入院1日目 後編 手術が増えてしまった!
さて、いろいろ準備が済んで、mojoは移動式のベッドに乗せられ、検査室に向かう。やけに静かなエレベーターを降り、廊下を滑る。そして他の所とは隔離された検査室が並ぶ区域を抜け、いよいよ検査室へ。
ここへ来てmojoが緊張したのにはワケがある。普通の検査だと思ったら、左側にはモニターが並び、右側にはレコードスタジオのようにガラスで区切られた小さな部屋が見え、しかも看護婦さんや医者が手術着みたいなものを着ているという状況を目の当たりにしてしまったからだ。医者も5〜6人いる。なんだか“ものものしい”という印象なのだ。
そして先程から看護婦や研修医がmojoの体に何かつけている。点滴、血圧を自動で計る器具、心電図をとるためのパッチ。なんだか全身が自分のものじゃなくなっていく感じだ。
「じゃあmojoさん、検査を始めますからね。痛いとか、気持ち悪いとか、何かあったら言って下さいね。じゃあまずは消毒をして局部麻酔を打ちます」
その言葉が終わると、下半身に冷たい感触があり、茶色っぽい消毒液が塗られた。そして右足の付け根あたりがチクッとして注射が打たれた。
「はい、じゃあ切ります」
メスが右足付け根の動脈を切ったのだろう。しかしあまり痛くはなかった。そしていよいよカテーテルの始まり。
「ちょっと押されるような感じがあるかも知れません」
そう言われた通り、何かが入ってくる感じ。医者もゆっくりゆっくり、慎重にやっている感じだ。それがある部分に到達したのか、
「造影剤を入れますね」
と言った。体に液体が入ってくる。
「写真を撮ります。少し体が熱くなるかも知れません」
天井の方から大きなカメラ(には見えないが)降りてきた。そしてそれがmojoの体を撮った瞬間、いきなり体が熱くなった。そしてまた撮る。再び熱くなる。おかしな感覚だ。
ところが次の瞬間、突然気持ち悪くなった。本当に急激に口の中が酸っぱくなって吐き気がしたのだ。
「す、済みません。気持ちが悪いです」
「えっ、吐きそう?」
「分からない。我慢出来るかも」
それで少し休憩になった。吐き気はすぐに収まったが、薬が合わないかも知れないので、違う造影剤に変えて撮影するという。
そして休憩後の検査。時々、先生たちが話し合っているのが気になる。モニターに映し出される心臓の様子をわけも分からず見つめながら、
「どうなのかなあ?」
と頭の中で考えていた。
検査が終わり、病室へ戻る。検査室では30分近くも止血の作業。こうしないと危険なのだそうだ。そしてベッドに寝たまま、寝返りも打てず6時間も過ごさないといけないのだと言う。切ったところが大動脈なので、出血するようなことがあると大変らしい。
さて、ベッドに寝かされ数時間。腰が痛くてたまらなくなって来た頃、T先生がやって来て、母と兄を呼んだ。
「mojoさんは動けないから、あとで説明しますからね」
な、何なんだ。検査の結果が良くなかったのか?
当たりだった。後の説明によると、心臓の冠動脈が狭窄していてよくない。このまま大動脈瘤の手術をすると危険過ぎるから、まずは心臓のバイパス手術をやってから、経過を見て大動脈瘤の手術をしましょうということだ。バイパスは3ヵ所やるらしい。高血圧の薬を飲み始めてから、歩いていて息苦しいこともなくなっていただけに、検査結果にビックリした。
それにしても、いきなり入院予定が伸びてしまった。しかも手術が増えた。心臓の手術なんて聞いただけでもオソロシイ。バイパスってどんなことをやるんだ? 無事に東京へ帰ることは出来るのか?
家族が帰った後のベッドに横たわり、身動きもままならぬまま薄汚れた病室の天井を眺めた。どうしようもないのに、どうしようかと思った。
夕方、やっとベッドから降りる許可が出た。病棟の中央にある公衆電話から東京の友人へ電話を入れる。
「手術がもうひとつ増えちゃった…」
窓から街の灯が見えた。病院のあたりは暗く、遠くに灯がみえた。
なんだか街が遠くに行ってしまったように思えた。
Posted at:2003年07月07日 (Mon)at
09:22 午前