Back to Letter from Yochomachi (Blogger) Le Monde

Le Monde が報道したイラク問題この一年


この一年、ルモンド紙がイラク やテロの問題をどう報道してきたか、振り返ってみました。一貫して真実に迫る分析と主張をやって来たことがわかります。CNNや News Week が「外しっぱなし」のいい加減なブッシュ宣伝機関と成り果てていたのと比べると、その差は歴然としたものがあります。どうしてこのような「正論」が通らな かったのか、深く考えてみる必要がありそうです。

2002.11.12 アルカイダはSFに影響されたか?
これはロシアの学者の分析を紹介する軽い冗談みたいな 記事ですが「ビン・ラデンは死んだとしてもその影響力を維持し続けるだろう」という最後の一文がよい。いまアメリカはサダムを捕まえようと必死ですが、サ ダム・フセインさえ殺せば抵抗は終わると考えるのは、甘いでしょう。

2002.12.24 ルモンド社説「これは人間として恥ずかしい」
クリスマス・イブに当たってのルモンド社説。アメリカ が最貧国向けの医薬品貿易特例措置の永続化を拒否したことを非難するもの。イラク問題とは直接には関係はないものの、背景にあるものはこういったアメリカ の態度なのです。

2002.12.25 二人のエジプト人作家が「追いつめられて辱められた」社会について 語る
この記事は秀逸です。イラク問題の本質をこれだけ語っ た記事はなかったでしょう。人間の尊厳を踏みにじり、民族の誇りを傷つけられたアラブの魂の叫びが聞こえます。外部から価値観を押し付けるのは、どういう 事情があれ、醜いものです。

2003.1.1 シラク大統領が年末の挨拶で「戦争の脅威」に言及
シラクの年頭挨拶の紹介記事。イラク問題についてシラ クは「フランスは平和と正義と倫理のために立ち上がらなくてはならない」と述べる。フランスが主張したのは正論であった。今から思えば誰もが正しかったと 認めている。しかしその正論はアメリカとアメリカに追従する風見鶏どものおかげでサボタージュされてしまったのである。

2003.1.2 ルモンド社説、祈願
年頭に当たってのルモンド社説です。宿命論に流されず に前向きに行動しよう(もちろんイラク問題)という格調高い論説。残念だけれど、これだけ力強い論説を書ける日本の新聞はない。

2003.1.3 バルカンの武力介入を支持したフランスの知識人達は「イラクはコソボで はない」という
イラク問題に関する非常に突っ込んだ分析。要はサダム はやっつけなければならないが、いまはその時期ではないというもの。現実的で思慮深い分析です。単に「寛容と共存の精神で」なぞと大甘で寝ぼけたことを書 いていたどっかの国の新聞とは大違い。

2003.1.25 ルモンド社説、この「ラムズフェルド爺さん」
ラムズフェルドがフランスとドイツをさして「古いヨー ロッパ」と侮蔑したことに対するコメント。米国が意図するヨーロッパの切り崩し工作が成功しつつあることを認め「ラムズフェルドの言ったことは少なくとも 一面の真理がある」と欧州の今後の課題を考えます。

2003.2.7 戦争決定へ
「いくら言ってもアメリカはやる気だ、もはや戦争は避 けられない」とする絶望的な論説。これだけ言ってもわからないのかといってますが、ブッシュははじめからやる気だったから、誰の意見にも聞く耳を持たな かったので、シラクの力不足ということにもならないと思う。残念だけれど。

2003.2.15 ルモンド社説、嫌仏感
アメリカで反仏キャンペーンが巻き起こっていることに 対するルモンド社説。世界のマスコミが英米系に牛耳られている現在のグローバル化の時代には「紋切り型」のレッテル張りが横行すると言ってますが、マッ カーシズムをも連想させるいやな時代になりました。

2003.2.16 ルモンド社説「原則の立場」
国連でのド・ヴィルパン外相の演説を紹介する形でフラ ンスの基本的立場を繰り返しています。「戦争は大量破壊兵器の破壊のみならず中東の政治様相を民主化するのに役に立つとする考え方はとんでもない間違い だ。米国は、巡航ミサイルを撃つだけでなくイラクを管理するために数年に渡ってイラクを占領しなければならなくなるが、それこそビン・ラディンを喜ばすこ とに繋がるのだ」と道理を尽くして述べています。

2003.2.20 アメリカ人の中には、フランスに感謝のEMAILの爆弾を落とす人た ちもいる
アメリカ人の中には、フランスを攻撃する人ばかりでは なく、フランスよもっと頑張れと応援してくれる人も大勢いるのだとする報告。そう、すべてのアメリカ人が馬鹿なわけではなかった。馬鹿なのはブッシュとそ の取り巻きだけであったのだ。

2003.3.7 フランス語は政治的異議申し立ての武器であるか?
アラブ諸国でアメリカへの反発からフランス語を学習す る人口が急速に増えているとの報告。さもありなんというところか。

2003.3.12 ルモンド社説「断固として、同時に協調的に」
シラクがフランスは拒否権を行使するだろうと言ったこ とについての社説。どうせアメリカは戦争を始めるだろうからと、すでに戦争後のことに焦点を当てているのが印象的。

2003.3.15 フランスは代金を支払わなければならない!
正論を押し通してアメリカにたて突いたフランスです が、同時に払わねばならない代償も大きいとする論説。アメリカの仕返しは陰険なものとなるだろうと読んでいます。

2003.3.16 アスナール首相はスペイン世論の反対の中で孤立している
スペインがアメリカ支持に回った理由は何かについての ルモンドの分析です。そう言われてみれば納得が行きます。

2003.3.19 ブッシュ大統領、厚く御礼。パウロ・コエリョ 拝
ブッシュに対するブラジル作家パウロ・コエリョの公開状。痛烈な皮肉となってますが 一読の価値あり。いま勝ち誇っているが、われわれはあんたがどんなことをしたのか忘れない、あんたのおかげでアメリカというものがよくわかったと、パンチ の効く痛烈な皮肉のオンパレード。

2003.3.20 戦争と平和、レトリックの死(機能低下)
今回イラク戦争に関してのアメリカ世論の動き方に関す る言語学者の立場からする興味深い分析。アメリカ世論の形成に関して勉強している人必読。裨益するところ多大です。

2003.3.22 「モニカ・ルインスキーを返せ」;フィリップ・ロスの平和運動ステッ カー
クリントンは助兵衛だったかも知れないが、少なくとも こんな馬鹿ではなかったとして「モニカ・ルインスキーよ戻ってきて」とするステッカーがアメリカで流行っているとする面白いお話。

2003.3.25 サダムは生きていた
やっつけたはずのサダムがまだ生きていてテレビに現れ たことを受けての論説。戦争はテレビゲームみたいには簡単にすむものではない、今から汚い本当の戦争になるのだと予言している。

2003.3.26 イラク首脳は「我々は最高の音楽と花で侵略者を迎える」と皮肉る
バグダッド攻撃を前にしてのイラク政府筋の話を報道。 実際にはアメリカ軍がバグダッドに入るとそこはもぬけの殻だったのですが、当時のイラク軍は徹底抗戦するとえらく元気の良いことを言っている。これも三味 線だったわけ。

2003.3.27 バグダッドはレジスタンスの中心地となるだろう
市街戦が始まるだろうと予測していますが、実際にはそ んなことにはならなかった。これは読み間違いですね。でもバグダッド陥落後に、じわじわとしたレジスタンスが今も続いている。

2003.3.29 イラク:最初の教訓(ローラン・ファビウス)
戦争は戦略家の仕事。戦争が終わったら政治家の出番と ファビウス元首相が戦後の平和構築に向けて何が必要かを述べている。彼はエリートで嫌みだが、とても頭が良いスーパー・ブライトであることは否定の仕様が ない事実。国連の改革と欧州軍の組織化が重要と述べている。

2003.3.30 ラムズフェルドはペンタゴンの意見を無視したらしい
ラムズフェルドが制服組の意向を無視して思い込みで勝 手な戦争計画を立てたとする報道。

2003.4.1 二つの原理主義の衝突
イラク戦争はキリスト教原理主義とイスラム教原理主義 の二つの原理主義間の戦争の様相を呈しつつあるとの分析。興味深い。

2003.4.3 民間人の犠牲
イラク側の民間人死傷者についての報道。実際はこんな もんではなかったことが後でわかるが、当時としてはあまり報道されなかった事実。

2003.4.3 アメリカ人が望んでいない事
「サダムなきサダム体制」をアメリカは意図している。 アメリカは日本とかでやったことと同じように戦後も実質的な支配体制を温存させる、何も変えないつもりとする報道。これは例外的にルモンドではなくヌー ヴェル・オブセルバドール紙の記事翻訳です。

2003.4.5 軍用トラックに潜むバプティストの宣教師達
これは笑えてきます。宣教師達が自分の出番だとイスラ ム教徒を改宗させようとてぐすをひねって準備しているとのこと。

2003.4.6 タリバンがアフガニスタンの南東部に戻ってきた
タリバンが戻ってきたとする報告。巡航ミサイルでは国 は征服できてもゲリラをやっつけることはできないのです。

2003.4.11 ルモンド社説、崩壊の後
バグダッド制圧を受けてのルモンド紙社説。バグダッド が陥落してもフランスが言ってきたことと立場は全く同じである。本当の困難は今から始まるのだからという大正論。100%同感。

2003.4.12 ロジックは最後まで
セガン元大臣の寄稿文。主張することは最後まで主張し ろと言うもの。フランスがアメリカに気を使って態度を変えはじめていることに対する批判。

2003.4.15 バグダットからダマスカスへ?
アメリカが調子に乗って次はシリアだなんかと発言した ことに対する批判。いくら何でもひどいのでアメリカはすぐそれを撤回しましたが。

2003.4.16 戦略家であり同時に哲学者
ネオコンについての詳細な分析記事。これはあの時点で なされた最良の分析論文であったと思います。ネオコンの本質が実によくわかる。決して過小評価できない存在。必読です。

2003.5.8 ブッシュ飛行士のハリウッド的策略
勝ち誇ったブッシュが得意になって航空母艦への着艦を 強行したことについて。

2003.5.17 パリは米国マスコミの「事実歪曲キャンペーン」に立ち上がった
アメリカでしつこく続けられている反仏キャンペーンに ついての報道。断固として戦うとの宣言。

2003.5.30 ルモンド社説「アメリカの告白」
アメリカが戦争の理由としてあげていた大量破壊兵器が まだ見つからない、これはアメリカも知っていたことだ、アメリカは嘘をついて世界を戦争に引きずり込んだとする非難。

2003.6.3 アメリカはいまも戦争状態にある
アメリカの世論はいまだに戦争状態にある、アメリカと付き合って行こうと思えばこの 辺をよく理解しないといけないという分析記事。噛みつくだけでは駄目で、相手の心理状態をよく踏まえた上でけんかしなければならないと。もっともです。

2003.7.21 ルモンド紙社説、死と嘘
ブレア政権はイラクについての自分の嘘によって重大な 危機に直面しているとの社説。ところがアメリカではそれほど重大なこととはなっていない。クリントンはセックスについての嘘を追及されたが、アメリカでは セックスについての嘘は悪くて戦争する理由に関する嘘は認められるのか、どっちが重大か、といいます。

2003.9.13 イラク再建の道(ドミニック・ド・ヴィルパン)
外相のイラクの今後に関する表明文。フランスの立場が 常に一貫していたことがわかる非常に明快な論文です。

2003.11.14 ルモンド社説「袋小路に入ったイラク問題」
ルモンドは夏の間はあまりアメリカを非難する論説を発表してきませんでしたが、夏休 みが終わったのか、辛抱しきれなくなったのか再開したようです。「フランスが今まで言ってきた通りの展開だ。さらに事態が悪化しないと気がつかないのか」 とアメリカを非難する論説。

Posted: Thu - November 27, 2003 at 05:11 PM           |  


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