ブローの中はスターボードタックで走れ!


いま読んでいるフランスのセーリングの教科書(Voile : Les Trucs des Pros)から。恥ずかしながらこれは知らなかった。地球物理学的に実証されているとのこと。こんなこと知らなくても根性さえあればレースに勝てる、とか言う「精神論」が今までの日本のスポーツ界には多すぎた。他の分野でもそうではないか?

何でこんな本を今頃読んでいるかというと、カミさんとヨットに乗りたいから。ヨットの基本は言葉。ヨット部の新入部員は無数の「術語」をマル憶えさせられることから訓練が始まる。日本では全て英語が使われるのでそれが国際的に通用すると思っていたが、フランスでは通じない。これではコミュニケーションが成り立たないので、フランス語のヨット術語を憶えようと思って買った。でも、その内容にびっくり! 基本からすごく高度なことまですべて「ドリル式」で書いてあるのだ。

たとえば掲題の命題のくだりは次のようなもの:

大きな湖でのセーリング、風力3,青空には積雲、ブロー(突風)が定期的に吹く、この場合の風上に向けての間切りの基本戦略は次のどれか?
  1. ポートタック(左舷開き)で走っているなら、ブローが来るとタック(右舷開きにする)。
  2. スターボードタック(右舷開き)で走っているなら、ブローが来るとタック(左舷開きにする)。
  3. 何もしない。また風が振れれば同じことだから。

正解は、1。コリオリの法則により北半球では気流は常に右に振れる。ブローは右に振れていることが多いので、ブローの中ではスターボードタック(右舷開き)で走ると、確率的に風上への「高さ」を稼げる。

散人の動物的な経験によると、ヨットでの「勝負タック」は常にスターボードタック(右舷開き)であった。このタックの方が気持ちがいい。散人はこれは単なるルール上の優先タックであるからと思っていたが、そうではなかったのだ。科学的な根拠があったのである。

これを読んで、正直愕然とした。そんな理論は知らないままに何十年も生きてきたのだ。そういえば、理学部の先輩がそんなことを言っていたような気もするが、所詮彼はそんなに走らなかった(レースでは勝てなかった)ので、みんなから無視されてしまい「風は首筋で振れを予知するのだ」という動物的感覚が優先されてしまった。

ヨットの戦術論はともかく、このことはとても示唆的。経済学でもそうだ。むかし会社に入ってから、アメリカのマクロ経済学の教科書を読んだことがあるが、驚いた。全て「ドリル式」であったのだ。徹底的に、状況の変化がどういう結果をもたらすのか、公文式でたたき込むものだったのだ。「金利が上がれば債券価格は下がる」など、学生は条件反射的に覚え込むことが期待されている。だから彼らは対応が早い。日本の大学で経済学を勉強した人は、なんか難しい理論にへんに詳しいがゆえに、反射神経に劣っていると思う。ああでもない、こうでもないと考えすぎてしまうのだ。

医者の世界でもそうだと、ある外科医から聞いたことがあるが、それは散人の専門外であるので言わない。

問題が拡散してしまった。セーリングは科学。今日はこれを勉強したのだ。科学的な理論は、やっぱり重要だ。l

Posted: Fri - August 26, 2005 at 06:06 PM           |  


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