視点:日本は法治国家ではないのか?


今朝の小泉内閣のメールマガジンでも小泉首相はイラク人質五人に対する批判を繰り返した。福田官房長官も国会で更にきつい調子で執拗に五人は無責任であったと批判を続けている。マスコミも国民の多数はこの政府論調に同調しているようで、野党の反論も世論を気にしてか腰が退けているように見える。でも彼等五人は日本のどの法律を犯したというのか。法律に違反しない人間を政府が攻撃し法律以外の手段で罰することはリンチに等しいし、イラク問題の本質を拡散する目的を持ったものだとしか言い様がない。国民は人質事件の「人質」となるのではなく、もっと重要な問題を議論するべきである。

今朝の小泉内閣メールマガジンで小泉首相は「日本国民がどこに住むのか、どこに行くのか、憲法で保障された自由があります」とし、だから渡航禁止命令や強制退去命令は出せなかったと「もう一段踏み込んだ措置をとるべきではなかったか」とする批判をかわした。散人は憲法の規定の中でも「もう一段踏み込んだ措置」は充分とりえたとの認識を持っているが、その問題は置いておいてあの時点で渡航禁止令が出されていなかった以上、この五人は小泉首相の言うように「憲法で保障された自由」を行使したに過ぎない。一切違法な行為はしていないのだ。

人質家族が「自衛隊を撤退させてほしい」と言ったことが問題視されているが、これにしても彼等の政治的主張を述べたものにしか過ぎない。憲法で保障された表現の自由である。なんら問題視されるべきものではない。まして人の親であれば当然の発言だ。

「みんなに多大の迷惑をかけた」として批判されるが、日本国民の生命財産を守るのは政府の義務であり、行政の責任である。もちろん出来ないことはやれないわけで、何も政府に不可能なことをやれと言っているわけではない。出来なければ(出来なかったことに対する能力不足は批判されるにしても)それでいいのである。「迷惑をかけた」はないだろう。現に後で解放された人質二人は「自分たちの力で脱出した。日本政府には何も迷惑をかけていない」と発言している。

それがどうしてこういう個人の責任問題に発展するのか。結局彼等の行動で「日本国の政策遂行に対して重要な支障を来した」というのだろう。しかしこれは「与党の政策」であり、それに対する反対意見は当然あって然るべきである。彼等五人は体を張って与党の政策が間違っているということを証明したかったのかも知れない。またそれが小泉内閣が一番腹を立てている理由だろう。腹を立てるのもまた自由であるが、それは堂々と国会の場で政策論として議論するべきことであり、違法な行為をしていない人質個人に対するデマや中傷を流したりして国民を扇動したり、行政権力を利用して五人に圧力をかけたり、いわば法律の枠外でのリンチのようなやり方は文明国のものとは思えない。

日本国は法治国家である。法律に基づいて粛々と物事がすすめられるべきだ。

いまイラクに派遣されている自衛隊をとりまく客観情勢は「イラク特別措置法」で定められた「非戦闘地域」という派遣要件から明らかに逸脱しているように思われる。重ねて言う。日本は法治国家である。法律は守られるべきであり、まさにいまこの議論をすることが一番重要である。小泉内閣はこの議論を避けたいばかりに人質バッシングという次元の低い問題に国民の注意をそらしているのではないか。

Posted: Thu - April 22, 2004 at 03:08 PM           |  


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