泥沼の財政赤字を生む食管制度のもたらした諸矛盾(立花隆)
立花隆『農協』第15章は、いよいよ食管制度。この本が書かれてから食管法に一部手直しがなされたが、本質は変わっていない。誰もがこの実体に唖然とするばかりであろう。豊富なデータ付きで非常に説得力あるものであり、ぜひ読んでほしいが、要点だけを紹介する。
抜き書き:- コメの価格推移、コメ関係の食糧管理費の財政負担の推移を一つの図に表現したグラフをあげ、コメのための財政負担がどうしようもなく膨張しつつある様を説明する。
- 政府米については三つの逆ざや関係がある。政府買い入れ価格と売り価格の売買逆ざや、その売買逆ざやより大きくなった管理経費、自主流通米助成費とコメの生産を調整するコスト。
- 政府米が370万トン、自主流通米は190万トン、それに対して自由米が(統計はないが)100万トンから200万トン(300万トンとの推計もある)。
- なぜ自由米がこれほどまでに増えたのか。正規ルート流通では市場原理が働かないから。
- 政府米でも自主流通米でも卸業者は自分の必要としないコメを含めて引き取らねばならない。卸業者が割り当てで交わされる配給米とは玉石混淆の商品。玉が当たればそれだけを取り出して自由米市場で高く売る。業者はそれを「東京田んぼ」「大阪田んぼ」でとれたお米と呼ぶ。
- 米所の米屋は県産の良いコメが標準価格米として配給されるので、米屋は消費地の自由米市場で売って儲ける。
- 流通業者ばかりでなく、農家や農協、経済連など、生産者が自由米市場に出してくるものもある。
- 農家は自由米業者に売るの最大の魅力は人知れぬ現金収入になるから。税務署にも知られないで済む。
- 「環流米」と称する悪質なものもある。政府から買ったコメをまた政府に売れば逆ざやがある場合儲かる。
- コメにかかわる食管維持コストは53年度で9900億円。防衛費の半分。エネルギー対策費の3.6倍。
- 更に食糧維持経費に抜けているものとして過剰米の処分損償却費。43年から49年にかけての過剰米の処分で一兆円の損失を出している。
- このほかコメの生産に資するための政策費、補助金をトータルしたコメの生産と食管維持コストの総額は実に1兆4000億円。100円のコメを作るために37円の税金を使っている計算。
- この税金は国民の財布から出たもの。つまり消費者は既に税金を通して三分の一は支払い済みのコメに、もう一度コメ代金を払って購入していること
だ。国民は税金を通じて1200万トンのコメ生産に1兆4000億円を支払い、更に2兆9000億円を支払って約700万トンのコメを購入して消費してい
る。
- 食管制度は消費者にとって利益があるという議論があるが、それは錯誤である。これらコストのうち政府負担はたかだか2600億円。それよりは食管制度があるための余計な費用の方がはるかに巨額。政府管理経費など。
- 最大の費目は食糧庁の事務経費。21000人の役人がいる。不必要な検査をしている。毎個検査といって一俵ごと1億4000万俵の検査をしている。収穫期だけの季節労働だから、あとは遊んでいる。
- 金利支払いもすごい。コメ代金は収穫前に一俵当たり3000円の前払いがなされる。おまけに金利は政府負担。
- 食管制度などにはこれに限らず無数の既得権と化した仕組みがあり、生産者の手取額を増やすために使われている。十年前と比較すると生産者米価も消
費者米価もほぼ二倍になっているが、実質上税金も含めた消費者の支払総額は二倍でなく、三倍半になっている。そのほとんどは助成金とかのさまざまな名目で
生産者の手元に流れ込んだ。
- この背景は36年度に制定された農業基本法。、コメを作っていさえすれば安心とばかり、多くの農民をコメに依存させることとなった。その結果、二種兼業農家、一種兼業農家、専業農家、勤労者世帯の順で豊かであるという、奇妙な社会構造が生まれた。
- 食管が安全保障装置だというならば、注ぎこんだ膨大な国費によって日本農業は食糧危機を迎え撃てるだけの体質強化がなされなければならない。実際に起こったことはその逆だ。
- 日本の6万3000店の米屋も既得権に寄り掛かって商売をしている。悪名高い「格上げ混米」をするために精米機を放そうとしない。
- 食管制度とは官僚支配制度。多くの農民はこの官僚支配を農民に対する国家の庇護とみなしているが、実際は「奴隷」に対する庇護であり、「自由人」に対する庇護ではない。農家の自立心を損なってきた。
まったくいやになる。最近の農業財政については農林中金総研の報告書(2003/7)があるが、あいかわらず農業は国家財政にとって(国民にとって)巨大な金食い虫であることを続けている。参考までに添付しておく。
r0307in2.pdf
Posted: Tue - October 5, 2004 at 03:56 PM
|