長野県経済連の青果物情報オンラインシステムと低温流通システム(立花隆)


立花隆『農協』第12章。野菜生産・流通に関するデータ豊富。効率的な流通を行っている長野経済連とその分野を支配しようとする全農の野望。全農は野菜流通においてもいよいよ巨大独占企業化するのか?

抜き書き:
  1. 長野県塩尻市の洗馬農協。ほとんどが野菜農家。コメはせいぜい10アール当たり十万円程度(所得)だが、野菜は10アール2ー30万円というのはざら。5ー60万円になるのもある。
  2. 労働時間を長く投入できるのが強み。10アール当たりコメは72時間だが、野菜は900時間。コメ生産の問題は時間が余ってしまい余った時間にす ることがないという点だが、野菜はそんなことはない。時間当たり労働報酬は稲作では一日(8時間)当たり全国平均7000円だが、キュウリは5000円 (長野)。でもキュウリの方は十倍以上働けるから所得ははるかに大きくなる。(散人註:要はコメ農家は遊んでいると言うことですね)
  3. もっとも野菜でもキャベツ、白菜、レタスなどは稲作と同じ程度の労働時間でよい。でもコメより所得がよい。成長が早いから年三作が可能。1ヘクタールの稲作農家は食べて行けないが1ヘクタールに野菜で輪作すると食って行ける。
  4. 洗馬のばあい、平均2,3回転。冬はたっぷり休める。こたつ番。「東京でサラリーマンをやっている息子もこっちの方が良い収入になるから、戻ってきて跡を継ぎたいと言っているんですよ」と中野さんという人。新築豪邸がぞろぞろ。
  5. 長野県の場合、標高差を利用した連続出荷が出来る。東京、名古屋、大阪ばかりでなく、最近では遠く鹿児島まで出荷している。集荷は農協が行い、分 荷は経済連が行う。日本一の取扱高。生産の9割が農協に集まり、そのうちの9割7分が経済連に集約される。経済連のコンピュータを使った青果物流通情報シ ステムがすぐれているので有利な販売が出来るから。どの農協の荷物をどれだけどこの市場に以て行くかという個別の割り当てが瞬時に出来る。経済連の手数料 はわずか1.2%。
  6. 更に需要に応じて生産をきめ細かく行うシステム作りを目指している(種子まき日を一定面積ずつ細かく指定)。
  7. 低温流通システムの導入で流通過程での品質低下を防止(予冷出荷)。多量の真空冷却装置を設置。農家が収穫してから10分以内に野菜を冷却できる。コストはレタス一個当たり2円30銭。
  8. ところが全農がこれを自分にやらせろといってきている。全農には専門家が居らず、野菜の流通に全農が現在果たしている役割は極端に小さいが、全農としては肥料や農薬の購買事業で発揮したような統制力を野菜の販売事業でも発揮したいというのが長年の夢である。
  9. 東京で圧倒的なシェアを持つ東京青果(東一)は全農なんかにはとてもこの分野の仕事をする実力はないという。独占禁止法でアウトサイダーに対する差別行為を禁じられているので、全農も農民を強制することは出来ない。
  10. しかし全農も着々とこの分野に進出し始めている。北海道のホクレンの馬鈴薯とタマネギの分荷権を全農に委譲させた。続いて兵庫、香川、長崎など。農林省の強力な後押しを受けている。

何か自由経済の原則から逆行するような動きだ。これは、他の分野での全農の動きを見てもわかるように、決して消費者のためになりそうなことではない。

農協
立花 隆

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Posted: Wed - September 22, 2004 at 03:23 PM           |  


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