅裂で不思議な出来事や言葉の連続であり、時として叙述しがたいものである。しかしフロイトによればそれは多くのことのほんの表面にしか過ぎないと言う。どんなの馬鹿げた夢でも変形していても厳格な理論で説明できるのだ。そのシンボルの裏に隠れた意味を引き出すためには、いくつかの大原則に基づきその解釈に取り組む必要がある。大原則とは、夢は抑圧された欲望の実現或いは挫折であり、幼児期における記憶がその根本にあり、最近の出来事の場合は日中の日常生活での記憶が「材料」となっており、夢分析の仕事は、その「材料」を暗号解読の方法で分析し、「隠された意識」を抑圧のバリアから引っ張り出すことにあるとされる。夢の分析に専念して、精神分析医の助けを借りて、出来るだけ自由に意識を解放させることで、その根元にたどり着くことが出来るのである。

フロイトの天才はその手法を見つけ大きな道を切り開いた。実践ばかりではなく理論も発展させた。「この夢の分析解釈は、精神分析の手法がその後それから発展して進歩するにつけ、だんだん基本的なものではなくなってきたが、それでも夢分析は患者の精神状態を図る圧力計のようなものであり重要なものとして残っている」と精神分析医は言う。しかし神経工学の専門家達は素晴らしい発見をした。神経工学で夢のメカニズムを分析するやり方は、必ずしも精神分析医の開祖がやった方法ではないのだ。

「フロイトの方法ではなくてどうやって夢を理解するのか」というのが2002年19月号の雑誌「科学と将来」が神経工学者ソフィー・シュワルツ博士の論文の前書きとして書いた言葉である。博士は「神経生化学的な」アプローチの結果、夢というものは眠っている間の脳活動の歪みの直接的な結果であると発表したのである。この歪みが夢の中で現実が不思議な具合にゆがめられることに繋がるのだ。知っている人の顔が怪物の顔になったり、常識はずれの大きさに拡大されたり、いろいろの色や白黒で混ざり合ったりするのだ。

コントロールの不在


こういう仮説は何故僕が巨大な犬の夢を見たのかは説明するが、どういう理由で犬の夢を見たのかは説明しない! というのがフロイトの門下生達が唱える反論であろう。二つの流派は永遠に一致しないものなのだろうか? 補完関係にあるのではなく折り合えないものなのだろうか? 現実は幸いにしてもっと微妙である。生化学者と精神分析医と対話は合致しないようにみえるが、その時点に於いて彼等は大きな考え方において近づいているのである。脳神経系統のアナログ的働きという点なのである。神経性学者のタッシン博士は、非常に有望な、二つの考え方をまとめうる、夢のメカニズムについての仮説を提案している。

眠りの間に於いては、大脳の皮質は二つのタイプのコントロールが存在しない状態で機能している。眼や耳からはいる情報などの外部感覚によるコントロールと、神経変調器と呼ばれる脳神経の活動を上部から見張っている特定の脳細胞によるコントロールである。タッシン博士は「睡眠の間は皮質の活動は前日に形成された記憶に狭い範囲で依存しながらのものとなる。別の言葉で言えば脳中枢神経のアナログ的(類推的)働きに依存するのである」とのこと。

成人の脳には二つのモードでの記憶の蓄積がある。一つは迅速な記憶であり、アナログ記憶とも呼ばれるが、零点一秒程度の間に無意識のうちに記憶される情報である。もう一つはゆっくりとした記憶というものであり、認識の記憶と呼ばれるが、情報が記憶に蓄積される前に十分意識的に分析されるものである。数学者のホップフィールド博士は、繰り返し繰り返し情報が脳にはいることで記憶を形成すると同時に連想を形成すると脳のアナログ的働きを説明する。「船を見るたびに同時に黄色い雨合羽と無線アンテナを見ると、しまいに雨合羽と無線アンテナを見るだけで船を思い出す」と説明する。

神経の再活性化

それで夢はどうなったのか? その点に入る前に、なぞの正体を見極める一つの鍵を紹介する。正常な眠りの期間には「マイクロ覚醒」と呼ばれる非常に短い覚醒の期間がたくさん混じっているのである。ほんの数秒の覚醒期間だが、一晩中で何十回と起こるのである。これが重要なのであるが、動物実験によればこの覚醒期間になるとすぐに神経の変調器が作動することが分かったのである。ここがタッシン博士の仮説の重要なところであるが、思案させるものであり、とても魅力的な仮説なのである。夢は目覚めることから発生するのだ!

「われわれが安定した覚醒にある間は我々の脳の認識機能は我々の行動と思考と一貫性のあるものとなる。しかし、この「マイクロ覚醒」の期間は神経の変調器が急に活動にはいるため、急に呼び出された「記憶」の内容が現実の認識として引きずられることになるのである。この作用はほんの零点一秒ぐらいの間で起こるため正常な覚醒状態では機能する大脳の抑制機能が働かないことになる」と博士は説明する。そこで「おかしな」夢を見ることになり、その夢の分析解釈が重要になってくるのである。

実際に、睡眠中は我々の脳の「記憶」は偶然に動き出すのではない。「動き出すチャンスの高い記憶とは一番安定した形で保持されている記憶である。別の言葉で言えば一番重要なもので、一番感情を伴うものであり、幼年期に獲得したも記憶である。これは夢を見た日の記憶とは異なるものである」と脳神経生化学者は強調する。この研究の方向が有望ということはフロイトは間違っては居なかったということである。フロイトの言ったように、脳が完全に目覚めないために夢が機能するのであり、夢はまさに「安眠の守り神」なのである。

Catherine Vincent

・ ARTICLE PARU DANS L'EDITION DU 02.03.03







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