NHK地域発;どうする日本「誰が支える!あなたの食卓~点検・農業改革~


まさに混乱の極み:
NHK 地域発!どうする日本「誰が支える!あなたの食卓~点検・農業改革~」: "農業従事者の超高齢化、激増する耕作放棄地、先進国最低の食料自給率…。日本人の食を支える農業は今、崩壊するギリギリのところまで来ている。この局面を打開するため、2006年9月から始まった「農政改革」。国が目指すものは土地を集約し、競争力のある大規模農家をそだてること。揺れる各地の農村を徹底取材、現場からの声を軸に農業の明日を考えていく。
松岡農相も熱弁を振るう。でも。ニッポンの農業はまさに瀕死の状態。感情論から無理やり延命策をとるのが果たして正解なのか、考えさせられた。いったん潰してゼロから再建した方がいい。会社の再建と同じだ。

感想を二三:
  1. 日本の農政は負け戦を戦っている。どう見ても勝算はない。負け組に限られた資源を逐次投入して、決定的な負けを先延ばしにしているにすぎない。全盛期のローマ軍が一番嫌った戦法だ。このままでは国民の資源は無駄に浪費されていく。政治家はどうして当たり前の巨視的視点がもてないのか、悲しくなった。
  2. しかしこの事実をほとんどの国民は認識していない。今晩出演した二人のアホタレントはまさにNHK的ポリティカリーコレクトを象徴するもの。大桃美代子ともう一人の男性タレント(グッチ裕三というひとらしい)。NHKの人選だろうが、まさに感情論だけのコメントをまき散らしていた。NHKが誘導したい方向に沿ったものだろうが、こういう心情が日本を支配しているかぎり、合理性に基づいた国の発展はない。
  3. 里山中山間地の農業問題があった。日本の農地の4割を占める。松岡農相は里山中山間地で作られるコメは品質のよさでは世界一で「絶対に」負けないという。だったら自由化すればいいではないか。どうしてやらない。散人は昔ボリビアでインカ時代の段々畑を見たことがある。すでに耕作されなくなって数百年経っており、段々畑の遺跡はとても美しい風景の一部として自然に溶け込んでいた。ガイドにスペイン人が來たから段々畑の耕作が放棄されたのかと聞くと、「いやインカ帝国時代に、すでにあまりに生産性が低くなったので段々畑は放棄され平地での耕作に移った」との説明だった。ニッポンの農業はインカの農業より遅れているのだ。それを松岡大臣は無理やり擁護しようとする。時代錯誤というか、現実に目をつぶっているというか、これではどうしようもない。専門家が言っているように「どんなことをやっても中山間地の農業を守るのは難しい」のである。現実に基づいた議論が必要。
  4. 一応、集落営農についての矛盾も報道された。専業農家の伊藤さん借りていた農地の4分の一に相当する60ヘクタールを集落営農に切り替えることで儲けたいとする地主から返せと言われ、倒産の危機に瀕している。地主は、土日農業をやれば年8万円の収入だが、集落営農に切り替えるだけで同じことをしていて年43万円の補助金収入になるという。ニッポンの農民は今や利権の亡者に成り下がっている。欠如しているのは生産性の論理。一方、市役所に勤めながら兼業農家を続ける土日農家は集落営農を拒否してでも自分の日曜園芸を続けたいという。これは趣味の世界だ。
  5. 熊本大学の先生は「農家は経済のもとではなく、暮らしの中で農業を営んでいる」という。「作ったコメは縁故米として親戚に送られるのだ」という。「これこそが農家だ」と。冗談じゃない。農家に親戚を持たない都市住民はべらぼうに高い米価を自分で払っている。趣味の園芸で自分の家族と親戚のためにだけコメを作るなら、手前らの農地には宅地並みの課税をしないと不公平だ。
  6. NHKは、世界が干魃になり飢饉になれば、ニッポンの農産物が頼りだという。それこそ根本的に間違っている。中世以来、日本では数限りない飢饉が生じて何万人もの餓死者をだしたが、それは地域間の交易システムが十分に機能していなかったためだ。ニッポンの農業だけに頼っていることこそ、将来の天候不順の時に日本は膨大な餓死者を出す危険を負うことになるのである。その時になってはじめて外国に食糧供給を求めても今のニッポンがこんなエゴ丸出しのやり方を続けているのなら、誰も救いの手を差し伸べてくれないだろう。NHKはそれを知りながら国内利権者に媚びる報道をしている。救いがたい。

その他、外国産農産物を使っている中食産業に対する偏見に満ちた報道ぶりや、馬鹿タレントの思いこみに基づいた国産農業賛美の発言が理性的な解説を遮ってしまうのが目立った。NHKも、子宮ではなく、もっと脳細胞で考えて番組を作って欲しいものだ。

現代日本の農業を牛耳っているのは、当事者による自分の目先のエゴイスティックな近視眼的利益だけを追求し貰うことしか考えない「奴隷(農奴)の倫理」だ。鎌倉時代からの武士階級の原点であった自作農民の矜持はどこにいってしまったのか。やはり戦後の小作(農奴)に農地をただで分配した農地解放がニッポンの農民の倫理をこれほどまでに崩壊させたのだろう。

Posted: Fri - February 2, 2007 at 09:31 PM           |


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