『壁抜け男』(マルセル・エイメ/中村真一郎訳)


かなり古い本だが、今年になってまた改訂版が出されている。何度読んでも面白い。


壁抜け男
壁抜け男マルセル・エイメ 中村 真一郎

早川書房 2007-01
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おすすめ平均 star
star60年ものの熟成短編集

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エイメの短編集である。最初の短編「壁抜け男」は、ある日突然「壁を通り抜ける能力を持つ」という「病気」になってしまった小役人の話。でも彼はこの「能力」をどう使っていいか分からない。せいぜい嫌な上司に嫌がらせをするぐらい。新聞などを読んで、この「能力」の使い方を研究する。

定年になって、ある日突然「有り余る時間」という従来特権階級の人間しか持つことができなかった「貴重な資産」を手に入れたものの、どうやってその「資産」を使っていいのか分からずハウツー参考書なんかを読んで勉強する団塊の世代に似ている。

収録されている短編は戦中戦後に書かれたもの。食糧難の時代だけあって、食い物の話しが多い。同じ戦中飢餓世代である中村真一郎がわざわざそういう短編ばかりを選んだのかも知れない。当時は自由に貿易ができなかったからどの国も飢えた。見ているだけでお腹が一杯になって栄養も摂取できる「絵画」の話しもある。フランス政府はこの絵画を食料対策の切り札として国有化する。

食料自給率(食糧安保)対策だけなら、農村バラマキなんかにお金を使うより、万が一の時に備えてこういった「工業食品(クロレラなんか)」の量産体制を整備しておくだけで十分かも知れない。

Posted: Sun - May 27, 2007 at 01:58 PM           |


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