3/17 Today 永井荷風、放水路の風景を発見 (1936)


昭和11年3月17日、荷風は東京の風景の日に日に俗悪になっていくのに嫌気し、午後遅くたまたま浅草から東武電車で西新井に向かい、そこで荒川放水路に出る。その茫漠とした風景に荷風は何とも言えぬ「美」を見いだす。荷風の名随筆「放水路」はこうして生まれた。

この日の『断腸亭日乗』:
途上放水路の鉄橋を渡り、小菅を過るや、りゅう圃水田相つらなり、野水また屠々たるを見る。所々生垣を結ひ回らしたる農家あり。・・・・田園の風景甚佳なり。・・・・橋の南は荒川の放水路の堤防に接するを以て一望廣然、水天しょうぼうの観あり。



この風景がすっかり気に入った荷風はその後4回にわたり放水路を訪れ、翌月14日には「放水路」を書き上げる。茫漠たる放水路の風景の中に消え入りそうになってしまうひとりの孤独な老人の心情が見事に描写されている名随筆である。これで調子を出して秋には玉の井を舞台に圧倒的な名作『濹東綺譚』を書き上げた。この年荷風散人は57歳。世間からはすでに過去の人と見られていた老大家荷風の大ブレイクの年となった。

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(再掲載)

Posted: Mon - March 17, 2008 at 06:00 AM           |


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