なぞなぞ(経済学系):人は何のために遺産を残すのでしょうか?


昨日の日経「経済教室」で一橋大学の国枝繁樹氏が興味深い論文を書いておられる。経済格差を是正するための資産課税の在り方の議論には、遺産動機の分析研究が欠かせないというのだ。その動機次第で、適用される課税理論は別のものになると。メモ。

遺産動機と課税の考え方:
  1. 「偶発的遺産」。親が子供のことを考えて遺産を残すのではなく、自分の老後のために貯蓄してきた資産が不慮の死により残されたとする考え方。その場合は、相続課税により親の効用は変化しない。100%課税が望ましい。
  2. 「利他的遺産動機」。親が子供の幸せを自らの幸せの一部と考えて遺産を残すという考え方。無期限期間生きる経済主体の場合の最適資本所得課税の理論を適用するべき。
  3. 「贈与の喜び」。親が子供の幸せそのものより遺産を残す行為自体から自らの効用を得るという考え方。遺産を残すことは一種の消費であり、最適間接税理論の適用が望ましい。
  4. 「戦略的遺産動機」。親が子供に遺産を残すことと交換に、子供から介護サービスなどを期待するという戦略的な動機。この場合、遺産は介護サービス提供の対価であり、相続税は労働所得課税となる。対価として過大となる場合は、その部分について重課とすることが望ましい。

もちろん、実際にはいろんな動機が混じっているわけで、一つに絞ることは出来ないだろうが、とても新鮮な議論だ。知的刺激に富む。

散人なりにもう一つの「動機」を付け加えるなら、「守銭奴動機」。体力と知力が衰えた老人にとっては、資産だけが自己のパワーを表すものとなる。更に死後も残した遺産によって、子孫から尊敬を勝ち得たいと考える。一番最初の「偶発的遺産」に似ているが、お上に全部取り上げられてしまうと、親の死後の名誉がなくなる。魂は永遠だとする宗教観もからんでくる。この場合、どういった課税理論の適用が望ましいのだろうか。暇だからちょっと考えてみるか。

Posted: Sat - October 22, 2005 at 11:09 AM           |  


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