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Le Monde ファビウス元首相の寄稿「イラク:最初の教訓」


2003.3.29

ファビウス元首相の寄稿です。今度の馬鹿げたイラク戦 争について、感情的になることなく、そこから引き出した教訓を述べ、将来に向けてとても建設的な提言をしています。こういう地に足がついた、しかし高尚で 大きなビジョンを語りうる政治家が日本にも欲しい。

IIrak : premières leçons, par Laurent Fabius (2003.3.29)

イラク:最初の教訓(ローラン・ファビウス)

不幸な事に全般的な動乱となるかも知れない。我々は連 帯が平和の別名であることを理解し、それを示さねばならない。

今日の段階では、このイラクとの破壊的な戦争がどうい う風に展開するのか、またどのような結果を生むのか、はっきりした事は誰もわからない。戦略論はたいてい紛争への対処を準備することはできるが、その後の 平和についてはほとんど何も役に立たない。平和を継続させる条件を探るのが責任ある政治家の使命である。私はここに今までのところでの三つの教訓を提示し てみたい。

最初の教訓は、この出来るだけ早く終わって欲しいと誰 もが願っている戦争の後に、平和で安定した進歩する世界を建設するために、グローバリゼーションを制御しうる「新しい国際主義」を打ち立てなければならな いという事である。この新しい国際主義は、真実の意味で多国間主義にのっとり、権利と法を尊重するものでなければならない。フランスが、そして多くの国が このイラクとの戦争に反対したのは、まさしくこの戦争が、国連で決められた国際法を無視して一方的に決められた故に他ならない。

この多国間主義は、紛争危機に対応する時だけではな く、国際関係においてもっと幅広く適応されるべきものである。思いつくままに挙げると、新興国を含めた形での経済・社会安全保障理事会の設立や、環境問題 にかかわる新たな国際機関の創立や、水資源や教育へのアクセスを可能ならしめるIMFのような国際機関の設立等々である。

国際的な法・ルール作りについて述べると、それはサダ ム・フセインのような憎むべき体制にどう対処するかという問題ばかりでなく、どの程度のルール違反が危険につながるのかという尺度の問題を決めるべきであ る。もし今米国やその同盟国がやっている事が許されるならば、将来別の国が別の問題に対処するのに平和的な解決策をまったく採らないことにことにつながる かも知れないのである。継続する平和とは、我々に脅威をもたらす連中と妥協するという恥じるべき行為とは違うのである。

これは国際関係において予防的措置という理屈で軍事的 に他国を一方的に攻撃する権利を意味してはならない。国際法はイラク戦争後も国連の決定のもとにイラクの領土の保全とイラクによる行政は尊重されるべきで あるとしているのである。

この戦争とその形成過程における二番目の教訓は、ヨー ロッパ統合の建設を強化し欧州防衛軍を早急に作らなければならないという事である。

たしかにヨーロッパにおいて世論のすべては戦争反対で あったが、それがもっと容易に表明されるようにしなければならない。各国政府レベルでは大きな分裂が存在したのである。ヨーロッパは戦争を防止できなかっ た事で、ヨーロッパはその脆弱性を露見させた。このような状態では、ヨーロッパの統合はおろか、ましてや軍事的統合などは自然に出来上がるものとは期待で きないし、難渋する事になろう。

この戦争は、ヨーロッパが政治的統合に拍車をかけ、一 刻も早くもっと民主的でもっと統合されたヨーロッパ連邦とならねばならない必要性を示したものである。しかしこれは25カ国全部ですべての分野ですべての 国を対象に同じリズムでは実現できないように見える。

この理由により、他国よりも速い速度でそれを実現する 意欲がありまたそれが可能な国々だけで構成する「前衛」が必要になってくるのである。欧州防衛軍の実現にはこのような方法が絶対に必要である。ユーロの成 功の次は社会的なヨーロッパの統合であり、これが進むべき次の大きなステップとなる。

ヨーロッパの声が、アメリカのそれに比して、十分聞き 入れられなかったのは、ヨーロッパが分裂しており、統合された防衛軍(システム)がなかったからである。これがない事がヨーロッパの分裂を引き起こし、 ヨーロッパがグローバリゼーションを制御する事を出来なくしているのである。

イラク紛争においては旧ソヴィエット・ブロック諸国が アメリカ寄りの立場を取ったのは、彼等の歴史的理由によるもので、NATO(NATOの役割は再吟味する必要があるが)が、彼等にとって唯一の軍事的な防 衛であるという事実にもよるが、それ以上にヨーロッパ防衛軍が存在しない事が理由である。彼等を叱るのではなく、彼等を理解してそれに答えなければならな い。新しい国際主義とは、権利を尊重するばかりではなく(これは現在やっている事だ)、法に対して脅威となるものがあれば、武力でこれに対するものでなけ ればならない。今現在ヨーロッパはこのことが出来ていない。

欧州防衛軍の創設のために、フランスとドイツは早急に その基礎を作らねばならない。もし外にそれに参加したい国があれば、イギリスであれスペインであれイタリアであれ、参加して貰う。もしこれがないと、一方 的一国主義は、今日は米国のものであるが、明日はロシアか中国が外の選択肢がないまま同じことをやることとなり、世界の安定に対する大きなリスク要因とな るであろう。なぜなら今示されたように、いかなる国と雖も一国だけで安定的な平和を作り出すことは、十分な正当性を持ち得ないし、その力もないからであ る。

この紛争のもう一つの教訓は、世界の安全保障は寛容と 連帯なしでは達成できないという事である。安全保障とは単に軍事的なものだけではない。南の諸国との連帯、飢餓との戦い、貧困と疫病との戦いは、世界的な 責任である。この連帯という概念は、金融、健康、教育、環境、農産物貿易などのすべての国際分野において適用されるべきものだ。これらの問題は「文明の ショック」というような戦いにより解決されるべきものではなく、連帯によって解決されるべきものである。このビジョンは、例えば最貧国の債務帳消しや、す べての人々に「世界的公共財」へのアクセスを認めるとか、そのようなことにつながってくる。このビジョンは、マーシャル・プランのように、かつてのアメリ カにおいても共有されたビジョンである。

最後にもう一つ述べるが、このイラクとの悲劇的な紛争 がイスラム・アラブ社会の強い反発を呼び起こすきっかけとなるリスクが相当高いという事を強調しなければならない。彼等の大多数は、まずイスラエル・パレ スティナ問題の解決を希っているのであり、かれらを西欧社会と対決させるような無分別な争いを望んではいない。

不幸な事だが、大規模な動乱に発展する可能性がある。 我々は連帯が平和の別の言葉である事を理解し示さなければならない。これらのイラクとの戦争の最初の教訓から学ぶ事が、われわれをして西欧と東洋の融和と 接近を実現させるための条件となるだろう。

ローラン・ファビウス、元首相

ARTICLE PARU DANS L'EDITION DU 29.03.03


Posted: Sat - March 29, 2003 at 10:11 AM           |  


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