入院17日目 眠れない夜


 今日もICUで目覚め。しかし経過を見ていたY先生からうれしい言葉。
「8階へ行こう!」
 そう、午後から8階のリカバリー室に行くことになったのだ。リカバリー室は手術前にmojoがいた一般病棟と同じフロアーにあるのだが、ICUと似たような管理体制が敷かれている部屋だ。それでもICUよりはマシな空気が吸えるだろう。
 エレベーターに乗って8階に行く。5日前、手術室に向かったのと、ちょうど逆のコースだ。8階に着いて、廊下をベッドで移動していると、久しぶりに人の匂い。いや、人だけじゃなくて、少し生活の匂いがする。それが何か新鮮だった。

 手術前、病棟から1階に降りて書店や売店に行くと、“世間の匂い”がした。本当はそこも病院の中だから、外の世界とはまた違った匂いなんだけど、それでも一般の人たちが出入りする場所は、病棟よりはずっと社会に近かった。

 ICUにいると、社会はさらに遠いのだ。3階のICUから8階に上がったけれど、mojoには1階に近づいたように感じられた。

 Kさんをはじめ看護婦さんたちがが、代わる代わるベッドサイドに来て「お帰りなさい」と声をかけてくれる。しばらくして落ち着いたところで、看護婦Hさんに頼んでベッドを起こしてもらう。

 完全ではなかったけど、窓の外に病院北側の街が見え、なんともうれしかった。窓越しだろうが、なんだろうが、そこに街がある。ただそれでうれしい。しかし起きている姿勢は背中がすぐに痛くなり疲れてしまう。5分も保たず横にしてもらう。

 体が熱い。熱が出ている。汗をじっとりとかいて、背中や頭が熱くてしょうがない。看護婦さんによれば、これでいいのだと言う。
「熱が出ているのは、体が闘っている証拠だからね。頑張ってる証拠だよ」
 そうか、mojoの体は頑張ってるか。うん、頑張ろう。

 そういえばICUで許可が出た飲み水は1日200ccだったが、ここへ来て500ccに昇格。でも点滴をずっと売っているせいか、それほどノドは乾かない。でも口からモノを入れるというのはいいことなのだと教えてもらった。

 夜。ぜんぜん眠れなくてつらい。真っ暗な部屋で動くことも出来ず、じっとしているのは本当につらい。心の中で知っている唄を片っ端から歌ってみるが、それも長続きはしない。

 看護婦さんに睡眠薬を出してくれと頼む。すると、現在の心臓の状態や与えている薬との相性などから睡眠薬は出せないと言われた。うなだれて時計を見る。まだ12時にもなってないじゃないか。明るくなるまであと何時間…。

 何万頭の羊を数えても、何十曲の歌を歌っても、頭の中でブルースのフレーズを弾いてみても、夜はいつまで経っても明けやしない。すっかり目が慣れてしまった薄闇の向こうに、壁に掛けられたカレンダーがあった。あと何枚めくれば、外へ出られるのかなと思った。

 酸素マスクの中に溜まった水滴が、ポツンと唇に落ちてきた。

Posted at:2003年07月23日 (Wed)at 04:13 午後