安達正勝『フランス反骨変人列伝』……抱腹絶倒。太陽王に妻を寝取られた侯爵が考えた復讐とは?


フランス文学者の安達正勝が書いた真面目な本。フランス史には正史には滅多に登場しない魅力的な奇人・変人があふれているという。彼らに共通しているのは、自分の生き方に徹した反骨精神であり、どこか時代を超えた普遍性があるという。で、掲題の話。

ルイ14世の時代、王様の権力は絶対だった。貴族の奥方にとっては王様の愛人になるということは名実共にとても名誉なことだったらしい。奥様を王様にとられてしまった亭主の方にも有形無形の見返りがあるので見てみないふりをするのが粋だったらしい。ところがモンテスパン侯爵はかんかんに怒って王様に復讐を考える。彼はいろいろ考えるのだが、その一つがケッサク。原文によれば:
モンテスパン侯爵はせっせと娼家に通い始めた。パリには娼家はたくさんあったし、相手は誰でもよかった。性病に感染することだけが目的だったのだから。片っ端から娼婦と関係を持ち、ついに性病にかかることに成功した。
今度は妻と寝るのだ。妻に病気を移す。そうすれば、国王に感染するだろう。威勢並ぶ者なき全能の国王といえども、性病にはかかる……これが、侯爵の読みだった。

ところが可哀想にモンテスパン侯爵は、奥様と強引にことに及ぼうとしたものの奥様に逃げられてしまうのだ。復讐ならず。でも侯爵はまだ諦めない。

この他、詩を愛した殺人者の話とか、ネー将軍の不器用な生き方の話とか、死刑制度反対を訴えた死刑執行人(世襲制)の話とか、いろいろ面白い。

現代日本には、変わった生き方をする人もいないこともないが、どうもどっかで読んだようなマニュアル通りの生き方という感じがあって、変人・奇人とはちょっと言い難い気がする。だから社会が面白くならないのだろうか。

本件とは関係がないが、ワーテルローの戦いについて次のような文章が目についた。目からウロコ:
(エルバから帰ってきた)ナポレオンは和平の提案をし、フランスは平和以外の何ものも望んでいないとヨーロッパ諸国に伝えたが、相手は「ナポレオンは法律の埒外にあり、人類の敵である」と宣言。(中略)ナポレオン打倒のために列強は一致結束し、数の力、兵力の圧倒的な差でナポレオンを叩きのめした。これが六月十八日のワーテルローの戦いが意味するものである。

ワーテルローの勝敗について、前日ナポレオンがもうちょっと休養をとっておれば勝てたかも知れないなどと言う「イフ」はなかったようだ。

フランス反骨変人列伝
フランス反骨変人列伝安達 正勝

集英社 2006-04
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Posted: Mon - May 15, 2006 at 05:58 PM           |  


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