2003.06.25
視点「イラク以降のアメリカとどう付き合うか」
昨年からイラク問題についてはルモンドの翻訳をすることで丹念にフォローしてきたが、やはり現実はルモンドが言っていたように進行している。アメリカの独りよがりの善意の押しつけが世界に新たな混乱をもたらしているのにアメリカはそれを理解できない。更に、アメリカの行動が生むネガティブな結果以上に、そのプロセスが大きな問題を含んでいることも分からないようだ。しかしアメリカ人とは外部からの批判には耳を貸さない国民である。住みにくい世界になってしまった。その中で我々日本人はどうやっていけばいいのか。尾っぽを振ってアメリカに迎合するのは格好が悪い上に危険。斜に構えてシニカルなスタンスをとるのがいい。
昨年11月ルモンド紙の記事翻訳をはじめたのはあくまでも忘れてしまったフランス語の勉強のためであったが、そのうちにイラク問題が紛糾しだして俄然この問題について取り上げることが多くなった。いま振り返ってみて感心するのはルモンドは実に正確に世界を読んでいたと言うこと。状況分析は常に客観的で正確であったし、その後の展開もまさにルモンド紙が警告した通りとなっている。日本のマスコミ事情と引き比べ、このようなクオリティーペーパーを持つ国民は幸せであると羨ましく思う。
ともあれアメリカの独善的な行動がイラク問題でどのような結果を生み出すのかとは別の問題として、その行動プロセスに非民主的且つ非合法的なものがあったことは否定しがたい事実である。この点についてアメリカ、イギリスでも国内世論の高まりが見られることは歓迎すべきことだ。しょせんアメリカ人とは外部からの批判には耳を貸さない国民であり、内部の自浄作用に期待するしかないからだ。でもこの内部からの批判が、いまだに戦争気分が支配するアメリカ社会でどれだけ効果を発揮するのか未知数だ。ますます独善的に凝り固まると言うことも考えられるのである。
問題はこのようなアメリカを所与として今後世界はどう動いて行くのかである。ネオコン連中はこれこそ望ましい世界秩序であると信じているし日本人でもこの考えに同調する輩が多い。悪い奴らはどんどんアメリカさんにやっつけてもらって日本はその傘の下で繁栄を続けることが出来るというのだ。国連の官僚主義やヨーロッパのエリート主義に対する反発もあるのだろう。日本ではアメリカ(ネオコン)をヨイショする太鼓持ちが増えている。でもこういう態度は決して日本の長期的な国益に沿うものではないように思う。
確かにアメリカは軍事力では世界を圧倒する実力を持っており、一国だけで何でも出来る。これは事実である。こと軍事作戦に関してはアメリカにとって多国間協調は必要ないどころか桎梏的なものですらある。しかしこれは主権国家を相手にした軍事作戦でのことであり、相手が無名の草の根的なテロリストとなるとベトナム戦争を思い出すまでもなく話は別だ。イギリスはいまだに北アイルランド問題に悩んでいるし、スペインのバスク問題にしても然り。巡航ミサイルで勝てる相手ではない。ネオコンはテロリストを支援する国家を次々と叩いて行けばテロリストは封じ込めるとの考えだが、テロリストを支援するのが個人であればどうか。オッサマ・ビン・ラディンは自分のお金で動く自前のテロリストだ。今後国家という後ろ盾のないこのような「自家営業」テロリズムが跋扈する世界になるように思う。それに対しては軍事的超大国も無力だ。
加えてもう一つ大事なことがある。アメリカは軍事的には超大国であり、産業面でもそうだ。しかしマクロ経済的には大国ではあるにしても決して超大国ではないのである。ISバランスが巨額の赤字であり、他国の貯蓄を当てにしないと成り立っていかない経済である。アメリカは経済的には一国主義をとりたくてもとれない。
こういう制約を考えれば、将来の世界は単純なアメリカ人が思い描くようなユートピアとはならない。アメリカの「善意」はあちこちで否定され、行き詰まり、アメリカ人は「よかれと思ってやっているのに何故理解されないの」というフラストレーションを感じ続けることになるだろう。まさに戦後の古典的パターンの繰り返しだ。結局アメリカは伝統的な孤立主義に回帰せざるを得ないと見る。アメリカの歴史は国際主義と孤立主義(引きこもり主義)の繰り返しだ。そのような循環はもはや無くなったと論する人が多いが、主人公であるアメリカ人(なかんずく中西部の田舎もの)の考え方は昔と同じである以上、性懲りなく繰り返すと考える方が合理的だ。
こういう状況の中で、我々日本人はどう行動すればいいのか。短期的にはメリットもある。アメリカを適当におだてておけば「意気に感じて」いろいろな問題を「外科的に」解決してくれるかも知れない。でもそれが長期的な解決となっているのかは別問題であるし、上にも述べたようにアメリカの独善主義は、やがてアメリカ自身が国際的コミットメントを縮小しようとする孤立主義に逆転する可能性があり、それまで一緒に行動してきた友好国のハシゴを外しまくるというかたちで終わるかも知れない。そうなれば日本はアメリカの独善主義がもたらしたアジア的カオスの中で一人取り残されることとなる。
中国はその点賢い。狡賢いとも言える。イラク問題では決してアメリカを支持することがなかったが、それでもアメリカを敵にすることはなかった(中華街の中国料理店が「フリーダム飯店」と改名させられた話は聞かない)。尻尾を振って一心同体を強調しなくとも、むしろそれが逆に、アメリカの尊敬を得ることにつながっている。
おべんちゃらは格好が悪い。日本はもっと斜に構えるべきだと思う。馬鹿なアメリカ人の考え方は我々が正面からそれを批判しても変わらないが、冷笑は有効である。「笑いは武器である」とは、確かアリストテレスが言った言葉だと思うが・・・。
Posted: Wed - June 25, 2003 at 11:45 AM
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