芥川賞「ひとり日和」の作者青山七恵とサガンと慎太郎


二三日前のテレビで、今年の芥川賞受賞作家青山七恵の憧れの作家はフランソワーズ・サガンだったってことを聞いた。石原慎太郎も青山七恵を絶賛しているらしい。なんだ、これは「バッド・レファランス」じゃないのかと思って、確かめるために文藝春秋を買って読んでみた。その結果の印象、青山七恵はサガンや慎太郎より、いいんじゃないか。

文藝春秋では石原慎太郎は「大器早生だ」なんかといって、若くして芥川賞を取る作家こそが才能だと牽強付会していたが、サガンと慎太郎は、当時の社会的タブーに挑戦すること(具体的に言うとセックス)で一挙に有名になったにすぎない。サガンはそれに加えて「虚無感」という「ナウ」なフィーリングに訴えたが、慎太郎はどうだったか。せいぜい「金持ちのどこが悪い」というポリティカリーコレクトネスへの挑戦があった程度。どちらもその後はパッとしなかった。だったら今年の芥川賞作家もそうなのか、と思って確かめたかったのである。結果、青山七恵は結構面白いと思った。

セックスの扱いについて。青山七恵は性描写を単に「セックスをした」という簡潔な表現で済ましてしまう。慎太郎やサガンのセックスに対するこだわりはない。これがすごく新鮮。驚いた。細かい描写も優れているし、いろいろ絵画的な表現がある。読み続けているうちにどんどん共感して引き込まれてしまう。これは慎太郎なんかより、はるかにいい。

面白かったのは、人間関係の描写。高齢者と同居することになって、21歳のフリーターの女性主人公は、老人との同居にある種のとまどいを感じながら、そんなことはどうでもいいという感覚も強く、相手をまるで無視しながら、結局、老婦人との濃厚な人間関係を築くことになってしまう。これはとてもいいテーマだ。人間関係というものの深層をよく描いている。それに対するはっきりと意識した感性がある。慎太郎とかサガンとかとは違う。

青山七恵さん、今後とも頑張ってください。期待します。

Posted: Mon - February 26, 2007 at 08:49 PM           |


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