「トンカツを食べて、よく寝ると、太る」(十三のトンカツ屋のコピー)


もう何十年も前のことだが、京都に行くたびに、阪急十三駅の京都行ホームの一番前からこの看板を見ていたことを思いだした。今日の日経夕刊「食あれば楽あり」で小泉武夫先生のトンカツ礼讃の文章をを目にしたからだ。

小泉先生は言う:
「トンカツ」という、たったこの四文字を耳にして、舌踊らない、心が震動しない、涎(よだれ)のでない日本人は少ないだろう。特に団塊の世代にとっては、食い盛りのあの時代、トンカツなんて憧れの食べ物であったからなおさらのことだ。

以 下、例によって食い物礼讃の達意の名文が続くのだが、それはさておいて、掲題の十三のトンカツ屋のコピーについて書く。とにかく戦後のあの時代、みんなお 腹いっぱい食べることが出来なかったのだ。みんな栄養不良で痩せていた。「なんとか太りたい!」。こういう庶民の願望をうまくキャッチしたのが、この十三 のトンカツ屋なのである。

この時代の飢餓経験がいまだに残っているのか、 日本の肉は脂身ばかりでとんでもなくしつこい。ごく少量しか食べえることが出来ない「高級食材」であったからこそ、脂身いっぱいのしつこい肉が珍重され た。ごく小さい肉の切れっ端をおかずに、あたかもそれが漬け物であるかのように、大量の米飯を掻き込む。これが当時の日本人の食生活であった。

貿易自由化のおかげで、肉の値段はようやく国際水準に近づいて安くなった(それでも何倍もするが、少なくとも貴重品ではなくなった)。しかるに、食習慣は、以前として昔のままだ。小泉さんの反射神経も十三のトンカツ屋の時代からいっさい進歩がない。

その結果、どういうことが起こったか? 「一億総肥満現象」である。日本の「食いしん坊文化」は、はっきり言って、この世代がふりまいてきたもの。もっと日本も国際化しないと、成人病ばかりの国民となってしまう。

脂身が少ないからこそおいしいオーストラリア牛肉が、今後日本人の好みに合わせて値段が高い脂身を増やすという。これこそ、品質の低下・味覚の大衆化に他ならない。嘆かわしいことである。

Posted: Thu - March 9, 2006 at 07:41 PM           |  


©