221黒部川赤木沢〜黒部五郎岳
| 山頂 |
黒部五郎岳2,840m |
| 分類 |
沢登り |
| 日程 |
2003/08/15-17 |
| 同行 |
Tさん |
| 概要 |
初日は折立から太郎平小屋を経て薬師沢小屋泊。2日目に黒部川奥ノ廊下から赤木沢に入り稜線まで遡行。黒部五郎岳を往復して太郎平小屋泊。3日目に折立へ下山。 |
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赤木沢出合。上の画像をクリックすると、赤木沢の概要が見られます。(2003/08/16撮影)

ナメ滝。最高の天気とロケーションに笑いが止まらない。(2003/08/16撮影)

大滝。唐突に現れるこの岩壁は、北アルプスの厳しさを思い出させてくれる。(2003/08/16撮影)
赤木沢というステキな沢があるという話を初めて聞いたのは、たしか奥秩父・ヌク沢遡行の前夜、現場監督・さかぼう両氏と雨の東屋で飲んでいたときだったと記憶している。しかし、その存在を強烈に意識づけられたのは言うまでもなく、現場監督さんの「業界騒然!赤木沢『両手に花』遡行」だ。なにしろ現場監督さんはうら若き美女を二人も同伴して遡行。通りすがりの登山者に「『うらやましいですなぁ。』とさんざん言われ」たり、「手に手を取り合ってキャーキャー言いながら徒渉」したりしたというのだから、果たしてこのまま許すことができようか。
ところで、以前キリマンジャロに登ったときにツアーでご一緒した関西在住のTさんとはその後もメールでの連絡が断続的に続いていたのだが、昨年末のメールのやりとりの中で「今度の夏に赤木沢に行きましょう。」という話になり、「両手に花」にはかなわぬまでも一矢報いんものとひそかに企画を温めることとなった。Tさんは山歴こそまだ10年だが、国内の主要バリエーションはもとよりマッターホルン、モンブランにも既に登り、さらに8月下旬にはまたしてもスイスに行ってアイガーに登るという行動派。技術・体力とも十分過ぎるほどだ。
そんなわけで、8月14日の夜に私は「さわやか信州号」に乗った。富山県の実家に戻っているTさんとは有峰口で落ち合い、そこから彼女の車で折立まで入る寸法だ。天気予報はあまり芳しくなかったが、出発直前には遡行予定日の16日に晴れマークがつくようになっており、どうやら楽しい沢登りが期待できそうだった。
■06:45 折立 ■08:10-20 三角点 ■10:05-30 太郎平小屋
有峰口に5時半過ぎに到着し、うまい具合にTさんとも合流することができて、久しぶりの再会を喜び合うのもそこそこに早速折立へ。林道のゲートは6時に開き、そこから30分程で折立に到着した。登山口近くの駐車場には空きがあり、素早く身繕ろいをして登山口に向かった。空はどんより曇っているが、雨は降っていない。樹林帯の中の道を徐々に高度を上げ、やがて開けた尾根筋に登る頃には下方に有峰湖を見下ろすこともできるようになった。好ましい草原のところどころにキスゲの黄色が目を楽しませてくれて、意外に早く太郎平小屋に到着した。

テント泊ならこの近くのテン場へ行くところだが、我々は今回は小屋泊まりということにしているのでそのまま薬師沢小屋を目指す。太郎平小屋を回りこんですぐに分岐する道を下り、やがて薬師沢沿いの道へ入った。
薬師沢小屋への道も、小さな橋を渡ったり笹原や草原の中の木道を歩いたりとなかなかいい感じ。天気もどんどん良くなってきていて、すれ違う登山者から「いいタイミングで薬師沢小屋へ入りますねぇ。」と天候の好転をうらやましがられ、そこからすぐに薬師沢小屋の赤い屋根を見下ろすことになった。

黒部川に薬師沢が流れ込む出合に建てられた、こじんまりとした薬師沢小屋。受付をして外でしばらくくつろいでから、おもむろに部屋にあがって軽く昼寝をした。今日は混むかも知れないので一応二人で1畳ということにしておいてほしいと言われていたが、夕食前には一人1畳使ってよいとのお達しが出て、うれしいような残念なような複雑な気持ち(←オヤヂ)。それにしてもこの小屋、目の前の川にはイワナ釣りをしている登山者がいたり、表や裏手のテラスでゆったり飲んでいる客もいたりと、狭いながらもいろいろな楽しみのあるよい小屋だった。
■05:40 薬師沢小屋 ■07:00-10 赤木沢出合
小屋で朝食をしっかりとって、直ちに出発。小屋前の吊り橋の右手から奥ノ廊下に降り、左岸をどんどん進む。河原でくつろいでいた4人組を除くと我々の前にいるのは男女混成の6人パーティー1組だけだったようだが、そのパーティーも途中で抜かして先頭をきって奥へと進んで行く。途中、冷たい水に腰までつかるへつりも交えながら左岸通しに遡行を続け、途中1か所だけ中州経由で徒渉して右岸に渡ったが、あとは基本的に左岸を行き、さらにゴルジュ帯を岩魚止めノ滝を見下ろしながら高巻いて、かなり進んだと思ったあたりで河原に降りるとそこがプール状の赤木沢出合だった。しかしすぐにはそれと気付かず、へつりが難しそうだったので小さく高巻いてみると右手から沢が流れ込んでいたのでそれとわかった次第。奥ノ廊下方面へわずかに下って出合の地形を確認したり写真を撮ったりしてから高巻きを下り着いた地点に戻ってみると、ちょうど先程の6人パーティーも到着したところで、ここからはつかず離れずの距離で我々が先行することになった。

よく晴れて明るい沢筋を遡行していくと、真っ青な空をバックにすぐ目の前に2段20mの滝が現れた。いや〜、こんなに早くきれいな滝に出会うとは、と狂喜乱舞しながら左の壁から簡単によじ上って行くと、間髪を入れず次の大きな黄色っぽいナメ滝が現れてもう興奮状態。ナメ滝は水流の右側をフリクションで抜けることになるので浅いナメを左から右へ渡るが、水はきらきらとあくまでも透明で、それが淵になったところでは周囲の緑を映しこんで美しい。しかもナメ滝の上に出て5分も歩くと、もう次の4段の連滝が登場する。1段目の2mは左から登り、深い釜に勢いよく水を落としている2段目10mと3段目10mは右の草付を高巻く。この高巻きは少々高度感があるもののまったく危険はなく、そのまま4段目8mも右から巻き上がる。

この連滝を越えればさすがにおいしいところはもうしばらくないだろうと思っていたが、ここからも次々に小さくかわいいナメ滝やゴルジュ状の地形が現れたりして、まったく息を継ぐ暇もないほどだ。そして、これらの小滝の連続を越えて一段落したあたりで、彼方の上方に緑の稜線が見えてきた。
5m斜滝を越えたところで小休止。前方には4段15mの緩やかな滝が見えていて、その手前の横の斜面には黄色いキスゲが咲いていたりしていい雰囲気。軽くエネルギーを補給しているうちに6人パーティーが追いついてきて、ここから大滝までは彼らが先行することになった。日なたぼっこをするようにゆっくりくつろいでから、先行パーティーとの距離がある程度あいたところで再び遡行開始。4段の滝は、下部は水流の中を縫うように登り、上部は左側から抜ける。その先、左から支沢を合わせるミニゴルジュ(ゴルジュといってもとても明るい。)を抜けて、その先の壁のような滝は先行パーティーが左からがしがし登っていたため、我々は遊び心を出して右から水流に近付いてみるとやはりこちらの方がすっきりとスマートに登ることができた。そしていよいよ前方に大岩壁が姿をあらわし、その右奥に30mの大滝が登場した。
先行パーティーは大滝の下で小休止していたが、どうやら大滝右のちょっとシビアなリッジを登るようだ。我々はセオリー通りいったん大滝手前の5m滝の下まで戻り、そこから右手の小さく急なルンゼを詰め上がって、やがて大滝の落ち口と同じ高さになったあたりで左へ進む踏み跡に入ると、樹林の中をわずかに抜けてすぐに大滝の落ち口を見下ろす場所に出て、そこから岩の上のトラバースで大滝の上に出ることができた。ふと見ると6人パーティーはやはりリッジを登っているところで、そのうち3人程は早くも我々のすぐ後ろに抜けてきていたが、リッジの途中でメンバーのひとりが進退窮まってしまっており、ロープも結んでいないためにっちもさっちも行かない様子。う〜ん気の毒に、大丈夫かなぁとは思いながらしばらく見ていたが、まぁ6人もいるんだから何とかなるだろうと見切りをつけて先に進むことにした。
時刻も早いので黒部五郎岳へ足を伸ばすことに決めて、ガイドブックに書いてある「大滝から2つ目の支沢」を見送って本流をどんどん進んだ。実は大滝が終わってしまえばもう面白いところはないのだろうと思っていたのだがとんでもない、ここから稜線直下までも楽しみの連続だった。水がひたひたと流れるナメ、かわいい小滝、近付く稜線、そして背後にはどんどん大きくせり上がってくる薬師岳や赤牛岳の展望。もう言うことなしだ。

■10:15-40 中俣乗越 ■12:10-15 黒部五郎岳の肩 ■12:20-30 黒部五郎岳 ■12:40 黒部五郎岳の肩
上部の二俣は左へ進み、次の二俣は地形と方角を読んで右へ。さらにはっきり源流の様相を示した地形になって最後の二俣は左を選ぶと、目の前に雪渓が現れてようやく赤木沢は伏流となった。スノーブリッジを慎重に避けて雪渓の上に抜け、やわらかい草原を踏んでゆっくり登ると目の前のハイマツ帯の中がもう縦走路で、予定通り中俣乗越に出ることができた。ちょうどヘルメットをザックにくくりつけたご夫婦らしい登山者が黒部五郎岳方面から歩いてきているところで、我々を見て話し掛けてきた。お二人は昨日赤木沢を遡行したのだそうだが、雨の中の遡行になり水量が多く苦労されたとのこと。今日はよかったでしょう?と言われて「もう最高でしたよ!」と答えたが、実際これ以外に説明の言葉が見つからないほど条件に恵まれた遡行だった。
雲がかかり始めた縦走路の脇に腰を落ち着け、沢の装備をはずして縦走スタイルに変身。黒部五郎岳への道はチングルマやハクサンイチゲ、ボウフウの仲間、トウヤクリンドウやウサギギクなどがところどころに姿を見せて美しかったが、軽量化のために行動食を切り詰めていた私はその意外な長さに若干シャリバテ気味。一方のTさんはまったくスピードが落ちることなくこちらはタジタジで、しかも黒部五郎岳の肩に着いて「腹へった〜。」とへなへなと腰を下ろすとTさんの小さなザックからはおにぎりが2個も出てきて、まるでドラえもんのザックだ。

肩にザックをデポして登り着いた黒部五郎岳の山頂からは、ちょうど雲が切れてカールの向こうに水晶岳や雲ノ平、鷲羽岳がよく見える。赤牛岳のさらに左奥には、どうやら後立山の山々も見えているようだ。
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すばらしい展望をすっかり堪能してから肩に戻り、再びザックを背負って来た道を太郎平小屋を目指した。
■14:20 赤木岳 ■14:45-15:00 北ノ俣岳 ■16:10 太郎平小屋
黒部五郎岳から太郎平小屋までの道もかなり長かった。中俣乗越やその先の赤木岳手前で赤木沢を遡行してきたパーティーと出会ったが、時刻から考えて彼等は太郎兵衛平のテン場を今朝出発し、薬師沢小屋経由で一気に遡行してきたのだろう。お疲れさまでした。こちらは赤木岳から北ノ俣岳にかけてガスに巻かれて少々気が滅入る感じでもあったが、太郎平小屋が見えてきたあたりからきれいなお花畑が広がり、その向こうに薬師岳の大きな山体がどーんと鎮座してなかなかの景観だった。やっとたどり着いた太郎平小屋で受付をすますと、外のベンチで缶ビールで乾杯!ドラえもんザックからはアラレや乾燥タン塩まで出てきて、こちらは目を白黒。Tさん、ごちそうさまでした。

太郎平小屋はやはり混んでいて、寝床に案内されたときは「二人1畳でお願いします。」と言われたが、夕食を終えて戻ってみるとどうやら隣は来ないようなので一人1畳使うことにし、これまたうれしいような残念なような……(以下略)。我々の隣には金沢の山岳会に所属しているという女性二人がいて、彼女たちも今日赤木沢を遡行したのだそうだが、彼女たちの言によればこの日赤木沢には100人くらい入ったらしい。誰がどうやってカウントしたのかは不明だが我々はおおむねその先頭を進んでいたわけで、おかげで自分達の赤木沢を堪能することができたことになる。今日一日の幸福な遡行に感慨ひとしおの私を脇において、ビールですっかりできあがっている様子の金沢の女性二人とTさんはいつの間にか意気投合し、白山の室○センターの接客の悪さに対する罵詈雑言で盛り上がっていた。
■06:45 太郎平小屋 ■07:50 三角点 ■08:40 折立
この日は薬師岳を往復して下山する予定だったが、夜半からの雨は朝になってもやまず、残念ながら中止。前夜受け取っていた弁当を朝食にして、ゆっくり7時前に出発した。時折強まる風雨の中を、他の登山者をどんどん追い抜かして2時間かからずに折立に下山。ここからTさんの車で有峰口近くにある国民宿舎白樺ロッジへ直行した。ここの風呂は外来(?)OKで、午前10時から入浴できる。湯舟でゆったり暖まり、衣類も全部着替えてさっぱりしてからTさんに富山市まで送っていただき、とんかつを食べて駅前で別れて、越後湯沢経由で帰京した。
7月のマッターホルンではあいにくの気象条件に涙を飲んだが、今回の赤木沢は晴れ女Tさんの御利益のおかげですばらしい遡行となった。ありがとうございました。またどこかの山/沢でご一緒しましょう。