22兆円の資金量を誇る農協信用事業に頻発する金融事故(立花隆)……総合事業会社化しつつある農家


立花隆『農協』第14章。滋賀県信楽農協の金融事故のケーススタディーだが、内部監査のいい加減ぶりがよくわかる。個別の話も面白いが、今回はむしろ農協信用事業全体の巨大さに注目したい。農家の収入に占める農業以外の収入の割合が急速に増えているのがわかる。

抜き書き:
  1. 農家が農協に貯金すると農協はこれを組合員に貸し出したり、有価証券で運用したりするが、それで余った分は、各県に一つずつある信用農業協同組合連合会(信連)に預けられる。信連でもこれを貸し出したり運用したりして、余った部分は農林中央金庫(中金)に預ける。
  2. 農林中金は、農協ばかりでなく漁協、森林組合の資金も集めるが、現実にはほとんどが農協の資金(22兆円)。債券発行が認められている。独自の根拠法を持つ。
  3. この22兆円という額は、日本全国の相互銀行を併せた資金量にほぼ匹敵する。日本最大の資金量を持つ郵便貯金のほぼ半額。
  4. 農林中金の資金量約10兆円は、第一勧銀を抜いて日本一。農林中金は日本一の銀行であるばかりか、各県の信連もその地方の金融機関ランキングで常に二位か三位にランクされている。
  5. 農林中金は非営利団体でありなるべく儲けが出ないように経営されているが、それでも信連の申告所得をトータルすると約830億円となり、日立製作 所、野村証券レベルである。農協も入れた信用事業全体の総利益推計は、実に5300億円という額となり、申告所得日本一のトヨタ自動車の倍以上となる。
  6. もともとは農民の相互融通を目的とした事業だったが、高度成長期に爆発的に資金量が増えた。この巨額資本蓄積の原資はなんであったか分析したのが 下のグラフ。高度成長期に入ってから、農業収入に代わって、農外収入と土地代金に主役が移った。貸出金に占める農業資金の比率はずっと3割を割ったまま だ。
  7. 二種兼業農家が7割近くになり、農家所得の農業依存度が3割を割るという日本農業の構造変化が農村金融にもそのまま反映されている。
  8. 農協信用事業の次第の問題は事業の急成長に伴わぬ人材不足にある。つまみ食い、横領などの事故が多発している。


高度成長期に農家の大規模のな「土地成金化」とその資金を使っての農業 以外へのビジネス展開が如実にわかる。これだけ広がりと資金力を持ている農村の問題を考える際、農業単独で議論しても全体を見失うことは明かである。農家 は新しい資産家階層を形成しつつあり総合事業会社化しつつある。

Posted: Wed - September 29, 2004 at 02:15 PM           |  


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