10/18 Today ゾルゲ逮捕
(1941)……ゾルゲに学ぶ情報分析術
昭和16年10月18日、ゾルゲ、スパイ容疑で逮捕される(ゾルゲ事件)。ゾルゲとは「歴史を変えたスパイ」とたいへん評価の高いスパイだ。彼のやり方はどんなものだったのか。
ゾルゲは戦前の日本で活躍したソ連のスパイ。日本の「機密情報」をソ連に流していた。得意分野は政治情報。当時の日本は日・独・伊同盟を結んでいたが、ドイツはソ連に宣戦布告。ソ連は西からドイツに攻められる一方、いつ背後から日本が攻めてくるか、たいへん心配していた。満州には強大な関東軍が布陣していたからだ。日本はどう出るか、これがスターリンのいちばん知りたいところであった。まさにその時、ゾルゲはソ連に「日本は対ソ参戦の意志なし」との機密情報をキャッチしてモスクワに打電。この情報に接しスターリンは日本軍の侵攻に備えてシベリアに展開していた赤軍を直ちに西部戦線に移動。おかげでナチス・ドイツ軍の侵攻を食い止めることが出来たのである。シベリアからの兵力補充がなければモスクワはドイツ軍に占領されていたところだった。モスクワを占領されればスターリン体制はもたなかった。かなり前になるが、アメリカかどこかで「歴史を変えたスパイ」は誰かとの選考があり、ジャーナリストからの投票でゾルゲが堂々一位に選ばれた。ゾルゲの情報がなかったら多分スターリンはドイツに負けただろう。その後でドイツと日本が英米に負けるのは歴史の必然だったが、ソ連が負けずに存在していたか存在していなかったかでは、第二次世界大戦後の世界史は全く違ったものとなっていただろうと言うもの。ゾルゲがつかんだ情報とはそれほど重大な意味を持っていたのである。ゾルゲ事件には後日談がある。裁判でゾルゲは自分はスパイではないと主張したのだ。理由はゾルゲは公開資料しか利用しなかったというもの。実際に彼のやり方は徹底的に公開資料を集め分析するというやり方だったらしい。新聞雑誌で誰がどのような考えを持っているかを分析し、政治的影響力を測り、合理的に「対ソ参戦の意志なし」との結論に到達したのである。もちろん尾崎秀実などの協力があった。でもこの主張は聞き入れられるわけもなくゾルゲは処刑される。この話は情報収集のやり方にたいへん参考になる。現在においても、公開資料を軽視し「特別の耳寄りの情報」にだけにすがる人が多いが、そんなものは情報収集とは言えない。情報収集とは、一にも二にも、新聞雑誌からなのである。もう一つ格言を。情報の価値とはどうして計るか。情報の価値はそれによって生み出された行動の大きさによって決まるものなのである。ゾルゲの情報でスターリンが動かなければゾルゲの情報の価値はまったくなかったこととなるし、今川義元の居場所の情報を聞きながら織田信長が桶狭間に突撃しなかったら、あの間者の情報も無意味であったからだ。行動しない人に情報を与えても意味がないのである。
(初出:2003.10.18)
Posted: Thu - October 18, 2007 at 09:12 AM
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