「高い牛肉」の作り方、高い子牛と高い飼料による長期肥育、世界一の配合飼料メーカー全農がこれで儲ける(立花隆)


立花隆『農協』第9章。なぜ日本の牛肉は高いのか、緻密なデータによる日米比較。わざわざ高い牛肉を作ることを指向していることが問題だという。その中で限りない無駄が生じている。ショック。

抜き書き:
  1. 日米牛肉の生産費、小売価格のブレークダウン比較表(これはすごいデータ)。流通コストの問題だという俗説があるが、とんでもない間違い。日本の牛肉が高い元凶はまぎれもなく、生産費の高さにある。
  2. なぜ日本の生産費は高いのか。労働生産性の違いもあるが、見落としてはならないのは、アメリカの肥育期間が短いこと。アメリカの典型的な例は、 272キロの子牛を六ヶ月肥育して477キロにして出荷するもの。月当たりの増体重は34キロ。それに対して日本では、277キロの子牛を入れて577キ ロにするのに平均18ヶ月かけ得る。月当たり増体重27キロ。
  3. 肥育期間が長いことは飼料代に影響する。牛一頭の年間飼料コスト16万円。おまけに日本の配合飼料は高い。日本の配合飼料の原料はカナダから輸入 されるのでアメリカより安いが、生産者に渡るときにはアメリカよりはるかに高くなっている。全農が配合飼料の生産をほぼ独占しているためだ。全農は世界一 の配合飼料メーカーとなっている。全農他の農業団体で配合飼料で上げる利益は事業純利益ベースで軽く100億円のオーダーになる。
  4. 日本の肥育期間が長いのは、肉にサシ(脂肪交叉)を入れるため。その方が高く売れるからといって肥育効率を無視している。
  5. 飼料代を安くするには自家配合することだが、農協はその指導をしない。自分の配合飼料が売れなくなるから。配合飼料の工場はアメリカの専門家によれば非常に非効率的。競争がないから改善しようとしない。苛烈な競争があるブロイラー用配合飼料とは大違いである。
  6. アメリカでは配合飼料への依存は少なく、コーンなどの収穫跡地を利用した放牧がよく行われる。牛糞が肥料として畑に還元される。さらに豚を混牧することで徹底した資源活用がなされ、コストダウンがなされる。はるかにエコロジカルである。
  7. 日本でもアメリカ式の放牧により牛を飼っている人もいる。アメリカ並みとは言わないまでもアメリカの二倍ぐらいのコストで生産可能(日本の牛肉生産費の半分以下)。長崎県の五島列島の人。でもそのやり方では農協から補助金が出ないし融資も出ない。
  8. 宮崎県の農家では実際にアメリカ式で山間放牧をし、実際に輸入肉に近い価格で生産している人もいる。この人はこういう「子牛が高いのは、人手をか けすぎるのと、購入飼料を食わせるからです。産地や草地を利用した放牧で自然繁殖させれば、一頭十万円ぐらいまで下がって牛肉も豚肉並みにすることが出来 る。いま充分に活用されていない公営牧場が日本に15万ヘクタール、国は草地造成をしたところが40万ヘクタール、その他、里山、国有林などで林間放牧可 能なところは全国に無数にある。国のやる気一つで安い子牛は出来るんです。国も、農協も農民も、そのやる気を出さない。そこに問題があるんです」
  9. 農業関係者は、口を開くと直ぐ農業は国民のためであることを力説するが、こと牛肉に関しては、一般国民のためというよりは、100グラム千円の高級肉が食べられるような大金持ちのための農業を上から下まで目指しているのが現状である。

こ の林間放牧については、たしか1982年頃に「文藝春秋」で読んだことがある。当時散人はベネズエラにいたが、そういわれてみるとベネズエラでは30度ぐ らいの急勾配の斜面に牛と羊が大量に放牧されている。もちろん自家配合の飼料も組み合わせているのだが飼料代は格段に安くなる。森林の下草を牛が食べるの で林業にとってもメリットがあるという。どうして日本じゃやらないのか不思議に思ったが、この本を読んでようやくわかった。それをやると全農の配合飼料が 売れないからだ。彼等の経営方針は明か。農業部門内部での留保付加価値を合計で最大にすること。ツケはすべて消費者に回る。

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Posted: Sat - September 18, 2004 at 04:05 PM           |  


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